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人材育成の現場で見聞きしたあれやこれやを徒然なるままに。

OJTトレーナーにふさわしいのは、業務知識やスキル以上に・・・人脈力?というお話。

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若手社員のOJT指導に当たる人を「OJTトレーナー」とか「OJT担当者」などと言います。若いところですと入社2年目には、OJTトレーナーに任命されることもあります。かくゆう私も入社2年目には新入社員(といっても年上だったりしましたが)をまとめて4-5人見ていたことがありました。(よくやったなぁ・・)

上にいけば課長職相当の方がOJTトレーナーを担当することも。企業ごとに考え方が異なるので、OJTの担当は実に幅広い年齢の方がなっています。

OJTというと、仕事や社会人としての考え、振る舞いなど、「新社会人として成長する」のに必要なすべてを教えたり体験させたりサポートしたりするのがトレーナーのすべきことのようですが、何もかも知っていてわかっていて教えられる「スーパーマン」のような人はそうそういません。

だから、必然的に周囲を巻き込むことが必要になってきます。

「ここは苦手だから、○○先輩に肩代わりしてもらおう」
「この部分は、××課長から指導していただくほうが効果的だろう」

と上司でも先輩でも後輩でも他の会社の方でもできるだけ大勢を巻き込んで、若手を育成指導していくことがOJT成功への早道です。

OJTトレーナーになる人の要件というのはたいてい人事などが決めて、事業部などに提示して推薦してもらうようですが、「業務知識や経験がある人」「後輩指導に想いがあって前向きな人」などと書いてあることが多いようです。

しかし、上記の「周囲を巻き込んででも成し遂げた方がよいのだ」という考え方からすると、「巻き込める人」という要素も大事な気がします。

中原淳さん編著 『職場学習の探求』 生産性出版には、多くの研究者の実証研究が掲載されているのですが、中でもOJTをお仕事となさっている関根雅泰さんの論文は興味深いものがありました。

「誰が指導員としてふさわしいのか <略> 周囲に協力を求め、かつ新入社員と親しく会話するような指導員 <略> 職場メンバーに協力を促せ、かつ他部門と接点のある「顔の広い」人物のほうが望ましいと言える。」

おお、なるほど、なるほど。目からうろこです。

自分の業務知識や技術が長けていることよりも、自分に不足した能力をあちこちからかき集めてくることができる、周りを巻き込める人のほうがうんとふさわしいのではないか、と提言しているのですね。

これは、人事・人材開発の方に大きなヒントとなるような気がします。

関根さんの論文には、「OJTがどういう時成功するか」「指導員として何をすべきか」という仮説や実証が掲載されています。その他、この本は様々な切り口で「職場における大人の学び」のあれこれを研究した結果が載っていて、とても勉強になります。

お奨めの一冊です。

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