エッセイ:君の名は・・・
「あの、えっと、ほら、写真、入れるやつ、写真たて、というか、置いておくの、写真入れて、・・電気で動く、・・・・なんだっけ?ほら、あれ、フォト、フォト、フォトフレーム・・・デジタルフォトフレーム、そ、それだ!」
という自らの発言に端を発し、思い出したことをつらつらと。
モノの名前、ひとの名前、「名前」というのはどうしてこう忘れやすいのだろう?忘れやすいというより、覚えているはずなのに出てこない。その代わり、周辺情報はやたらと出てくる。(この症状は、年々悪化しますな。)
「あの、○○というドラマに出ていて、××に関わる役をやってて、有名な”△△”というセリフがあって、そのドラマの後、女優のXさんと噂になった人、なんだっけ?」
とか、
「えっと、ほら、材料を全部入れて、ががーっと混ぜる電化製品」
とか。
特徴や出来事やシーンを全部説明できるのに、ただただ出てこない固有名詞。
連想ゲームの加藤芳郎キャプテンみたいになってしまう(←「昭和」な喩えですが)。
一人連想ゲーム。
今なら「連想ゲーム」のキャプテンできるよ。ホント。絶対にキャプテン自らが「答えを言ってしまう」というルール違反も犯しそうもないし(笑)。
同年代の友達に尋ねたら、「うん、僕も全部その調子」と。 「あれ、あれだよ、なんで、あれでわからないの?」と。
「固有名詞」はNGで、
「指示代名詞」はOK。
わかる、わかる、わかりすぎる。
別の友人は、そんな時、とりあえず、「あ、い、う、え、お」作戦をとるという。
「あ、じゃない、い、い、い、・・・じゃないな、う、う、う・・・」と行けばいずれ、どんぴしゃの言葉にたどり着くという。でも、「時々、あいうえお全部が終わっても発見できない時があるんだけど。そうすると今度は、が、が、ががが、ぎ、ぎ、ぎぎぎ、・・・ぷぷ、ぷ、・・・ぽぽぽ・・って全部行くわよ」と苦笑いしていた。
これも、わかる。
で、この「あ、い、う、え、お作戦」について、私よりちょっと年上の方にお話ししたならば、
「あ゛ーーーーー、つい最近、アタクシ、それ、やったわ。」
聞けば、お友達をお食事中、ある男性俳優のことが話題になったものの、その席にいる誰もが例によって「周辺情報」は全部口にできるものの、ただただ名前が出てこなかったそう。
「くん」で終わることはわかっているが、「何くん」だったかが思い出せない。
そのままお食事会は解散し、くだんの女性は、自らハンドルを握り、帰途へ。
当然、運転しながら、「ああ、なんだっけ?なんだっけ?」とそればかりが気になり、とうとう、始めた。
「あっくん、いっくん、うっくん、えっくん、おっくん、かっくん、きっくん、くっくん、けっくん、こっくん・・・・
<中略>
たっくん、ちっくん、つっくん、てっくん、とっくん・・・・
<長くなるのでさらに中略>
はっくん、ひっくん、ふっくん、・・・あ、ふっくん、っていたな?、でも違う・・・へっくん、ほっくん、
まっくん、みっくん、むっくん、めっくん、もっくん、もっくん、もっくん? も、も、もっくん!?!?!? あー、もっくんだ」
・・・・
「もっくん」は、「あ」からは遠いぞ。
相当遠い。その間、何キロか走れてしまったかも知れない。
「お友達に知らせたいと思ったけど、わざわざ電話して、”もっくん”だったわよ、というのもなんだし・・・」
・・・・
そうなのだ。思い出した割に、そのために連絡するほどのことではない。
「ま、いいか、後日で」と思う。
次に逢った時、
「この間の俳優さん、思い出したのよぉー。あ、い、うー、って全部言っていったら」
「え?なんて言う人だった?教えて、教えて!」
「うん、あのね・・・・。えっと、ああああ、なんだっけ?」
再び、忘れてしまうのである。