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8月15日。死者と戦争に思い寄せて~『急に具合が悪くなる』『少年が来る』

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815日。死者や戦争に思いを寄せる日に、今年に入ってから読んだ『急に具合が悪くなる』と『少年が来る』の2冊の本を再び手に取った。

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■ 『急に具合が悪くなる』

カンヌ国際映画祭で『急に具合が悪くなる』の主演二人が最優秀女優賞を受賞するまで、わたしは同じタイトルの本が2019年に出版されていたことを知らなかった。上映時間が3時間を超える大作と聞いて映画鑑賞はためらっているのだが、その代わりに原作を読んで感動した。

哲学者で末期がんを患う宮野真生子と文化人類学者の磯野真穂の往復書簡で、1~10便(10往復)・計20通の手紙で構成されている。とくに、宮野に死が迫りつつある7便からは気迫のこもった文章のやり取りが続く。磯野が「宮野にしか紡げない言葉を記し、それが世界にどう届いたかを見届けるまで、絶対に死ぬんじゃねーぞ。」と書くと、宮野は「うん、わかった」と約束する。それは、死なないことの約束ではなく、未来への賭けであり、くじけない覚悟なのだ。

「未完結なまま残ったものは、その人が生きていた/生きようとしていた痕跡でもある」と宮野は考えている。だから、がんの末期で激しい身体の苦痛に襲われても、単にケアを受けるだけの人にはならず、九鬼周造を専門に研究してきた哲学者として最後まで自らの思索と執筆をやめることはなかったのだ。宮野は42歳で旅立つが、「死ぬまで(よく)生きる」をみごとに実践したといえるだろう。

この本は、異なる分野の研究者二人が自らの専門を足場として立ち、往復書簡という形式を借りて向かい合い、対等で率直な対話を続け、「魂の分け合い」と互いに感じるところまで行きついた稀有な記録である。

■『少年が来る』

 2024年に韓国の作家ハン・ガンがノーベル文学賞を受賞したニュースに接したとき、今年も村上春樹はだめだったんだなあ、というのが最初の感想だった。アジア女性で初の受賞とあって気にはなっていたが、すぐに本を手に取ることはなく、今春になってようやく『菜食主義者』『少年が来る』『すべての、白いものたちの』を立て続けに読んだ。

この3冊はまったく異なる世界を描いているにもかかわらず、いずれも日本語訳は詩のような美しい散文で強く印象に残る作品ばかり。なかでも、光州事件に取材した『少年が来る』は、軍に虐殺された市民の体と心をまっすぐに描いていて胸を打つ。たくさんの人が体に銃弾を受け、血が吹き出て、内臓が飛び出し、息絶えていく。大量虐殺をリアルに描いた小説は他にもあるのかもしれないが、わたしは読んだ記憶がない。

とくに印象的なのは、殺された少年の魂が語り出す第2章。だんだん息苦しくなって読むのが辛くなるほどだが、作者は読者とは比較にならないほど辛く苦しい思いをしながら執筆を続けたに違いない。

韓国の悲しい歴史にとどまらず、世界各地で起こった虐殺の歴史を思い出させるし、いまも続く戦争の残虐さをひしひしと感じさせられる小説である。次は済州島4.3事件を題材とした『別れを告げない』を読むつもりだ。

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