マネジメントとリーダーシップの違い。
『キャリアの常識の嘘』(金井壽宏・高橋俊介共著、朝日新聞社)を10年ぶりくらいに読みました。キャリアの本というのは、読むときの自分の年代に応じて捉え方が変化するので、面白いものです。
共著といっても、掛け合いのような書き方になっていて、あるテーマについて金井さんと高橋さんが交互にそれぞれの立場から、あるいは、経験から語るように作られています。
高橋俊介さんのパートで「マネジメントとリーダーシップ」について述べている箇所があります。まず、引用します。
「リーダーの成長を語る以前に、マネジメントとリーダーシップの違いを明確にしておきたい。
マネジメントとはあらかじめ命令権限を持つ人が、その権限を利用して人を動かすことだ。
一方、リーダーシップに命令権限は、必ずしも必要ない。なぜならリーダーシップによって人が動くというのは、そのリーダーの考えや行動に共感し、納得するからだ。」
この部分を読んで、はっとしたのでした。
マネジメントとリーダーシップの違いというのは、よく見るし、あちこちで同じことが言われているし、誰もが言い方は違えと同じ軸で説明しています。しかし、「命令権限を使って・・・云々」というところがすごく心にどしんと響きました。
ここを言い換えるとこんなことも言えるのではないかと思います。
●マネジャーであるあなた(たとえば、部長、課長・・・)の、その肩書を外したときでも、あなたの言葉に影響を受けて、一緒に動いてくれる人はいますか?
●マネジャーとしての役割が外れたとしても、あなたの言葉は誰かに響くでしょうか?
●誰か(特に部下)があなたに従って動くという場合、それは、マネジメントの力を使っているのでしょうか?それとも、リーダーシップの力を使っているのでしょうか?
・・・・・・・
「命令権限」がなくても、誰かが自分の言葉に動かされて、自分が成し遂げたいことを実現できる、かどうか。これ、とても大事なことのように思います。
部下からすれば、
●あなたがマネジャー(上司?)に従うのは、命令権限があるからですか? それとも、彼・彼女の考えや行動や思いに共感しているからですか?
という見方もできます。
そう考えると、身近な誰に「リーダーシップ」があって、誰には「リーダーシップ」がないか、というのはよくわかるような気がします。
いや、その前に、自分自身の行動の影響力を深く振り返ることができますね。
金井壽宏さんは、別の本で、
「自分一人で”俺はリーダーだ”と言ってもしょうがない。振り返ったとき、誰かがついてきてくれていいる(フォローしてくれている)とき、初めて”リーダー”になる」
といったことを書かれています。(たしか『リーダーシップ入門』(日経文庫))
振り返ったとき、誰かが自分の後ろからついてきてくれていて、しかも、それが、命令権限によらないとき、初めて、「リーダーシップ」がある真の「リーダー」と言えるのでしょう。
深いわぁ~。