心の回復力(レジリエンス)―「人生浮き沈みグラフ」で過去の逆境体験を力に変える
ある経営コンサルタントは、クライアントから深刻な相談を受けた。なんでも、顧客の信頼を一瞬で失ってしまう大失態をしてかしてしまったらしい。電話口の向こうのクライアントの声が濡れている。
そこで、経営コンサルタントはクライアントにこう問いかけた。
「過去に、似たような経験をしたことがない?」
「その時は、どうやってその課題を乗り越えたの?」
「その中で、最も上手く行ったことは?」
「もし、それを今の課題に生かしたらどうなりそう?」
「もし、課題が解決したらどんな感じがすると思う?」
そう、過去に乗り越えた体験の中から、クライアントのリソースを引き出し、今の課題に生かそうとしたのである。
「課題を乗り越えるリソースはクライアントが必ず持っています。それを信頼し、それを引き出すのがボクの役目なんです」
その経営コンサルタントは笑顔で答えた。
仕事をしていると、いろんな課題が降りかかってくる。その課題が大きければ大きいほど、めげそうになるし、心が折れそうになる。「こんな大きい壁、乗り越えられないんじゃないか」……と思う。
しかし、生まれてからこれまでの経験の中で、ボクらはたくさんの課題を乗り越えてきた。その経験を振り返り、今の課題を乗り越えるために必要なリソースを持っていることに気がついたとき、人は課題を乗り越える知恵と勇気を過去の自分からもらえるのかもしれない。
このとき有効なのは、人生の浮き沈みグラフを作ってみること。
何がきっかけでそれが起こったのか、その時の具体的なシーンや気持ち、感情などを書き出してみる。さらに、何がきっかけで好転しはじめたのかを振り替えることによって、自分が持っているリソースに気がつく。
以前書いたものにここ数年を加えた、ボクの近年20年の人生浮き沈みグラフ。逆境の中にいるときに何を考えていたのか、何がきっかけで変化し始めたのか、そのとき何をしたか。乗り越えることによってどんな気持ちを抱いたかなど、気持ち的な面、行動的な面を振り返ることができる。
昨日、心の回復力(レジリエンス)―「きっと、ボクは乗り越えられる」と思えるようになった理由という記事を書いたが、過去の逆境体験を乗り越えた経験が、「今回もきっと乗り越えられる」という気持ちを抱かせてくれる。
先日、NHKのクローズアップ現代で放送された“折れない心”の育て方~「レジリエンス」を知っていますか?~では、この内容を「過去の逆境体験を力に」という形で紹介している。自らの人生の浮き沈みをグラフにし、その時の状況や気持ちを書いてもらう。逆境グラフで過去の体験を見つめ直す事により、自らの逆境力や周囲の人たちの支えを再認識する事ができる。
非常に簡単だが、書いてみるだけでいろんな気づきがある。数年後に見ても非常に参考になるので、電子データで記録として残しておくのもいいだろう。
さあ、紙とペンを取り出して30分1人になる時間を作ろう。そして、これまでの人生を振り返ってみよう。