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通信業界特殊偵察部隊のモノゴトの見方、見え方、考え方

顔面神経麻痺を患った話 (2/6) 事前のこの症状に気がついていれば

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実は顔面神経麻痺は誰もが発症する可能性がある病気。ただし軽度の場合には比較的短い期間で元通りに回復出来るようです。しかしながら私が2019年の正月明けに発症した状況は症状を判断する専門医による40点満点の機能評価で4点。医師からも余り見ないほどの重症だと言われた状況でした。。
そしてそれから足掛け4年も経って症状も随分と落ち着きました。
最初の段階で医師からは「元の顔に戻る可能性は非常に低い」」と言われていたのですが、黙っていればそれとはわからない程度にようやく回復してきた今、今回は2回目です。

 

最初の緊急入院とステロイドのパルス投与

忘れもしない2019年1月10日、顔の左側で顔面神経麻痺を発症しました。明らかに顔がおかしいと駆け込んだ馴染みの耳鼻咽喉科のドクターに「大学病院に行け」と指示されて行ったのは、これまたたまたま自宅から徒歩15分 / 車なら5分のところにある大学病院。顔の動きは明らかにおかしくてこの朝もコップから水を飲むことすらできません。ストローでなんとか口の右側から吸い上げて、でも溢れるので口の左側を手で押さえて飲む始末。
もう誰が考えても明らかにおかしい状態です。

とはいえ大学病院で見てもらうことになったんだしなんとかなるんじゃないかと翌1月11日の朝一番でお気楽に保険証と診察券と財布だけ持って病院に行ったんですが、一応扱いは初診なのに予約の人の待ち順をほとんどすっ飛ばして診察室に通され、そこで診察。最初は初診の若い担当者だったんですが、一目見てすぐに耳鼻咽喉科の一番えらい人含め数人のドクターに招集がかかりました。全員が見る中で顔面神経麻痺の状態を柳原法と呼ばれる40点満点で診断する流れになり、そこで出たスコアが4点。

「それって何を意味するんですか?」
「38点以上だと何もないもしくは完全治癒。逆に8点以下だと完全麻痺です。」
「え?」
「ということですぐ入院してステロイド投与の治療に入ります」
「え?」

幸か不幸か自宅まで徒歩15分です。そのまま病室に拉致されそうになったので「着替えを取ってきます」と言って一旦家に帰り、仕事に出かけている妻に「即入院になった。病室とかは後で連絡する」とメール送信。着替えを取って戻ってそのまま入院し、そのままステロイドの点滴が始まりました。

Screenshot_s.png

この時点ではまだお気楽だったのですが、間もなく世の中そんなに甘くないことを思い知ることになりました。

 

ステロイドのパルス投与それ自体は通院でも出来るんですが...

ドクター曰く、私自身の投与上限量を3日間続けて、その後2週間かけてステロイドの量を減らしていく治療となるとの説明で、この時退院したのは結局入院から10日後でした。まぁ寝てるだけだしこの状況では仕事も無理だしなぁと上司に「入院になっちゃいましたー」と明るく電話したのはステロイド投与の直前。いや、しかし、これ、キツかったです。なんだかずっと体中で何かが何かと戦っているような感じで、点滴してるだけなのに起きていられなくなるほどしんどい。

ステロイドの投与だけなので通院でも治療可能だけれど、パルス投与中、そして投与量減量の特に初期段階で何が起きるかわからないので入院してもらいますという説明でしたが、あの状態ではタクシーで5分の家に帰っても何もできない。病院で寝てる方が色々安心だというのがよく理解できました。

 

病院食が足りない

最初の入院の時は、点滴している間だけ安静にしていて、あとはそこに居るだけです。おかしいのは顔の左半分だけ。首から下は全然普通に元気な状態です。断続的に襲ってくるしんどさはあるのですが、あとは病室のベッドの上に居るだけ。それでも体の中では色々頑張ってるみたいで、特に吐き気とかも無いなかでお腹は空きます。

そして普通に病院食が出て、お椀物は自宅から持ってきたストローを使わないと無理だったのですが、それでもまぁ普通に食べられる。でも... 量が足りません。点滴が終わったらすぐに院内の売店にいってお菓子とかパンとか買ってきたんですが、それを見た看護師の方に「ごはん足りないですか?」と聞かれ「せめてご飯の量って増やせます?」と聞いたら「食事制限の指示はないから大丈夫だと思いますよ」ということで、翌日の昼から量が増えました。とはいえ自分の想像以上に体力を使っていたようで、でも相部屋の病室でポテチとか音のする物は食べづらいのでドーナツとか菓子パンとか結構食べてました。
でも時々強烈な睡魔が襲ってくるのは仕方ない。
体の中で顔面神経の中に入り込んだ(多分)ヘルペスウィルスとステロイドの力を借りた自分の体が戦っているであろうことを想像しながら、とにかく寝るしかない状況でした。

 

しかし全く回復の兆しが見えなかった最初の治療

神経がおかしい病気なので、どんな治療をしようが急に回復することはありません。特に症状が重い自分の場合には数か月もしくは数年という単位で見るしかないと最初からいわれていたので焦りはありませんでしたし、私からも当初から治療方針として長期的に何か回復の役に立つのであれば手術を含め出来ることは全てお願いしたいともお話していました。ただし私の状況の場合、治療方法にはそれほどバリエーションがあるわけでは無いのですが。
そしてステロイドのスパイク投与による治療期間を終えて退院し、まだコロナ禍が吹き荒れる前でしたが本来外回りの仕事が担当なのを当面在宅勤務にさせてもらってずっと様子を見る状態が2か月ほど。
でもほとんど状況は変わりません。
ドクターからは最初に治療方針についていくつかのオプションを聞いていました。

  1. 発症から直ぐであればまずはステロイドのパルス投与による回復を目指す。多くの場合にはそれで回復するが、状況を見てみないとわからない。
  2. 1か月から2か月状況を見て回復が思わしくないようであれば、神経が通る頭蓋骨の穴を広げて神経にかかる圧力を下げるという外科手術という選択肢がある。(ここまでは耳鼻咽喉科のテリトリー)
  3. それでもだめな場合には信号を伝達する神経の信号を伝える力が弱くなっていることが想定されるので、信号が通りにくくなっている神経経路を太くし弱い信号でも少しでもロスが無く伝えるようにするために身体の別のところか神経を取ってバイパスさせる外科手術という選択肢がある。(ここからは形成外科に引き継ぐ)
  4. 直接的な外科的処置として現状取れるのはここまで。どこまで回復するかは全くわからないが、神経の問題なので数か月数年数十年あるいは死ぬまで付き合っていくしかない。
  5. 機能回復という意味では待つしかないが、顔の中でどこかを動かすと意図せず別のところが動く共同運動と呼ばれる症状が出ることがある。
  6. またよくあるのが眼瞼下垂で、瞼をどうしてもあげられない場合には方法論として美容整形でも行われることがあるのと同じ額の筋膜を糸で引き上げる手術という対症療法はある。但しびっくりしたような目になるという見た目の問題に加え瞼が完全には閉じなくなるため、外科的にどうしても必要だと判断できない場合には積極的にはお勧めはしないが、治療の一環なので健康保険も適用できるはず。ただしあくまでも患者さん本人に実施の判断をお願いすることになる。

等々。最初からこの全てを聞いていたのですが、そもそもあっという間に戻る可能性が低い事を想定して教えてくれていたのだと思います。
で、実際に上記のうち最後の額の筋膜の引き上げ手術以外は全部通ってきました。最後のも病気の治療の一環なので美容整形のように自由診療の流れではなく健康保険が使えるとは言われたのですが、実際には瞼だけでなく目の下側も下がっているので上だけ引き上げると本当に瞼を完全に閉じることが出来なくなり、涙の循環にも影響が出る可能性があることから判断は慎重にした方が良いという話はありました。正直今の段階で不自由はあるのですが、結局そこまでは踏み込んでいません。

因みに共同運動でいうと、今の時点で残っているのは唾液と涙が連動してしまうとか、あとは口を大きく開けると左目が閉じてしまうなど。体の中で傷んだ神経が回復する中で信号の混信が起きてしまい、本来動かすべきところ以外に信号が伝わってしまうことによるもので、人によってそもそも何らかの共同運動症状が出るか出ないか、何か月後何年後にどんな症状が出るのか、出るとしてもその出方や強さはどうなのか、出たとしてどうなったら解消するのか或いはそもそも解消しないのか等全くパターンがありません。まさに人体の神秘そのものです。

次回へ続きます。

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