経営者やマネージャは、いざと言うとき「本」を読む、ようです。
先週(2/15水曜日)、当社のトレーニングセンターで「夜のセミナー」というのを開催しました。
私は、主催部門の人間ではないのですが、たまたま私が担当しているお客様が数人来場してくださることとなり、それもあってアテンドいたしました。
さて、講師の岩田松雄さんは、新卒で日産自動車に入られ、そこから、ボディショップ、スターバックスジャパンなどのCEOを歴任されてきた方です。
その「専門経営者」への道を歩む中で、経営者に必要なものは何だろう?と模索され、現時点で「これが大事なのではないか」と思うことを、ドラッカーと関連付けて話してくださいました。
いくつか印象に残っていることを以下に列挙します。
●初めて社長というものになったとき、社員を前に演説をした。「これからは企業価値だ。キャッシュフロー経営だ」と自信を持って宣言したのだが、どうも社員の反応が芳しくない。ビジネススクールで学んだことを張り切ってそのまま伝えたが、なんだか社員には通じていないように感じた。 何かおかしい、と思い、徐々に、「企業価値だとかキャッシュフロー経営だ」という表現をやめ、その代り、働く姿勢について語るようになった。たとえば、「挨拶をしよう」といった当たり前のことから。語るだけではなく、自分でも掃除するなど、動き始めた。すると、社内が徐々に変わってきた。「ああ、社長というのは、どんな姿まででも見られているのだ」とわかった。
●企業は何のためにあるのか?自問自答した。株主のため、とか、利益追求のため、とかいろいろな言い方があるけれど、ある日天啓のようにひらめいたことがある。それは、「世の中をよくするためにある」ということだ。これが企業のミッションで、自分のミッションでもあると思った。だから、企業活動を通じて、このミッションを実現していかねばならないと思っている。
●ミッションが大事なのは、企業とか社長だけではない。個人個人でも大切なことだ。「自分のミッションは何か?」を考え続けてみることには意味がある。
●ある企業のCEOをしていた時のこと。従業員満足度の調査をした。売上利益が上がった年は、前年と比較して従業員満足度は向上した。「売れている!」という実感をみんなが持ったから、明るくもなったのだと思う。しかし、そこから先は、高止まりのようじゃ状態になった。なぜだろう?と考えた。実は、従業員にとって意味のあることは、もっと別にあって、「人間成長ができているかどうか」なのではないか、と気づいた。「ここにいれば、人間的に成長できる、去年と比べて、自分は人間として成長できた」と思える時、満足度も上がるのではないだろうか。
●マネージャにとって大切な資質は何だろう? 「真摯さ」ではないかと思う。英語では、Integrityを表現するのだが、これを「真摯さ」を訳したい。 最後の最後に「やってはいけないことを踏みとどまれるか」なども真摯さの表れである。
●マネージャでも経営者でも、何もかもを部下や従業員に知らせることができない。それは、コミュニケーションが届かないという意味ではなくて、言えないこともある、という意味でも、だ。それでも、部下や従業員が「この人がいうならついていくか」と最後には思える状態でなければ、人は動かない。なら、どうしたらいいのか? それは「人として信じられる」という人格の問題だろう。だから、マネージャとか経営者は、人格を磨くことが大事なのだ。
・・・。岩田さんが思考錯誤し、考え抜き、失敗も成功もして、そして、現時点で、「こういう考えに至っている」ということで紹介されたのが上記のようなお話でした。
さらに、ドラッカーを何冊も読んでみたら、まさに、そういうことが書いてあった、とも。(セミナーの中では、ドラッカーの著作もたびたび引用されていました)
私、常々思うのですが、経営者の方とかマネージャになって大きな組織を見ることになった方とか、必ず、壁にぶち当たり、そして、試行錯誤し、悩み抜いた時、まず間違いなく、過去の偉人や様々な学者の本を読んでみるのですよね。
ドラッカーだの松下幸之助だの、あるいは、中国の古典とか日本の歴史上の人物を主人公にした小説とか。
そして、大量の書物を読んで、行き着くことは、「ああ、自分が考えていたことはだいたい間違っていなかった」とか、「結局、だれもが同じことを言っているな」とか、そんなことで、そういう本に書かれたことから再度学び、時に軌道修正し、そして、確信できたことをまた現場で試す、ということを繰り返しているようなのです。
迷った時に、本を読む。なんか、わかるなあ・・・。よりどころとしての書籍。
特に、偉くなってしまうと、そうそう他人に相談できない。(だから、エグゼクティブコーチングという分野もそれなりに発展しているのだと思います)
相談できないけれど、何かに頼りたい。その時、過去の偉人なり歴史なり学者なりの言うことに耳を傾けるのでしょう、きっと。
本というのは、自分の経験や考えと照らし合わせながら読み進める時、もっともその価値が光るように思います。鵜呑みにするのでもなく、かといって、全面的に否定しながら読むのでもなく、フラットな気持ちで書物に対峙すれば、そこから何かを拾い集めることができるのです。
上記、箇条書きにした、岩田さんの言葉一つ一つも「なるほどなぁ」だったのですが、それ以上に、「何かあったら本を読んでみる」ということに私は深く感じ入りました。
なお、岩田氏を招いたセミナーはシリーズ化されるとのことですので、ご興味がある方は是非次回ご来場くださいませ。多くの「起業家」と「起業を目指す方たち」が参加なさっていました。
【2/15(水)のセミナーはこんな感じでご案内しました】
経営者になる前と後で受け止め方が変わった!ピーター・ドラッカーのメッセージ