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食品移香が止まらない!(前)付着する、食品以外の、カオリとニオイ。 ~日用品公害・香害(n)~

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食品パッケージの移香、食品への移香は、起こりうる。

高残香性柔軟剤や、抗菌系合成洗剤、その他、除菌消臭機能をもつ日用品などからの、物品への移香。

この移香が、食品パッケージや緩衝材にも発生している。素材によっては、貫通して、食品の表面にも付着する場合がある。また、移香する日用品を生産者が使っていれば、食品そのものへの移香が起こりうる。

SNSには、移香を報告するポストが多数みられる。
それに対して、しばしば、反論の声があがる。「移香」という現象自体を訝しむ内容だ。そんなことは起こるはずがない、という主張である。だが、そんなことが、起こりうるのだ。

移香問題は、香害に限定した現象ではない。香害が問題になる前からあった現象だ。
以前、当ブログでも触れているが、2008年に、消費者の保管ミスに、日清食品が巻き込まれた一件を、記憶している人もいるだろう。防虫剤を入れた家具の近くにカップ麺を置くなどという、消費者の想定外の保管方法が原因であって、メーカーには何の非もない。
その後、業界団体では、移り香注意マークが制定されている。今では、このマークは、パッケージなどに印刷されている。

また、商品のしおりや、ウェブサイトに、注意書きを記載しているメーカーもある。
たとえば、「金ちゃん」シリーズでおなじみの徳島製粉は、ウェブサイトに注意書きを記載している(ホームページのいちばん下、「インスタントラーメンの取り扱い保管についてのお願い」)。
だからなのか、回転が速いからなのか、スーパーに並ぶ同社の商品は、微香までだ。買い物客から付着したとおもわれる移香にとどまっている。

多数のメーカーが、移香はありうるものと考えて、注意喚起を促している。

衣類から放たれた物質、洗濯排水中の物質は、瞬時に生分解するのか?

そもそも、衣類から香りの粒が弾けて広がるという現象は、日用品メーカー自身が宣伝していることであって、嘘でも誇張でもない。
中には、キャップ1杯に膨大な数の香りカプセルが含まれている製品もある。これも、メーカーのウェブサイトに掲載されていた情報であって、嘘でも誇張でもない。

そうした香りの粒がすべて、その場にいるひとたちの鼻孔に吸い込まれるのであれば、移香は起こりえない。だが、そうではない。その場の大気中に拡散する。早稲田大学 大河内研究室の実験によって確認されている。
その空間に物品を置けば、どうなるか。香リの粒は、回転する洗濯槽の激流の中でさえ、衣類に付着するように作られている。衝突すれば、付着する。

では、一瞬香った後すみやかに生分解するのかといえば、そうではない。洗濯排水に含まれるその物質は、下水処理場をすり抜けて、海洋へ流出し、二枚貝に取り込まれているという、科研費の研究報告書がある。

「移香」という現象は起こりうるのだ。

ただし、発生頻度は、地域によって異なる。無香料製品や、旧来の製品のユーザーが多い地域では、移香は起こりにくい。比較的空気が良い場所に住んでいるひとたちには、この現象は想像しにくいかもしれない。

香料だけが注目される現状、ほかにも移香する日用品が...

移香するのは、香料だけではない。
「除菌・抗菌・消臭」系の製品の成分も移る。便宜上「移香」と呼んでいるが、「移臭」という表現のほうが実態に近い。

「香害」というキャッチーなワードによって、香料や、香料マイクロカプセルのリスクは、知られるところとなってきた。マイクロカプセルの一部がプラスチックでできていることもあって、脱プラスチックの潮流が情報拡散を後押ししている。

ところが、困ったことに、「香りのリスク」がクローズアップされるほど、「除菌・抗菌・消臭」を実現する化学物質のリスクが霞んでしまう。

なぜなら、フローラルやフルーツの香りは感知しても、抗菌系の物質のニオイは、感知しないひとが少なくないからだ。
感知力の有無で、消費者が二分されつつある。感知しない人にとっては、全くの無臭なのだから、寝耳に水。リスクを伝えても、ピンとこない。

さらに運悪く、コロナ禍が追い打ちをかけた。
抗菌系の日用品からの移香は、コロナ禍よりも前からあった現象だ。筆者は2019年に、ブログで取り上げている
その移香は、コロナ禍で、さらに強まった。除菌ニーズの高まりに、メーカーが呼応。配合している除菌・抗菌目的の物質は倍増どころか青天井だ。それを、より効果的と見込んで消費者が買う。売れれば、メーカーはさらに、高機能品を市場に投入する。スーパーやドラッグストアの売り場も、売れ行きの製品にスペースを割くだろう。悪循環に陥っているのではないだろうか。

香料とは全く異なる、除菌・抗菌・消臭製品のニオイ

読者の皆さんは、「除菌・抗菌・消臭」系の製品からの移香を感知したことがあるだろうか?

このニオイは、使用者が立ち去った無人の場所にも、長く滞留する。屋外でも、数メートル~数十メートル幅の塊となって漂い、無風状態では、ゆっくりとしか移動しない。その場にある物品を包み込むように、付着してしまう。

疑問におもわれるなら、試しに、スーパーで買った紙箱入りの商品、たとえば、アイスクリームや菓子やカレールーのパッケージ、ヨーグルトや牛乳の紙パックを嗅いでみてほしい。
プラスチックを熱して溶かしたようなニオイや、使い古した天ぷら油のようなニオイ、殺虫スプレーを一吹きしたときのような刺激臭を感知したなら、それが移香だ。食品から、食品以外のニオイがすることに気付いたなら、これは何のニオイだろうか?と考えてみてほしい。

食品の香りを打ち消すニオイ。パッケージに付着しているだけでも、食欲が失せるニオイ。
それは、食品パッケージに付着していてのぞましいニオイだろうか。

食品移香、前後編。
次回は、この数カ月の間に、筆者が試して無移香で届いた食品を紹介する。

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