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通信業界特殊偵察部隊のモノゴトの見方、見え方、考え方

IoTなデバイスが開くのは何色の未来なのか

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通信業界の末席で禄を食む私、IT業界側での通信の人というところまで遡ると30年以上通信回りを見続けてきているという恐ろしいことに気が付いたのですが、少なくとも通信業界に足を突っ込んでからも10数年が経過しています。その中で色んな「トレンド」が目の前を通り過ぎて行ったのを見かけ、見届け、見送ってきたわけですが、呼称自体は変化しつつ業界の基盤的なところで残ってゆくモノや何かというのはやっぱりあります。

たとえば日本で最初に「スマートフォン」を名乗った機種はiPhoneじゃなかったんだよとか言っても「何言ってるんだか判りません」と普通に言われる今日この頃、振り返ってもあまり意味がないことってのは当然いっぱいあるんですが、たとえば「世の中にセンサーネットワークを張り巡らして色んなことができるようになるぜ莫大なデータが集まってそれらを処理すれば新しい未来を切り開けるぜ」という話を当時の勤務先の米国本社のCTOがメッセージしていたのは1998年なんですが、一企業のCTOの夢の話だよねという事でそのまま過ぎ去ってしまいました。なんでその話を覚えてるかというと、そのインタビューのそのメッセージの部分を2000年に私が現場の統括を担当して出展した博覧会みたいなイベントのメインシアターで流用したからなんですが、まぁそんな大量なセンサーと、それらを結ぶネットワークと、それらを処理するデータ処理施設っていつ頃できるんだろうねぇと言ってたのは昔の話。

 

通信屋から見ればIoTデバイスは「端末装置」の一つでしかないわけですが

いわゆるIoTなデバイスや、それを取り巻く環境の話、そしてそれが開く「バラ色の未来」的な話とかが色々各所を賑わしていますが、正直通信屋としては「提供できる手順で繫ぎに来てくれたら通信の仲立ちをしまっせ」というところが基本で、誰がどんな内容のやり取りをしてるのか知りませんし、仮に何らかの理由に基づいて知ることになっても法的な権限と根拠に基づく要求に応える以外には誰にも言うことはできないのが電気通信事業法の規定。

いや、何むつかしいこと言っているかというと、いわゆるIoTなデバイスがどこの誰にどんなデータだろうが音声だろうが映像だろうがを送ろうが知ったこっちゃないということを改めて言いたいということです。逆に言うと、普通に正しい通信手順や通信契約に基づく方法でどこかにつないでいれば、常に正しいデバイスにしか見えないということです。

 

あなたの使うネットワークカメラやボイスコマンドで動くデバイス、あるいはそのほかのIoTデバイスは本当にあなたの味方なのか

じゃぁ、ネットワークにつながるデバイスを性善説でとらえてよいのか?ってのが次の問題だと思っています。

  • たとえば特定の国やメーカー製の製品がどこかの政府機関などでの使用を禁止された事例。
  • たとえば特定の国やメーカー製の製品が購入者の意図しないところで勝手に動作していると認められる事例。
  • たとえば特定の国やメーカー製の製品が購入者の知ることなく特定のどこかに何らかのデータを送信している例。
  • たとえば...

実はあまり他人事とは思いわないほうが良いなと思うことが時々あります。
特定の何かがどうのという表現はあまりしたくないですが、「これは安いぞ」「これは便利だぞ」「これは新しいぞ」と飛びつく時のリスクが下手すると個人で受容できる以上の責任を負うことになる可能性が無くはないのが今のネットの世界だということはもう一度考え直しても良いとは思います。

 

あなたのネットで買ってきたのと同じようなネットワークカメラが勝手に動いたり付属のスピーカーから知らない言語で呼びかけられたりすることが現実にあったりするのはご存知ですか?

  • あなたの目の前にある「便利なスピーカー」が聞いてるあなたの部屋の中の音は本当にそのスピーカーだけが聞いてるのかな?その先で更に別の誰かが聞いてないと言い切れますか?
  • あなたの部屋で動いてる「お掃除ロボット」は本当にお掃除だけをしているのかな?
  • あなたが買ってきたACアダプタはACアダプタとしてだけ動いてるかな?SIMカードが仕込まれてたACアダプタが最近見つかったんですけどね。

何をどこまでどうリスクとして捉えるかはとても難しい話です。
それらのデバイスは家庭の中だけにあるわけでもないから更に難しい話です。
そもそもIoTなデバイスって別にカメラとか何かとかパッケージ化された製品として目に見えるものだけではなく一様にまとめられる話でもないのは百も承知です。

でも、これからの世の中、何かしらちゃんと考えて行動しないとIoTなデバイスが余計なリスクを呼び込むことがあるというのは常に考えておいて良いと思ってます。

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