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【シニカルな視点】 「英語圏」という表現にみる話の前提条件設定の難しさ

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一部で話題になっている梅田望夫さんのインタビューについていろいろなブログやTwitterのTLなどで多様な意見が出ているようです。確かにワタシもそれなりに思うところはあるのですが、ここでは元のインタビューと議論を眺めつつふと気になったことをひとつ。「英語圏」ってどこを指すんだろう?

 

考えをまとめる上でのグルーピングとクラスタリングという作業

ある事象を俯瞰する場合、当然のように一定のグループを設定したり、全体をいくつかのクラスターに分類して、相互の反応の違いや状況の違いを比較・評価するということが行われるわけです。この分類方法によって求める結果が出るかどうか、逆に言うと求める結果を出すためにどのように分類するか、というのがとても大事になったりします。やりすぎると作為的といわれるわけですが、何かしら判断するために必要な分類方法を選ぶというのは一般的だとは思います。

 

求める結果に対応する分類、あるいは求める結果を出せる分類、そして・・・

そもそも分析をする人が結果の利用者であれば、その人が一番理解しやすい、一番説明しやすい分類がとられると思います。一方、その結果を利用して誰かに話をするには、その分類が聞き手(受け手)にとって理解できるかどうか説明しきれるか、ということが問題になります。

で、ワタシが気になったのは、梅田さんのインタビューにあった「英語圏」というクラスターの設定。非常にシニカルな立場を取ると、それってどこよ?という話になりかねません。

英語を主たる言語とする国?地域?それとも・・・

とりあえず間違いないのは、少なくとも梅田さんの言う英語圏にアメリカが含まれることだとは思います。ただ、純粋に英語圏というとイギリスも含まれてしかるべきですし、言語圏ということだともう少し広がるかもしれません。

 

ワタシが気になるのは、インタビューの中身の手前のクラスターの設定自体の部分

しかし、アメリカとイギリスでは国情も体制も制度も文化も何もかも違うわけです。非常に近い関係ではありますが、その実まったく別の状況があるわけです。

実際のところ、梅田さんの言う「英語圏」はアメリカであると理解すればよいのだとは思うのですが、そのアメリカでも州によって、都市によって、それぞれの環境によってまったく事情が異なるわけですから、全部まとめて「英語圏では」論を展開されると、ちょっと違和感を持ったりもします。

もちろん梅田さんのコメント自体にはいろいろ思うところはありますが、一通り考えた後にワタシにとって残った違和感の根っこって何だろう?と考えたときに残ったのが、説明しているある一定の層もしくはグループを示す「英語圏」という表現でした。

 

一般化の危険性

特にコミュニケーション系の仕事を担当していると、時に強引に自分が説明しなくてはいけないことの前提を一般化し、それに対してどれくらい有効かとか便利かとかの話に持ってゆくことがあります。以下はワタシの強引な作例ですが、たとえば・・・

(例 1) すでにインターネット環境上で広く浸透したWeb2.0の考え方。私たちの新しいソリューションは今までに無い生産性の向上とすばらしい・・・云々

(例 2) iPhoneがスマートフォンの代名詞となった今、私たちはオフィスのアプリケーションとiPhoneのスムーズな連携を・・・云々

(例 3) すでに広く利用が進むクラウドコンピューティング環境において重要なセキュリティーソリューションを私たちは・・・云々

それなりに強引です(笑) あ、どこかの企業や誰かの何らかの言い回しを持ってきたわけではありません。文例自体は100%ワタシの創作で、最初に前提を「一般化してるんだよ」と言い切ってしまい、その後の話につなげてゆくという手法を文字にしてみました。それを勢い良く言い切れてしまえば良いのですが、何かの拍子に聞き手が一般化した部分に違和感を持ってしまうとまったく逆の効果を発揮します。そこで思考がとまってしまいます。

さすがに大人ですから「ソースを出せ」みたいなことは言いませんが、真剣判らず、それでは困った状況に陥ったとき、その条件のデータをくださいとお話するとGoogleで検索した結果を指差して「ほーら、こんなにこの単語に引っかかるんですよ」と言われたことはあります。「そうなんだー。すごいねぇ」と笑うしかないです。これは。そのあとに会議室か給湯室に拉致して説教たくなります。

ということで、実は前提条件の一般化、あるいは条件のクラスタリングというのは注意する必要がある、注意が必要な手法だといえます。

 

で、最初に戻って「英語圏」というクラスタリングはワタシにどんな効果をもたらしたのか

純粋にワタシの感想ですが、「なんだか判らないけれど、話が腹に落ちない。それほど広くない経験と知識を広く一般化した英語圏全体のものだと言ってしまっているんじゃないのかな?」という印象です。ということで、前提としての「英語圏」ってどこよ?という部分の違和感が残ってしまっている、というのがワタシの素直な感想です。

ちなみにインタビューの場に居合わせたわけでもなく、あくまでもインタビュー記事として読んでいるわけです。実際にはアホなワタシでも納得できるような何かがあったのかもしれませんし、そもそもアホなので理解できないのかもしれません。

それやこれやで、誰かに自分の考えを伝えるのは難しいものだなと改めて考えた次第です。

 

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