「言った、言わない」の水かけ論はなぜ起こるか? 伝言ゲームから卒業しよう!
伝言ゲームと職場の水かけ論
伝言ゲームという遊びがある。複数の人が一列にならび、先頭の人から順に後ろの人にメッセージを伝える。そして最後尾の人に伝え終わったときに元のメッセージとどれだけ変わっているのかを楽しむゲームだ。途中で異なる言葉に変えて意味が少しずつずれていき、最終的にはメッセージの原型をとどめてない。当初のメッセージと全く意味が違っていればいるほど余興としては盛り上がる。
わたしたちの職場でも、伝言ゲームが行われている。人に作業を依頼した後、作業の様子を確認してみると「言ったことと違う。そんなこと頼んでいないよ」ということが。余興なら大盛り上がりだが、残念ながら職場では笑い話にはならない。いい歳した大人がメッセージが歪められる仕組みを理解せず、それを予防することができていないのだ。恥ずかしながら、わたしもきちんと伝えられず失敗することがある。
「言った、言わない」が起こる仕組み
メッセージを正しく伝えるためには"省略"と"誤解"が生じる仕組みを理解しなければならない。
人が話をするときには省略が発生する。伝えようとする内容には大量の情報を含んでいて、それらを全て言葉にすることはできないためだ。例えば、楽しかったハワイ旅行について語るとき、ハワイで過ごした時間のすべての映像や音声を言葉で表現することはできない。そのため、一部だけを言葉で表現することになる。大量の情報の中から選択して言葉にするため必然的に省略が生じる。
また、話を聞くときには誤解が生じる。これは人が持つ"枠組み"が関係しているためだ。枠組みとはものの考え方や感じ方などを指し、これは顔や身体のように、誰ひとりとして同じものを持っていない。コミュニケーションをする時、自分が持っている枠組みを通して、その人なりの解釈をする。例えば、海という言葉から連想するイメージとして、「白いビーチと青い空、そしてエメラルドグリーンの海」というイメージを持つ人もいれば、「灰色の空、降りしきる雨、岸壁に高い波が叩きつけられて舞い上がる水飛沫」というイメージを持つ人もいるだろう。人はそれぞれ自分の枠組みを通して聞きとった言葉を理解しようとするので、話し手の意図とは異なる解釈をしてしまうのだ。「休みの日に海に行った」と聞いて「楽しそうだな」と感じる人もいれば「寂しいな」と感じる人もいるだろう。
メッセージを正しく伝える・受け取るためには
コミュニケーションに省略と誤解が発生することを理解していないと、いつまでたっても伝言ゲームから卒業できない。話し手はあいまいな表現を避け具体的に話す必要がある。また話し終えてそれでよしとせず、相手が理解できたかを確認する。聞き手は自分が理解した内容を伝える。そして、その内容が話し手の意図と合っているのか確認する。双方が協力して理解し合わなければならないことを心がける必要がある。
もし「言ったことと違う。そんなこと頼んでいないよ」と思ったら、それは自分の伝え方が不十分だったと考えよう。