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人材育成の現場で見聞きしたあれやこれやを徒然なるままに。

ホスピスケアの現場のお話。末期患者に余命を訊かれ時・・・(11/22グリーフケア講座から)

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毎週木曜日に通っているグリーフケア講座、ちょっと前ですが11月22日(木)の回のレポートです。

講師は、ケアタウン小平クリニック院長 聖ヨハネホスピスケア研究所所長 山崎章郎医師でした。タイトルは、「遺族ケア -ケアタウン小平の取り組み」。

冒頭で言葉の定義がありました。

以前はホスピスと言ったけれど、最近は緩和ケアという表現に変わりつつある。「ホスピス」と「緩和ケア」には共通点も相違点もあるが、傾向としては、どこでも「緩和ケア」という表現を使うようになっている。語感の問題ではないか、とのことでした。

緩和ケア病棟の患者、あるいは、患者家族、そして、その後遺族となった家族のケアについて様々な事例を紹介されました。

私がとても印象に残ったのは、末期の患者から「先生、私はあとどれくらい生きられるでしょうか?」と余命を質問された時、どうするか、というお話です。

医師としては、あと何日くらいなどと医学の知識と経験から語れるのだけれど、時間の感覚というのは人によって異なるので取扱いが難しい質問なのだそうです。

たとえば、あと1か月もありますよ、と伝えたつもりが、本人はあと半年くらいは大丈夫かなと思っていると大きなショックを与えてしまう、というのです。

だから、時間については直接答えず、以下のような言い方をするとおっしゃっていました。

「私はあとどれくらいですか?」と問われた時、
「だんだんと出来ることは減ってきますよ。今は字が書けるけれど、だんだん字を書くのが困難になります。今はしゃべれるけれど、話すのも難しくなりますよ。だから、今したいと思うことはしておきましょうね」・・・。そう答えるのだそうです。そういわれた患者は二度と「あとどれだけ生きられる?」と質問しなくなり、そのかわり、したいことに取り組むようになるとのこと。

「あとどれくらい?」と質問する患者は、「生きていたい、したいことがある」と思うから残り時間を尋ねる。だから、残り時間を明確に答えることよりも、「したいことがある」という部分にフォーカスして、「できるうちにしたいことをしていくことが大事」と言う方向に意識を向けてもらうんだそうです。

確かに残り時間を明確に聴くよりも、したいことをどうやってするのかに意識を向けたほうが命のともしびが消える瞬間まで輝いていられるように思いました。

こういう難しい状態での医療現場のコミュニケーションというのは、様々な失敗から少しずつ「こういうやり方がよい」と学んでいくものなのでしょうね。

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