相手を客観的に評価してはいけない─人の話を聴いていますか?(5)
人の話を聴くのはむずかしい。特にむずかしいのは、どんな言葉で応答するかだ。聞き手の応答のしかたによって、話し手の気持ちは大きく変化する。聞き手がうまく応答できれば話し手の気持ちは癒され、まずい応答をすれば話し手は不愉快になる。では、悩みを打ち明ける話し手に対して、聞き手はどのような言葉を投げればよいだろうか。「人の話を聴いていますか?」の第5回目。(第1回~第6回の記事は下記をご覧ください)
(1) 目の前にいる相手の気持ちに寄り添おう
(2) 「質問の名を借りた命令」が相手を追い詰める
(3) 自分の経験から決めつけてはいけない
(4) 問題を解決してはいけない
(5) 相手を客観的に評価してはいけない
(6) 自分の話をしてはいけない
相手を喜ばせようとしてほめてしまう
下記の応答例を見てみよう。同じ会社に勤める青木さんと飯田さんの会話である。青木さんと飯田さんの2人は今年入社した1年目社員。2人とも営業マンとして奮闘している最中だ。
青木さん 「毎日メールして情報提供を心がけたんだ」
飯田さん 「それができるようになると一歩前進だね」
飯田さん(聞き手)は、青木さん(話し手)の行動に対して評価をしている。青木さん(話し手)を喜ばせたかったのかもしれない。あるいは良い行動だったと分析をしたのかもしれない。その結果、毎日情報提供をし続けた青木さん(話し手)に評価の言葉を贈っている。
客観的な分析や評価をしてはいけない
しかし、青木さん(話し手)が求めているのは、他の誰かと比較した客観的な分析や評価ではない。「Aさんよりも上だ」、「Bグループの中で上位3番に入っている」といった相対的な評価ではないのだ。青木さん(話し手)は、自分が努力しているということを理解してほしいのであって、誰かと比較したり分析・評価をしてほしいのではない。
青木さん 「毎日メールして情報提供を心がけたんだ」
飯田さん 「毎日!? それは根気が必要だっただろうね」
この応答であれば青木さん(話し手)の努力に注目していることが伝わる。他の人と比べたら大したことをしていないのかもしれない。しかし、青木さん(話し手)にとってはものすごい努力と頑張りがあったのだ。気づいてほしいのはまさにそこなのである。
聞き手は話し手の行動を客観的に評価する必要はない。その相手にとってどれだけ大変だったのかに関心を持ち、そこに応答してあげることが必要なのだ。