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人材育成の現場で見聞きしたあれやこれやを徒然なるままに。

「よいところ」を伝えてから、「改善点」を指摘するといい、というお話。

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昨日、担当編集者さんと2時間にわたる打ち合わせをし、その対話がとても楽しいものだったので、帰宅してからも、ずーっと脳内で一人振り返りをしていました。 職場の活性化とか個人のスキルアップとか、あるいは、私が追求している「働く大人がハッピーになるための支援」というテーマだとか、そんなことをつらつらと・・・。

その中で、編集者として気を付けていること、という話が「そうそう!」と執筆者としてはえらく共感できたので紹介します。

「ライターさんや執筆者さんから原稿を受け取って、それに対して編集を入れていく。直すこともあれば、直すより書いた方に質問したり、注文したりすることもある。ただ、その時、だめだしとか”直しておきますから”と言うだけというのではなく、気を付けているのは、まずはほめること。”ここが面白かった”とか”こういう部分がよかった”とか”全体的に○○さんらしさが出ていますねー”とか、まずは、ねぎらう、感謝する、褒める、礼を言う・・・。その上で、”それでですね、○○の部分にもう少し解説を加えてもらえます?”とか”ここって、こういう風に直したらどうかと思うんですけど”って言う。そういう順番は、ずーっと気を付けていることです。」

ポイントは、

○とにかくまずは、褒める (よいところを言う)
○次に、改善点を指摘する、要望する

ということ。

以前、他の出版社の担当編集者さんからも同じようなことを言われたことがあります。

彼もやはり「いい原稿をありがとうございます」からメールの返信が始まりました。本当に良かった場合はそれで初校⇒終わり、となりますし、ちょっとダメな点があっても「いい原稿をありがとう」⇒「ただ、この部分だけは話が入り組んでいるので、整理しては?」とか「ここの箇所、読者には通じにくいかも」という改善の指摘が添えられていることもありました。

ある時、「いつも褒めてくれるので、やる気出ます。褒め上手ですねー」と言うと、「いや、心からそう思っているからですよー。それに、執筆者のやる気を上げるのも編集者の役割ですから」とお返事いただき、なるほどねーと思ったのでした。

編集者さん曰く、「いきなりのダメだし」によって、執筆者によっては怒り出す人もいる。私は怒るよりは、悲しくなって、自信喪失してしまいます。

昨日お話した担当編集者さんは、こんな風にも話していました。

「原稿って、書いた人の大切な想いが詰まっているわけじゃないですか。表現の仕方とか文章の巧拙はあるにしても、その人が大事で伝えたいと思うものが詰まっている。だから、そこを”ここがダメ””ここがわかりにくい”とだけ言っちゃうの、やっぱり、失礼だと思うんですよね。」

この話、上司部下の関係にも通じるものがあると思いました。

部下が一生懸命作成した成果物をただ一刀両断に「ダメ!」と言う。それはそれで、困難から這い上がる力を身に着けられる可能性はあるけれど、やはり、人は、承認欲求がありますから、できれば、「いいところはいい」と言ってほしい。

特に、新入社員のようにまだまだ内心自信がないという時期に、「これもダメ、あれもダメ」と言われると、何もかもダメだとダメ烙印を押されたような気持ちになり、「もう、ボク・ワタシはここにいてもしょうがないのではないか。職場に迷惑をかける存在でしかないのではないか」と思ってしまうケースもある。

でも、「うん、全体的に頑張った感は出ている!」(← 褒めているかどうか微妙でも、だめだしではない)というコメントだけでもしてから、「ただし、ここを直すとよりよくなる」とか「この部分は、こういう理由でわかりづらい」とかそんな風に伝えると、何もかもダメではなく、「さらに精進すればより良いものになる」と思えるはず。

編集者が執筆者のやる気を上げるのも役割の一つ、というのと同様に、
上司も部下のやる気を上げるのは役割の一つだと思っています。

大勢の人を動かして、目標を達成するのが上に立つもののすべきことだとすれば、それは、指示命令など”力”を駆使して行うよりも、部下一人ひとりが気持ちよく、前向きに、自分から”やろう!”と思えるように動かすほうがいい成果が出るものです。

その時、上司がどう部下にフィードバックするか、というのは、一つのポイントです。

「よいところ」を伝えてから、「改善点」を指摘する。

ちょっと気を付けていれば、できることのように思います。

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