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AIはメンタル相談をどう支えるか?

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心療内科医で横浜労災病院・勤労者メンタルヘルスセンター長をつとめる山本晴義医師は今年7月に『AIはメンタル相談をどう支えるか?』というタイトルの書籍を出版した。

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メンタルヘルスの相談は、対面を基本としつつも、電話やメール、SNSも利用されるようになってきた。拙著でも紹介したとおり、山本先生は2000年から今日まで、毎日ほぼ休みなくメールでの相談業務を行っている。

メール相談では、相談者から「死にたいです」といった深刻なメールを受け取ることもあるので、返信には慎重であたたかな配慮と高度なノウハウが求められる。山本先生はメール相談の達人で、それは「山本流メール相談」として知られ、多くのカウンセラーが研修を通じて学んできた。

先生は自らのノウハウをChatGPTに学習させた「山本流AI」を開発。今年4月に発表された論文(山本晴義・福岳英一「メール相談に対するAI活用の可能性」『精神治療学』2026年4月号)では、①山本先生本人の回答、②山本流を学んでいない一般的なAIの回答、③山本流AIの回答、の3つを比較した結果が報告されている。

カウンセラー達が評価した結果は、①本人の回答と比べ②一般的なAIの回答の評価は若干低いものの、その差は小さいことが明らかになった。さらに驚かされたのは、③山本流AIの回答は①本人の回答よりもはるかに高い評価を得たことだった。

この結果を見た時、わたしは考えこんでしまった。たしかに、疲れたり体調が万全でなかったりする生身の人間と違って、AIは安定した模範回答をスピーディに生成するだろう。だが、返信文を受け取る相談者の感想はもしかすると少し異なるかもしれない。相談者に評価者になってもらうことはできないので確かめようがないとはいえ、隙のない模範回答よりも人間味が感じられる回答を好ましく受け止める人もいるのではないか、などなど。

本書の中では、「それらしい返信と適切な返信は異なる」として、いくら正しい情報を返信しても相談者の状態への配慮がなければ受け止めきれない、望ましい要素を数多く含んだ文章をAIはつくるが、相談者が必要な要素を必要な順番で返信するのは人間の判断になる、と書かれている。

いずれにしても、人間のカウンセラーがAIに代替されることはない。山本先生は、AIと人間が協働してより多くの人びとを支援する、カウンセラーは一人一人の相談者により深く向き合えるようにする、そういう未来を目指している。

 そのために、実験に使われた第1フェーズの「山本流AI」はメールの返信文を生成するが、第2フェーズでは設計思想を大きく変えて、返信文は生成せず、カウンセラーが考えるための材料を提供して「返信を助けるAI」の開発が進められている。メンタルヘルス相談では、人間の判断と責任をより重視したAIの開発と活用こそ求められるということなのだろう。

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