最も礼儀正しい国、日本。同時に見えてくる文化による礼儀の違い
こちらの調査を参考にしました。
https://www.remitly.com/jp/en/landing/worlds-politest-countries
国際送金サービスRemitlyが実施した、世界26カ国・4,697人を対象とする「礼儀正しさ」に関する意識調査です。
海外に移住した、あるいは見知らぬ土地を旅した――そんな経験がある人なら、誰しも一度は感じたことがあるはずです。
現地のカフェでかけられた何気ない一言。言葉の壁にぶつかった時に向けられた、忍耐強い笑顔。
不安だらけの異国の地を「自分の居場所」に変えてくれるのは、豪華な観光資源ではなく、そうした日常の小さな礼儀の積み重ねだったりします。
そして今回の調査で、世界から圧倒的な支持を集め、1位に輝いた国がありました。
日本です。
得票率35.15%。2位に2倍以上の差をつけた圧勝
まず数字から見ていきましょう。
日本の得票率は35.15%。2位のカナダ(13.35%)に、2倍以上の差をつけての1位です。
なぜここまで評価されるのか。理由は、礼儀が単なる「マナー」の枠を超え、社会の調和を保つための不可欠な作法として、日常生活の隅々にまで浸透しているからです。
- お辞儀――挨拶の枠を超えた、敬意そのものの表現
- 敬語・丁寧語――言語構造そのものが、他者への配慮を前提に組み立てられている
- 列に並ぶ、静かに過ごす――特別なことをしているつもりのない、当たり前の秩序
一つひとつは些細な所作です。しかし、それが例外なく積み重なっているからこそ、海外の旅行者や移住者は「歓迎されている」と肌で感じるのでしょう。
ところが、日本人の自己評価は下から2番目
ここからが、今回の調査で一番面白いところです。
世界からは「最も礼儀正しい」と評価されているにもかかわらず、当の日本人は自国の礼儀正しさを26カ国中25位――つまり下から2番目と、極めて厳しく採点していました。
自己評価スコア(10点満点)を並べてみると、この落差がよくわかります。
| 国 | 自己評価スコア |
|---|---|
| ブラジル(世界最高水準) | 9.46 |
| インド | 9.41 |
| 日本 | 8.73 |
世界1位の国が、自己評価では最下位クラス。この矛盾こそが、今回の調査の核心だと私は思います。
これは単なる謙遜ではありません。おそらく「礼儀正しさ」という言葉が指し示すものが、日本と海外とではそもそも違うのです。
海外では、愛想の良さや積極的な気配りが評価軸になりやすい。一方、日本では礼儀は「できていて当たり前」の前提であり、自分にはまだ至らない点があると捉える。自分を高く語らないこと自体が、相手を立てる作法である――そんな価値観が、この数字の裏にはありそうです。
それぞれの国の「礼儀」を並べてみる
日本の立ち位置をより立体的に理解するために、他の上位国の礼儀のスタイルを整理してみました。
カナダ:礼儀正しさと親しみやすさの二冠
日本に次ぐ2位(13.35%)。しかも「最も親しみやすい国」でも世界1位(10.5%)というダブル受賞です。
自分の手に負えない事態にすら謝罪の言葉を口にする――そんな細やかな配慮と寛容さが、カナダらしさとしてよく語られます。豊かな自然や強い雇用見通しも相まって、移住先としての人気を後押ししています。
ブラジル・インド:情熱と暗黙知が支える礼儀
自国の振る舞いに最も強い自信を持っているのがブラジルです。自己評価スコア9.46は全体トップ。彼らにとっての礼儀とは、温かいホスピタリティや深い会話を通じた「人との繋がり」そのものです。
自己評価3位のインド(9.41点)は、また違ったアプローチを見せます。「Please」「Thank you」を多用する欧米型とは異なり、友人や家族を献身的に支えるという「暗黙の礼儀」が社会的な期待として根付いています。
イギリス・中国・ドイツ:三者三様の流儀
- イギリス――「Please」「Thank you」を絶やさない言語習慣と、列に並ぶ文化(キューイング)。ドライで自虐的なユーモアは、彼らなりの親愛の情の表れです。
- 中国――儒教の価値観を背景に、年長者への敬意と調和を重視。直接的な対立を避け、意見の相違を微妙なニュアンスで伝えます。
- ドイツ――丁寧さの定義は「直言」と「プライバシーの尊重」。信頼が深まるまではフォーマルな態度を崩さない一方、時間厳守や日曜日の静寂の遵守が、他者への礼儀と見なされます。
言葉少なで控えめな日本の礼儀と、ブラジルやインドの言葉・行動で示す温かさは、方向性がまったく異なります。どちらが優れているという話ではなく、礼儀の定義そのものが文化ごとに違う、という当たり前だけど見落としがちな事実がここにあります。
礼儀スタイル早見表
各国の礼儀の「軸」を一枚にまとめると、こうなります。
| 国 | 礼儀の軸 | キーワード |
|---|---|---|
| 日本 | 形式・調和 | お辞儀、敬語、控えめな謙遜 |
| カナダ | 寛容・親しみやすさ | 過剰なまでの謝罪、歓迎の精神 |
| ブラジル | 情熱・繋がり | ホスピタリティ、深い会話 |
| インド | 暗黙の献身 | 言葉より行動、家族・友人への尽力 |
| イギリス | 言語的丁寧さ | Please/Thank you、キューイング、自虐ユーモア |
| 中国 | 調和・敬意 | 年長者への配慮、対立の回避 |
| ドイツ | 直言・規律 | ストレートな物言い、時間厳守、プライバシー |
結論:日本人はもう少し、自分たちの礼儀に胸を張っていい
今回の調査結果は、二つのことを教えてくれます。
一つは、日本の礼儀正しさが世界から見て突出して評価されているという事実。もう一つは、当の日本人がそれを当たり前だと思いすぎていて、むしろ厳しく評価しているという事実です。
お辞儀、敬語、静かな秩序――日本人にとって空気のように当たり前のこれらの振る舞いが、海外から見れば「世界一」と評されるほどの価値を持っている。これは、自分たちの文化を見直すいいきっかけになるはずです。
そして、ブラジルの情熱、インドの暗黙の献身、カナダの親しみやすさ、イギリスの自虐ユーモア、中国の調和、ドイツの直言――礼儀の形は国によってこれほど多様です。自分の物差しだけで「礼儀正しいかどうか」を測ろうとすると、その土地の本当の魅力を見落としてしまいます。
次にあなたが異文化のなかで誰かと接するとき、その振る舞いの背景にある価値観に、少しだけ想像を巡らせてみてください。
そして――日本人であるあなた自身も、世界が評価しているこの「礼儀」という財産に、もう少し自信を持ってもいいのではないでしょうか。