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人材育成の現場で見聞きしたあれやこれやを徒然なるままに。

入社して3年くらいは仕事のえり好みをしないほうが結果的には自分のためになるのではないかと思う

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「好きなことを仕事にする」とか「自分らしさ」とか「自己実現」とか、まあ、きれいな言葉はたくさんあるけれども、それを新入社員時代から追求しちゃうと、実は、自分の可能性を狭めることになるんじゃないかと思っている。

大久保幸夫さんは、「20代はいかだ下り」→「30代半ばも過ぎれば山登り」と、キャリアについて述べているけれど、私はこれ、とてもしっくりくる考え方である。

新入社員は、2011年度くらいから非常にマジメで優秀で、素直で勤勉で前向きな人が大半を占めるようになったので、(表面上は)扱いやすい。

とはいえ、今でも、「仕事のえり好みをする新人がいて困る」という話はたまに耳にする。

たとえば、
●会議資料のコピーを依頼したら、「コピーを取るために会社に入ったわけではありません」と断る
●身体を動かす仕事はいいけれど、事務作業など地味だけどしなければならないものについては、「なんで僕がこれをしなければならないんですか」とすねる
●電話を取るように言うと、「今、忙しいんで」と動かない
など。

もちろん、来る日も来る日も雑用係とばかりに会議資料をコピーさせ、事務処理ばかり担当させ、電話出まくらせているというのはちょっと違うだろうけれど、それぞれにも意味、意義があるわけで。

これ、先輩のほうも「雑用」として割り当ててはダメで、「会議資料をコピーする」ということを通じて、学ばせたいことを明確にしておくべきではあるのだけれど。

たとえば、社内会議用のコピーと社外会議用のコピーでは気を配るべき箇所は違うはず。電話応対だって、新人だからというだけの理由でさせていいるわけではなく、そこでビジネスマナーの基本を学べたり、電話を通じて、取引関係や製品情報を学んだりするという「成長のための体験」になっているのだから、そこをきちんと説明する、という義務は上司や先輩にある。


とはいえ、新入社員といえども、もう20歳をすぎたれっきとした大人だ。自分の頭でそれぞれの仕事の意味を考えることも大事だろう。

「ああ、雑用ばっかり」と思ってコピーを取るのか、
「この資料はこういう風に使うものか、なるほど」「お客様が見やすいようにするにはどうしたらいいのかな」などと考えてコピーを取るのか。

後者のほうが学ぶことも多いし、成長にもつながるだろう。

若いから我慢しろ、とか、言いなりになれ、という話ではなく、いろいろな仕事(好きじゃないことも含め)を経験する中で、「ああ、これは得意」「これは苦手」「これをもっと追求したい」などが生まれてくるはず。これが、大久保さんいうところの「いかだ下り」であって、それは、後で上る「山」を見つけるためにも必要なフェーズなんだと思うのだ。

最初から「好きか嫌いか」「できるかできないか」を軸に考え、「できる」ことで「好き」なこと、に絞っていたら、可能性は狭まるばかり。

若手のうちは、いやとか苦手とか脇に置いといて、まずは、やってみることって大切なんじゃないだろうか、とお姉さんは思うわけです。

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これ、中高年がチャレンジしなくてよい、という話ではありませんよ。

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