問題を解決してはいけない─人の話を聴いていますか?(4)
人の話を聴くのはむずかしい。特にむずかしいのは、どんな言葉で応答するかだ。聞き手の応答のしかたによって、話し手の気持ちは大きく変化する。聞き手がうまく応答できれば話し手の気持ちは癒され、まずい応答をすれば話し手は不愉快になる。では、悩みを打ち明ける話し手に対して、聞き手はどのような言葉を投げればよいだろうか。「人の話を聴いていますか?」の第4回目。(第1回~第6回の記事は下記をご覧ください)
(1) 目の前にいる相手の気持ちに寄り添おう
(2) 「質問の名を借りた命令」が相手を追い詰める
(3) 自分の経験から決めつけてはいけない
(4) 問題を解決してはいけない
(5) 相手を客観的に評価してはいけない
(6) 自分の話をしてはいけない
解決方法を教えてしまう
下記の応答例を見てみよう。
井上さん 「お客さんと打ちとけられなくて」
高橋さん 「一度飲みに行けばいいんだよ」
高橋さん(聞き手)は、お客さんと打ちとけるために飲みに行くことを勧めている。アルコールが入れば打ちとけて話をすることができ、心理的な距離を縮めることができると考えたのだろう。だから悩んでいる井上さん(話し手)に対し、飲みに行けばいいのだと伝えている。
解決策がほしいわけではない
しかし、このような解決策は話し手の心には響かないことが多い。悩んでいる井上さん(話し手)にすれば、ここに至るまでにいろいろと悩んでいたはずだ。もちろん飲み会に行くという考えもあったはず。でも実際には飲みに行くことで解決するような問題ではないのかもしれない。それに、今ここで高橋さん(聞き手)に理解してもらいたいのは、自分が悩んで苦しんでいるということだなのだ。
井上さん 「お客さんと打ちとけられなくて」
高橋さん 「打ちとけられなくてつらいんだね」
この応答であれば井上さん(話し手)の苦しみに寄り添っていることが伝わる。相手の苦しみに焦点を当てそこに声をかけてあげることで、相手に「理解してもらえた」という気持ちを抱かせることができるのだ。
相談をうける人は、相談する人の問題を解決してあげる必要はない。相談する人は解決できないことに苦しんでいる。その「苦しんでいる気持ち」に声をかけてあげることが必要なのだ。