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人材育成の現場で見聞きしたあれやこれやを徒然なるままに。

大島渚さんとご家族。

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年末まで受講していた上智大の「グリーグケア講座」で女優・小山明子さんとお話したことはすでに書いたが、実はその際、小山さんご持参のカメラで二人で写真まで撮っていただいていた。そのことは、ご長男の大島武さん(東京工芸大学教授)にもすぐ伝え、彼からは「母から写真届いたら淳子さんに送るねー」と言われていた。次回飲む時にいただけるかなーとのんびり構えていたら、本当にすぐ自宅に封書が届いた。

大島さんの手書きのお手紙(カード)と、小山さんとの2ショット写真、それから小山明子さんからのメッセージが入っていた。母上は達筆で、大島さんも繊細で読みやすい字を書かれる方なのである。

例の「減点ファミリー」の件から小山明子さんと息子さんのことは我が母も40年も語り続けているので、こりゃ見せねば、と正月に実家で「ほらほら」と自慢げに写真を見せた。母も喜んでいた。

写真を送ってくださるということではあったが、手書きのお便りつきで、嬉しかった。私は結構筆まめで手紙だのはがきだのあちこちに出すのだけれども、大島さんもかなり筆まめなのだなあとちょっと驚いた。

あ、そういえば、手紙のことを以前、本に書いていらしたな、それも父上との会話込みで紹介されていたなぁ・・・と思い出し、本棚にある大島さんのご本をぺらぺらとめくり探してみた。

見つかった。こんなくだりである。

私は社会人になってから、驚いたことがある。こちらが暑中見舞いや年賀状、挨拶上などを出した際、「私のことなど、別に気にも留めないだろうな」と思っていたような偉い人ほど、丁寧な返信をくれるのである。このことを父親に話したら、こんな答えが返ってきて印象深かった。

「偉い人だから筆まめなのではない。君のような目下に対しても礼儀をたいせつにするような人だからこそ、偉くなったんだ」

そんなわけで、私も将来偉い人(?)になるべく、筆まめを心がけている。ちなみに、手紙というメディアは「心」を伝えるのに適したもの。だからこそ、手書きがいい。書き文字には人が出る。うまいに越したことはないが、たとえ下手でも、丁寧に気持ちをこめて書こう。

こういう風に父上から言われたことを書いていらっしゃる。5年前ほど前に読んだ本なのだが、ここは妙に印象深く、すぐに見つけることができた。

「誰に対しても礼儀を大切にする人だからこそ偉くなったんだ」というのは心に沁みるメッセージだ。

その父上が大島渚さんである。私にとっては監督というよりも、友人の父上だ。

心からお悔やみ申し上げます。


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大島武さん著 『プレゼンテーション・マインド 「相手のききたいこと」を話せ!』 マキノ出版

※2003年に「ベスト・エデュケーター・オブ・ザ・イヤー最優秀賞」を受賞した大島武さんが初めて書いたビジネス書である。非常にわかりやすくコミュニケーションのあれこれを多くの例とともに解説している。とてもよい本で、同僚も買っていつも持ち歩いているほどである。

小山明子さん著 『女として、女優として』 清流出版

※父上は、実はとても優しく穏やかな人だということは、小山明子さんのご本にも詳しく書かれている。TVではとても短気なように思われているけれど、そんなことはなく、とても優しい方なのだそう。

この本には、小山さんと大島さんの歴史が詰まっている。小山さんの自伝なので、小山さんの幼少のころから大島監督と出会い、結婚し、子供を授かり、そしていろいろあってという歴史、その後大島渚さんを介護し、介護うつになり・・・さらにいろいろあって、でも今がとても幸せ、ということがつづってある。大島渚さんは、自分が最初にお倒れになったとき、そのこともリハビリについてもすぐ受け入れ、淡々とそのリハビリを続けたという。泣き言一つ言わずに、淡々と。そして、周囲にいつも「ありがとう」と言い続けている、とある。

とにかく素敵なご夫妻、素敵なご家族なのだ。私の両親とも同世代なので、昭和という時代の空気も感じられる1冊だった。こんな風に両親の若かりし頃を書籍でいつまでも読み、見る(写真もふんだんに掲載されている。赤ちゃんの大島武さんも!)ことができるのはちょっとうらやましい。

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