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携帯市場の今後の不透明さ

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前回につづき 2.サービス業に製造業の価値観を持ち込むということの典型例として携帯電話市場に対しての不安を述べてみたい

ガラパゴスと称された進化の果て

この「ガラパゴス」ということが指摘されたのが、「情報通信産業の国際競争力強化」を謳った研究会での講演であった。総務省から日本の情報通信技術(ICT)産業には国際的競争力、つまりマネタライズポイントがとれない、状況をあらためて説明した時に形容した言葉であるようだ

日本の携帯電話主要会社の売上高は2兆円超。これは、フィンランドのノキア1社の売上高である2.8兆円以下であり、米のモトローラの売上高1.8兆円とあまり変わらない。さらに、国際標準化を基本とした第3世代携帯でもいち早く導入普及したにも関わらず特許の多くをQualcomなど米国企業が保有し、ライセンス料支払いを余儀なくされている。標準化モデルで負けている実態である

さらに、日本企業の携帯市場の収益がドメスティックである点も問題がある。海外売上が国内売上の3~4%でしかないと状況はまさに閉鎖的な生態系で独自の進化が発生する『ガラパゴス』」という言葉がFITする。

そしてこの言葉の暗黙値として、一気に海外から生命力が高い種が入ってくれば絶滅するという危機感が根底にある ということである。これは携帯市場のみならず日本のICT産業全般に通じる問題である。

Googleアンドロイドにおののく脅迫観念

本当に日本の携帯技術が孤島のように進化して世界市場に支持されないものになってしまったのだろうか。無料携帯の登場と期待していたグーグルの携帯ビジネス参入の戦略の一部として派手に打ち出されたAndroid。オープンプラットフォーム戦略として世界大手のキャリアと端末メーカー33社がすでに参加を表明しているようだ。

一部の産業ではこの動きにおののいているようだ。おそらく、これはインテルとWindows連合のウィンテルが90年代にパソコンをメーカー主導から水平分業化による多様で低コストな周辺機器やアプリケーション企業が主役となるアセンブル産業へと以降し、PC市場のハードウエアの付加価値が著しく低下し、ウィンテル側がちゃりん・ちゃりんと儲かる仕組みを仕掛けられたナイトメアを彷彿させるからではなかろうか。

少ない情報ではあるが、androidはマッシュアッププラットフォームであるとされ、googlemapと同じ発想と言えなくもない。通信サービス、携帯ハード、OSファームウエア、アプリケーションといったバリューチェーンの極一部に食い込めていけるかどうかであろう。仮にOSファームウエアを抑えることが出来たとしてもウインテルのような土俵に持ち込まれる可能性は90年代のPCと大きく環境が異なることを考慮するだけでも低い。

これが確実にインパクトを持つといえる点は、わが国の携帯産業の電話会社や時として端末が異なれば、その上で利用できるサービスには大きな違いがあり、ようやく番号ポータビリティにより一部緩和されたユーザー選択コストを囲い込みとしていた携帯ビジネスの根本的見直しを迫ることにつながるからである。ある意味仲良く喧嘩してきた会社同士が業界のイニシアチブを失うような構造変換をかけられるという点ではないか

構造変化で最も問題となるのがキャリアが製品からサービスを垂直統合するという経済連鎖の仕組みが崩れることである。携帯電話における高機能ソフトウェア開発費の高騰の問題視と、Googleがしかけようとしているフリーソフトウェアの提供は、既存の携帯ビジネスプレイヤーには好機ともとれるし、大きな顧客流出のリスクとも捉えられる。

携帯産業が国際競争力を回復するためには

私の知る限り日本の携帯が国際市場の支持を失っていった根本原因は「オーバースペック」であると認識している。今回のフリーソフトを活用して低価格路線を打ち出す機会と捉えるのか、さらなる位置情報などを活用したロケーションアウアーネスなどの付加価値サービスの路線を追求するのか、おそらくどちらも必要になるのであろうが、低価格の端末の需要が急激に伸びている新興国に力を注いでいるモトローラやノキアと渡り合っていける機会は残っているはずである。JAPAN BRANDは品質においては今も支持が高いのだから

また、各社ごとに異なる画像処理方式などを共通化し低コスト化することも必要である。技術差異を付けるということはあきらかに国内でのコンテンツサプライヤーの囲い込みを意識しているからであろう。オープンプラットフォームを採用することで大きなコスト低減を図ることはCP/SPのみならず携帯通信事業者にとってもメリットとなるはずである。

しはいけない高・大・統

携帯ビジネスでの問題で内包されているのは移動体通信というサービスが根幹であるにもかかわらず収益を上げるために機器を機能強化し、必要なのかおせっかいなのか不分明なサービスを抱き合わせてしまう、これまでの製造業の高機能化、大型化(画面など)、統合化という「してはいけない3元素」にはいっているからであると認識している。

 今すべきなのは携帯というパーソナルでハンディな通信&情報端末を活用し、いかにより豊かなミライを描いていくか、そもそも移動体通信とは人間とどう関われ可能性を秘めているか、等を再度問い直し、製造業モードから抜け出すことかもしれない

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