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無意識のうちに言葉以外の情報を読みとっている ──非言語メッセージ

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そんなつもりじゃないのに......

無意識のうちに、相手に誤解を与えてしまうことがある。眠くてボーっとしているだけなのに「怒っているの?」と言われたり、メールで頼みごとをしたら「エラそうに」と言われたり。わたしはそんなつもりはないのだが、メッセージを受け取った相手からすると、そのように取られるようだ。

「そんなつもりじゃないよ」と説明しても相手に信じてもらえるわけもなく、一方的にわたしが悪者として扱われてしまう。残念ではあるが、意識したかどうかにかかわらず、メッセージを送った本人としては反省し、改めなければならない。

言語メッセージと非言語メッセージ

わたしたちが人に伝えるメッセージには「言語メッセージ」と「非言語メッセージ」がある。言語メッセージとは、言葉で伝えるメッセージのことである。口から伝えることもできるし、文字として伝えることもできる。

一方、非言語メッセージとは、言語以外のメッセージのことで、例えば、身体・表情・視線・声や口調・姿勢や動作・距離感になどによって発信するメッセージである。詳しい内容は下の表のとおりだ。

身体 体格、皮膚の色、顔、髪型など、人の身体的特徴からメッセージを受け取っている。大きな体格からは威圧感を感じたり、日焼けした肌の色から活動的な印象を持ったり、イケメンや美人だとそれだけで好感度を感じ取ったりすることがある。
表情 人が作り出す顔の表情からメッセージを受け取っている。ひたい、眉間、眉、目、鼻、口、頬、顎などの筋肉の動きによって、怒り、悲しみ、喜びなどの感情を受け取ることができる。
視線 目の向きからメッセージを受け取っている。目を合わせたり、合わせなかったりするかによって、関心、好意、忌避、嫌悪などの感情を読み取ることができる。
声や口調 声の大きさ、高さ、スピード、強弱などからメッセージを受け取っている。怒り、緊張、興奮、自信、やる気などの感情を受け取ることができる。
姿勢や動作 姿勢や身体の動きからメッセージを受け取っている。自信、やる気、関心、緊張などの感情を受け取ることができる。
距離感 自分と相手との間の距離のとり方からメッセージを受け取っている。身体的な距離が近いか遠いかによって、相手に対する感情を受け取ることができる。

通常、メッセージを伝えるという場合、言語メッセージのことを指す。しかし、意識しているかどうかにかかわらず、メッセージを伝えるときは非言語メッセージも一緒に伝えている。

例えば、書類に誤字があったので「間違っていますよ」と指摘するとしよう。その時、ニコニコ笑って言えば、書類の誤字に対して(あるいは誤字をした本人に対して)「不快に思っていないこと」も伝えている。怒った表情で言えば、「不快に思っていること」も伝えている。

また、誰かと話をしているとしよう。その時、相手の顔を見ながらうなずいたり相槌を打ったりすれば「話に関心があること」を伝えている。携帯電話やパソコンを見ながら聞いていれば「話に関心がないこと」を伝えている。このようにわたしたちは言葉で会話をしながら、言葉以外のメッセージも同時に伝えているのだ。

非言語メッセージが重要

非言語メッセージはコミュニケーションのなかで大きいウェイトを占めている。メラビアンによると、言語メッセージと非言語メッセージが矛盾しているとき、非言語メッセージのほうを重視する割合が93%(言語メッセージは7%)であるという。例えば、「やめてください」と口で言っても顔が笑っていれば、「笑っている」ことを重視して「怒っていない」と判断してしまうのだ。また、バードウィステルは二者間の対話では非言語メッセージが65%(言語メッセージは35%)を占めているという。いずれにしても、言語メッセージよりも非言語メッセージが重要なのだ。

非言語メッセージを疎かにしていると、相手に誤ったメッセージを伝えてしまう。冒頭にも話したように、そんなつもりじゃなくても、表情や態度は無意識のうちに多くのメッセージを伝えている。「怒っている表情」だけが相手に印象深く伝わり、言葉によるメッセージは相手に届かないことがあるのだ。また、言語メッセージは意識した通りに発信できるが、非言語メッセージは意識していないと、ひとり歩きするから注意が必要だ。

非言語メッセージが不足している

最近、わたしたちの生活では、対面のコミュニケーションよりメールやSNSなど非対面によるコミュニケーションが多くなっている。システム開発の現場でもメールやグループウェアなどが利用されている。この非対面によるコミュニケーションでも非言語に関する問題が起こっている。

メールによるコミュニケーションを考えてみよう。メールを使うことで文字による情報、つまり言語メッセージを相手に伝えることができる。しかし、文字情報だけでは非言語メッセージを読み取ることができない。先にも書いたように、人は非言語メッセージから相手の意図を汲み取ろうとする。そのため、メールに書かれた内容だけでは真意が汲み取れず混乱してしまう場合があるのだ。

例えば、企画書を提出した後、上司から

企画書見たけど、あれじゃ企画通らないね。

とメールが送られてきたら、上司の意図をどのように汲み取るだろうか。上司が普段から優しい人であれば「親切心」と解釈できるかもしれない。一方、普段から怒ってばかりいる人であれば「怒り」と解釈できるかもしれない。その場にいない上司の表情や口調がわからないため、真意がわからず、どのような行動を取るべきか判断に迷ってしまう。親切心から言ってくれているのであれば、企画書の見直しを始めればいいし、怒りから言っているのであれば、お詫びすることから始めなければならない。メールによる言語メッセージだけでは、混乱してしまうのだ。

非言語メッセージを補強する方法

このように、非言語が不足したコミュニケーションでは非言語メッセージを汲み取ろうとして、歪曲して理解してしまったり、都合よく理解してしまったり、相手の真意とは異なる解釈をしてしまうことが起こってしまう。それを避けるために、メールやSNSを使用するときも非言語メッセージを埋め込もう。そうすることで真意を伝えることが可能になる。

では、メールやSNSで非言語メッセージを埋め込めばよいだろうか。ひとつは絵文字やスタンプなどを使う方法だ。

残念です

のように書くと、ネガティブな気持ちだけが相手に伝わってしまうが、

残念です(T_T)

のように書くと、ネガティブではあるものの、相手を攻撃する意図がないことも伝えることができる。

また、周辺情報を伝えるという方法もある。メールであれば本文の前か後に、本文とは関係のない雑談を書くのだ。

例えば

昨日、○○というテレビドラマを見ましたが、嫌な上司をギャフンと言わせるシーンが痛快でした

快適な気候になってきましたね。近々、一緒に川でバーベキューしましょう!

といった情報を伝えることで、温かい体温を感じ取ることができるはずだ。

普段、非言語メッセージについて意識することは少ない。しかし、注意をしていないと意図していないメッセージを伝えてしまう。しかも、言葉以上の強さで伝わってしまう。あとで言い訳をしても取り返しが付かない。だから、意識して非言語メッセージを発信することが重要なのだ。

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