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ヴィジュアル、サウンド、テキスト、コードの間を彷徨いながら、感じたこと考えたことを綴ります。

食品移香。世界に誇る「和食」が、消える。~嗅覚センサーを見直そう(14)~

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近年増えた日用品に含まれる合成化学物質により、食卓がきしみ始めている。
だが、気付いているひとは、まだマイノリティだ。
あなたは、どうだろう?
気付いているだろうか。食品にまとわりつく異臭に。

香料臭、刺激臭......異臭を放つ食品包装

和食の特徴を消し去る、最近の合成化学物質

平成25年12月、ユネスコ文化遺産に登録された、「和食;日本人の伝統的な食文化」(※1)。
その特徴として、「多様で新鮮な食材とその持ち味の尊重 」「健康的な食生活を支える栄養バランス」がある。
さらに、「自然の美しさや季節の移ろいの表現」。

食の価値を決めるものは、味だけではない。香りも重要な要素だ。
香りが喚起する、時の移ろい。
芽吹く樹々の香り、咲きほこる花の香り、田畑を吹き渡る風の香り。
食材を組み合わせたときに立ちのぼる、調和。

ところが、この香りに、異変が起きている。

もし、まだお気づきでないなら、スーパーで食品を購入して、パッケージのにおいを嗅いでみてほしい。
店内のにおいでかき消されて分かりにくければ、できるだけ無臭の場所へ移動して、パッケージに鼻を近づけてみてほしい。
ツンとする刺激臭や、熱した樹脂のような、食品以外のにおいを、発してはいないだろうか。

さらに、パッケージを開封して、食品そのもののにおいを嗅いでみてほしい。
においがパッケージを貫通して、食品に付着してはいないか。

食品の香りが、食品以外の、何らかの物質のにおいに、覆われ始めていることに、気付くのではないだろうか。

食の香りをたいせつにするひとは、このような状況を歓迎できるだろうか?
これをよしとするだろうか?
健康を維持するための食である。これは健康的なことだろうか?

もし、この状況に疑問を持たないひとが増えるなら、和食のゆくすえは危ういものとなるにちがいない。

※1 農林水産省「「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されました!

令和初日からフローラル。レジも動けば臭い立つ

食品パッケージに付着しているにおいの正体は、いったい何だろう?

嗅覚センサーが機能していれば、すぐに気付くはずだ。近年普及した、高残香・抗菌・除菌・防臭などの機能を付加した日用品に含まれる、なんらかの物質である。
洗濯あるいは噴霧した衣服、着用した人体、その手で触れた物から、特定の物質が拡散して、近くにある食品パッケージへと付着する。
この現象は「移香」と呼ばれている。

都会では、何年も前から知られていたものである。
それが、この1~2年、地方にも急速に波及してきた。現在の状況を、筆者の体験から述べてみる。

最初にお断りしておくが、本稿は、筆者の嗅覚センサーが取得した情報に基づくものである。
計測データなどはない。論文ではない。エッセイのように、読み進めていただきたい。

1年ほど前、行きつけのスーパーの一店員が、突然、強烈な洗剤臭を放つようになった。店舗全体が巨大な洗濯機と化したかのようだった。
青果売り場まで洗剤臭とあっては、むき出しの商品への付着が気になる。そこで、別のスーパーに鞍替えした。
ところが、この店も、令和初日、まさかのレジがフローラル。バーコードを読み取るたびに、ふわりと香る。

さらに、少数の客が、強いにおいを振りまき始めた。十中八九、規定量を守っていないとおもわれる猛臭だ。
客が店内を一周すれば、商品に軒並み移香する。

当人は、においの強さと拡散する範囲を、実際よりもかなり小さく見積もっているにちがいない。
スーパーの3コーナー手前から、強烈なフローラル臭が漂っていたことがある。
においの道は店内へと続き、日用品、弁当、畜肉加工品、乳製品、チーズとパンの特売ワゴンが、同じ強烈なにおいを放っていた。
なにを買ったのか、まるわかり。足跡を辿れること、ナメクジのごとし。
におった距離を、bingマップで測ってみたところ、約100メートル。それほど長く滞留するのだ。

これらの物質は「n次移香」する。ひとりの店員、ひとりの客から、店内の全商品へと移っていく。そして、そこからまた、触れたもの、傍にあるものに移る。もはや「合成化学物質の伝染」といっても過言ではない。

リアル店舗では避けられない移香。化学薬品臭を放つ食品

通路に面している商品ほど、移香は強くなりがちだ。
そして、回転の遅い商品には、移香が重積する。乾物など、何人もの客が棚の奥からとろうとした形跡があった。
服から商品へ移るだけではない。手にとった商品を棚に戻すと、手から商品へと移る。
移香商品を入れたレジかごには、特定の化学物質が日々蓄積していく。そして、次に入れられた商品へと移香していく。

においの付着度は、パッケージの素材によって異なるようである。
茹で麺、油あげ、畜肉加工品の袋には、移香しやすいようだ。棚の奥の商品だからといって安心はできない。試しに油あげを奥から取ってみたら、弱いながらも移香していた。

におう物質の中には、紙もプラスティックケースもラップも、容易に貫通してしまうものがある。
カレー粉を買ったら、紙箱を貫通して個包装に移香していた。
トレイの上からフィルム包装されていたサツマイモは、皮まで移香していた。店頭に並んで一日二日の商品だ。
3個1パックの魚缶詰は、フィルムを貫通して缶に移香していた。海外製造品である。製造段階で付着したとは考えにくい。店内での移香と考える方が妥当だろう。しかも、缶の重なった部分まで移香していた。缶を取り分けた瞬間に、フィルム外側に付いていた物質が3次移香したのだろうか?いや、「n次移香」する物質は、繊維の奥にまで届くサイズである。肉眼では見えない、わずかな隙間でも忍び込むのかもしれない。

バターのように紙パッケージに入った商品は、移香が強い。中の紙包装を貫通し、バター表面にまで移香していることもある。チーズも同様だ。SNSでは、アイスクリームやヨーグルトへの移香例も目にする。

日配品には移香しやすいものが多いようである。納豆しかり、豆腐しかり、厚揚げしかり。
納豆など中身への移香はなくとも、パッケージのにおいだけで、筆者の食欲は失せてしまう。大好物であるにもかかわらず、この半年、食べていない。パッケージをにおっていない家族は食べている。
豆腐も同様で、夏は冷ややっこ冬は湯豆腐があれば大満足、というほど豆腐好きの筆者が、この半年、ほとんど食べていない。

いまや、店頭に並ぶ食品のパッケージには、もれなく合成化学物質が付いているのではないだろうか。

今夏から激変したにおい。加速する移香

移香する物質は、一種類ではない。
人工香料、抗菌・除菌剤、防臭・消臭剤。それぞれの客のまとう多種多様なにおいが、ひとつの商品に、レイヤーのように重なっていく。複数のにおいがランダムに混じり合う。

華やかにフワフワと高く舞う香り(≒ フローラル?)、同じく花のようではあるが粉っぽさが際立つ香り(≒ パウダリー?)。
旧来の洗剤を濃縮したようなにおい(≒ 洗剤臭)、饐えたような湿り気のあるにおい(≒ 生乾き臭?)。
シンナーや灯油のようなにおい(≒ 溶剤臭?)、熱した樹脂のような臭い(≒ ゴム臭、タイヤ臭)。
刺激のある殺虫スプレーのようなにおい(≒ 殺虫剤臭)。
しみるような刺激が尾を引くにおい(≒ 消毒臭?)。
使い古した天ぷら油のようなにおい(≒ 抗菌臭?)。
(括弧)内のことばは、移香を感知する嗅覚センサーをもつひとたちのあいだでも流通している表現である。

何層にも重なるにおいは、複雑である。いや、複雑なものであった。過去形だ。

今夏から、においの質が、激変した。
筆者の嗅覚センサーが捉えるところでは、2種類のにおいが席巻している。消毒臭と抗菌臭だ。
消毒臭は、除菌スプレーを鼻めがけて何度も吹き付けたような、目と鼻に刺さるような刺激臭である。
抗菌臭は、殺虫剤のような刺激がガツンと来て、使い古した油と熱したゴムのようなにおいが後を引く。ベタベタとした不快感が強い、生存を脅かすような、不穏で不気味なにおいである。

これら2種類のにおいを放つ商品は、何なのか。
異なる2つの商品によるものと推測しているが、ひょっとしたら、時とともににおいが変化する、ひとつの商品かもしれない。

見当はついている。だが、確定ではない。
そこで、本稿では、便宜上、これらの臭いをまとめて「化学薬品臭」と表記する。

困ったことに、筆者の嗅覚センサーが感知するところでは、この「化学薬品臭」は、従来の人工香料とは、拡散範囲が大いに異なっている。
人工香料は、とくにフローラル系は、広く漂っていた。風が吹こうものなら、人間の鼻の位置にまで高く舞い上がるので、歩くだけで、においの靄に突入するため、気付きやすかった。
ところが、この、さいきん増えた化学薬品臭は、移香したモノの表面に貼り付いていて、においの拡がる範囲が狭い。無風状態の室内なら、せいぜい2~3m程度だろう。
おそらく、標準的な嗅覚の持ち主なら、至近距離でなければ感知しないとおもわれる。さまざまなにおいが入り混じるスーパーの店内では、商品に鼻を近づけてよくよく嗅いだとしても、全く気付かない可能性が高い。

これでは、いわゆる「香害」問題は、沈静化したように、いやむしろ改善しているかのように見えているのではないだろうか。
実際は、改善どころか、事態は悪化しているにもかかわらず。
においの拡散範囲が狭くとも、使用者のパーソナルスペースにとどまり続けるわけではない。
このにおいを感知する嗅覚センサーの持ち主たちから見れば、空気の質は急速に劣化している

店内のにおいや商品移香の強度は、店の規模とは、関係ないように見える。
スーパーの入り口から、消毒薬臭が噴出しているときがある。それに比べ、コンビニの店内は、においが薄い。
店の奥行きが浅く、風通しがよく、商品が短時間で回転するからかもしれない。
ところが、そのコンビニでさえ、店員は無臭か微香にもかかわらず、特定の棚にある商品に強く移香していることがある。

おりからの環境問題視点による包装の簡易化が、移香に拍車をかけている。
たとえば、キットカット。紙袋への変更は望ましいことだが、それは、移香の危機をはらんでいる。
コンビニで見つけ、家族用に購入したところ、外の紙袋に強く移香していた。中の個包装は大丈夫だった。店頭に並んで1~2日のものを購入して、これである。
このコンビニ、スタッフは無臭~微香である。店側には、何の落ち度もない。客からの移香である可能性大だ。防ぎようがない。

肉眼で確認できない物質を付着させても、器物損壊にはならない?

筆者の嗅覚が捉えているにおい。それには、いったい、いかなる物質が含まれているのか?
どの日用品に、どの物質が、どれだけ含まれ、どのように作用するのか、筆者は情報を持たない。

従来の香り付き柔軟剤には「総IgEを押し上げる可能性のある」イソシアネートが使われているものもあったという(※2)。さいきんの製品には、アクリルアミド(※3)が使われていると指摘する声もある。
イソシアネートにせよアクリルアミドにせよ、はたまたそれ以外の近年登場した合成化学物質にせよ、すくなくとも、「積極的に、嗅いで、摂取したほうがよい」物質でないことだけは確かであろう。
裏付けるデータがあろうがなかろうが、エビデンスがあろうがなかろうが、「食品パッケージに付着させると、食欲や購買意欲につながる」物質でもなければ、「食品に付着させれば、いっそう香りを際立たせ、より美味しくする」物質でもない。

それが、よりにもよって、食品パッケージ、ひいては食品そのものに付着している。
筆者の嗅覚は、そこに潜む、健康と感性に対するリスクを警告している。
放置することなどできない。食の風味を損なうもの、香りを捻じ曲げるものなど、避けたいではないか。

想像してみてほしい。
もし、客が、任意の化学物質を混ぜた水をアトマイザに入れて入店し、スプレーしながら通路を歩き、商品に付着させたら、どうだろう?
当然、店員は見咎めるはずだ。アトマイザの中身を知りようがなければ、通報したうえで、客を避難させる騒動に発展するかもしれない。

しかしながら、客が、合成化学物質の付着した服を着て入店することによって、商品に特定の物質を付着させたとしても、店員が見とがめることはない。たとえ多くの客が、すべての商品に、付着させたとしても、だ。この行為を指摘できる店員がいるだろうか。

「スプレーする」行為には、商品を損なう意図が見てとれる。だが、「店内を歩く」だけでは、指摘のしようがない。
商品パッケージに不必要な物質を付着させても、パッケージを貫通して商品に付着させても、器物損壊に問われたという話は耳にしたことがない。

さて、ここまで本ブログを読み進めた読者の皆さまは、「高残香・除菌・抗菌などの機能を追加した日用品」の中に含まれる物質が、商品に付着する可能性があることを知ったわけである。
もう「知らなかった」では済まされない。読んでしまったのだから。

食品に無関係な物質を付着させないよう、日用品の使い方を、再考する必要があるのではないだろうか。

※2:「猛毒物質イソシアネート(ウレタン樹脂やウレタン塗料の原料)汚染が広がっている」2019/08/20)(2019年6月23日、北里大学、日本臨床環境医学会、角田和彦 かくたこども&アレルギークリニック。
※3:食品に含まれているアクリルアミド」農林水産省。

商品移香は、リアル店舗からの客離れを促進する

多くのひとが集まる場所ほど、移香は重積する。

鋭敏な嗅覚センサーをもつひとびとにとって、買い物は、苦痛を伴う作業になってしまった。リアル店舗から足が遠のいていく。
そして、ネットショップへと流れていく。
製造者や卸業者からダイレクトに購入すれば、少なくとも客からの移香は避けられる。

SNS等で、商品への移香のないネットショップの情報が共有され始めている。
それらの情報が一定数を超えて流通し始めたときから、消費者の購買行動は変わるだろう。
無臭のショップが売上を伸ばすようになる。
そしてそのうち、ロボット梱包で自動配送の、におうひとが介在しないショップへと流れるようになるのかもしれない。

海外では、香害に悩むひとの割合は、3人に1人という記事がある。
「香害先進国」米国の悲惨な実態、成人3人に1人が被害者(「香害ウォッチ」岡田幹治、2018.8.29 5:12、DIAMOND online)」

リアル店舗の運営会社が、近年の日用品に含まれる合成化学物質の問題を注視せず、リスク対策や社員教育を行わず、商品の香りを損なう恐れのある客の入店を制御できないなら、今後、3割程度の客離れは避けられなくなるかもしれない。

ネットショップに光明も、無臭はごく一部

伝票のにおいが語る、ショップ担当者の意識

もっとも、リアル店舗での購入を諦めて、ネットショップで購入すれば安心かといえば、必ずしもそうではない。

この半年、さまざまなネットショップを試してみた。移香の確率は日を追うごとに高まっている。

リアル店舗と異なり、客からの商品への移香は避けられる。だが、商品が手元に届くまでに、移香する可能性がある。その強さは、届いてみるまで分からない。

移香がもっとも付着しやすいのは、紙類である。そのため、同梱の伝票のにおいから、販売者側の香害への意識が見てとれる。

筆者が試した狭い範囲では、伝票が「常に完全無臭」だったのは、愛媛県鬼北町の道の駅「森の三角ぼうし」ウェブショップだ。ただし、同店は、システムメンテナンスのために休止中である。消費増税のおもわぬ余波といったところか。

ほかに、ダンボールの外からの移香を差し引いて、筆者が購入した時点で、無臭と判断した店に、後述の「ワインと地酒の店 かたやま(愛媛)」「宇和海の幸問屋(愛媛)」と「ならの木薬局(京都)」が、また、ほぼ無臭と判断した店に「高知のうまいもんしょっぷ きいや(高知)」がある。

1点2点の購入では、筆者に届いたものが偶然移香している可能性を否定できない。そのため、まとまった注文をしている。
だからなのか、いくつかのショップから、次々とカタログが送られてくる。
商品自体は良質のものばかりである。だが、開梱作業により、服や髪や手に2次移香すること、その後の衣類の洗濯の手間を考えると、躊躇している。

それぞれのショップへは、移香の事実を伝えていない。
なぜなら、計測したデータなどの事実を示す手段を持たないからである。仮に計測できたとしても、その写真や映像を示すことができるとしても、カメラに映らない場所に発生源がないことを証明できない。

客観的なデータを提示できないこと、その原因となる日用品を(見当はついているが)特定できないこと、そして何より、どの段階で移香したのかを確認できないことから、このブログには、においを感知したショップの名前を記載していない。また、筆者は、それらの店名を、口頭でも、文面でも、評価でも、一切公表していない。
逆に、前述のとおり、無臭の店名を記載した。

もし、ショップのスタッフがこのブログを目にすることがあったなら、移香問題への対策を考えてみてほしい。
移香しない状態で届くのであれば、おすすめできる美味が多かったのである。

四国の山間部は、まだ無臭

前述の、完全無臭の「森の三角ぼうし」では、野菜、米、味噌、たまごなどを買っていた。
プラスティックフィルムで包まれた野菜を、さらに紙できっちり包んである。配送中に移香しても紙が受け止める。そのため、商品自体への移香はなかった。

たまごをネットで購入するのかとおもう読者もいるかもしれない。
リアル店舗で購入すると、パッケージを貫通して、たまごの殻にまで、移香していたことが、何度かあった。かといって、購入時にパッケージを開けて確認することなどできない。
その点、「森の三角ぼうし」のたまごは、パッケージからして無臭なのである。

「森の三角ぼうし」の担当者に、香害問題についてメールで問い合わせたところ、鬼北町にはまだ香害の波は来ていないとのことだった。
本稿執筆時点では、四国の山間部は、まだ、大丈夫だ。

過日、相方が鬼北町で開かれた70人規模の会に参加した。
帰宅後の衣類に、移香は見られなかった。土産のみかんと菓子の包装も無臭だった。
つまり、鬼北町は、10月の時点では、無臭を保っていた。
土産の菓子「善助餅」の製造元は、愛媛県宇和島市津島町にある。また、中山町のはったい粉や三間町の米が無臭であることから、十中八九、津島町と中山町と三間町、その周辺の町には、まだ香害の波は来ていない。

輸送距離の短い四国内のショップは、微香以上、強臭未満

前述の鬼北町と、筆者のすまいとの距離は、高低差は大きくとも、直線なら約100kmだ。
輸送距離が短いほど、配送中の移香リスクも低いはず。
そこで、四国内のショップからのお取り寄せを試してみた。

まずは。愛媛県内の4店。

1店目。地元の食材を使った、防災用としてもってこいの商品を買った。
食品自体は大丈夫だったが、パッケージには、やや強い移香がみられた。非常時には食べるけれども、平時なら、やや気になるところである。

2店目。ペットボトルや瓶入りの商品を買った。移香は紙に定着しやすい。商品名のシールがもっともにおった。これを剥がして容器ごと水洗いしたら、気にならない程度には軽減できた。

3店目。「石鎚山麓 久万高原 清流米」と「POMつぶ」6本入1箱を買った。
米袋の表面は微香だった。配送中の外からの移香とおもわれる。米は、ふくよかな、美味しい炊きあがりとなった。
驚くべきことに、「POMつぶ」は箱からして無臭だった。当然、ペットボトルにも移香していなかった。確認のため、再度注文してみた。無臭だった。 つまり、製造元のえひめ飲料のスタッフは無臭で、このショップの倉庫管理者も出荷担当者も無臭だということだ。
こうした重い商品を多く扱う店では、スタッフは当然、夏場など汗をかくはず。にもかかわらず無臭とは、すばらしい店である。
ワインと地酒の店 かたやま」は、愛媛の地酒や、愛媛県産のかんきつ類のお酒トマトをまるごと使ったゼリーなど、愛媛の美味を多く取り扱っている。

4店目。「三間産 伊達米」を買ってみた。三間町は鬼北町の隣にある。鬼北町が大丈夫なら三間町も同様のはずである。三間町の米は実に美味である。「宇和海の幸問屋」は、減農薬米、無農薬米のほか、愛媛県産の商品を取り扱っている。

次に、隣の香川県から、日持ちのする商品。
2度目の利用である。前回注文時は、香害が地方に及ぶ前であったから、当然、すべて無臭だった。今回、商品自体は変わらず良いものだったが、パッケージには、水拭きをすれば除去できる程度の移香が見られた。

徳島県のショップでは、麺類を買った。
紙箱を貫通して個包装の袋に移香していた。残念なことに、移香は強く、袋を何度も拭いた。化学薬品臭は、樹脂の袋に移りやすく、定着しやすいのである。ただし、個包装の袋はしっかりした素材であり、中までは移香していなかった。商品自体は、再注文したい美味であった。

高知県のショップでは、調味料や菓子などを買った。パッケージや袋には移香していたが、軽く拭けば除去できる程度だった。
ありがたいのは、塩である。袋には弱い化学薬品臭が付いていたが、中身は無事だった。
後述するが、いまや、移香していない塩の入手には厳しいものがある。無臭の塩が入手できるのは幸運なことと言っていいだろう。「高知のうまいもんしょっぷ きいや」である。

以上のように、近場からのお取り寄せなら、配送中の移香を抑えることができ、影響は軽微で済む。
ただし、配送用段ボールには強く移香しているので、片付け時には、服や手に2次移香しないよう、悪戦苦闘することにはなる。

老舗でも、ハードルの高い、完全無臭

すこし範囲を拡げてみよう。関西地方の店からのお取り寄せだ。

まず、老舗のメーカーからの直販を試してみた。老舗の職人たるもの、香りや味にこだわりがあるはずだろうから。
以前より好んで購入していた茶菓子、リアル店舗で買うと種類が限られていることから、製造元からの少量多品種のお取り寄せを敢行した。

ところが、期待が大きかっただけに、残念な結果となった。
すべての袋、納品書や同梱の商品案内リーフレットにいたるまで。やや強く移香していたのである。
商品の袋は洗って拭いたものの、商品名を印刷したシールの移香は除去できず、剥がす必要があった。このシール除去作業には、泣かされる。爪の中に移香すると除去しにくいのだ。

菓子そのものには、何の問題もない。期待通りの美味である。工場内や製造担当者は無臭だと確信できる。
梱包から手に届くまでの間に、移香してしまったようだ。
職人が手間暇かけて作りあげた美味の価値が、要らぬにおいで棄損されてしまう。非常にもったいない話である。

一度移香を嗅いでしまうと、どんよりした気分に見舞われる。お茶の時間の楽しみが半減する。茶器を前に、気分は沈む。

香りのTPOを知るショップ、香りマナーに期待した結果

先に取り寄せた菓子を、家族で分けて食べきったところで、さらに範囲を拡げて、関東地方からのお取り寄せ。

商品への強い移香は、香りマナーをわきまえないことからも起こりうる。
それなら、香り付けの日用品を取り扱っておらず、香水を取り扱っているショップから、取り寄せてみてはどうだろう。従業員も顧客も香りのTPOをわきまえているはずだから、期待できそうだ。
少なくとも梱包段階での移香はないものとおもわれる。

そこで、価格帯が少し上のショップで、焼き菓子を4点購入してみた。缶入りなら日持ちするうえ、乾パンよりも高カロリーで美味でもあり、災害非常用に最適だ。もし、賞味期限までにないごとも起こらなければ、缶は、サプライ品の収納に利用できる。プラスティックケースよりは、エコであろう。

結果、3つの缶の蓋に、化学薬品集が付いてきた。湯で洗えば除去できそうな気はするが、手つかずだ。
長距離のため、配送中の移香かもしれない、それはいたしかたない。
ところが、鳩サブレ―」は、缶も中も無臭だったのである。
同じ段ボールで届いた中に、移香した品と、無臭の品。
どの段階で移香したのか、見当もつかない。

ちなみに、鳩サブレーは、ショートニング不使用である。
焼き菓子の好きなひとは取り寄せてみるといいだろう。

最後の砦、馴染みのオーガニック系のショップに注文

健康問題に高い意識をもつショップなら、もちろん移香などないに違いない。
(筆者の近所の店では入手できない)てんさい糖を買うため、以前からほぼ定期的に利用しているオーガニック系のショップに、いつも通りの注文をした。前回注文時までは、無臭だった。ここなら大丈夫だろう。

ところが、購入した食品のほぼすべてのパッケージが、移香していた。
中には強く移香しているものもあり、これが除去できない。
全商品を嗅いでみたが、どの段階で移香したのか、わからない。
エコ包装で、ダンボールは再利用品だ。強く移香していたダンボールを使ったために、全商品に2次移香した可能性も否定できない。

もっとも移香の大きいものは、「塩」だった。
袋を貫通して、塩にまで移香していた。
まさか塩までとはおもわず、容器に移してしまったからさあたいへん。気付いた時には、容器の中まで移香してしまい、洗浄に苦戦することとなった。

最後の砦だとおもっていたショップだけに、非常に困惑している。
これからどこで、てんさい糖を買えばいいのか。

再挑戦、別のオーガニック系のショップを試す

そこで、同じてんさい糖を取り扱っているショップを探した。
備考欄には、次のように書いた。

「これまで、長年、他のネットショップで購入していました。
が、今夏から、柔軟剤、柔軟剤入り洗剤、除菌抗菌剤入り洗剤、制汗スプレーなどの、健康リスクのある合成化学物質のにおいが、ダンボールだけでなく、商品にも移香してくるようになり、拭いても水洗いしても除去できません。
そこで、貴店を初利用してみます。
移香していなければ、今後も引き続き利用したいとおもいます。期待を込めて。」

てんさい糖の袋は微香だった。箱の底に詰められていたこともあり、ダンボールの外からの移香を避けられたようだ。商品自体への移香はなさそうである。
ところが同時に購入した塩は、袋に移香していた。塩自体は未確認だが、このにおいの強さでは、塩にも移香している可能性がある。
てんさい糖と塩は別のメーカーのものである。ショップへ納品された時点で移香していたと考えるのが妥当だろう。製造元からショップへの輸送中の移香かもしれない。

三度目の正直、薬局のオンラインショップに注文

オーガニック系のショップ2店を諦めて、同じてんさい糖を扱っている薬局に、複数の食品を注文してみた。
以前一度利用したことのあるショップである。

なんと、注文品の7割は、パッケージからして無臭であり、そのまま食品ストッカーや冷蔵庫へ入れることができた
ダンボールの外からの移香はあり、箱の触れる場所に詰められていた一部の商品パッケージには、わずかに化学薬品臭が付いていた。だが、水洗いして拭けば除去できる程度だった。

このすばらしいショップは、京都市の「ならの木薬局 大原野店である。
このショップ、シャボン玉せっけんの商品も、何点か取り扱っている。取扱いブランドを見る限り、合成洗剤は販売していないようだ。
取扱い商品からの移香はないものと見てよい。これからも利用したい。

贈答品にも、移香のリスク

注文の都度、移香していないだろうか、と不安になる。この不安は、自分が購入するものに限らない。贈答品にも及んでいる。

届いたお中元の中に、個包装にまで移香しているものがあった。こんなことは、今回が初めてだ。

驚くと同時に、筆者の贈った商品も、届くまでの間に移香するにちがいなく、先方に申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
地域の名産を見繕っている。商品の香りを楽しむ品を選ぶこともある。深い味わいの品が、薄っぺらい異臭をまとって届くなど、想像したくもない。

県産品の名誉を汚すにおいを付加する可能性のある日用品に困惑している。

生産者・販売者・消費者は、「n次移香」に歯止めを

生産地から食卓まで、不透明な移香の可能性

移香は、いつ生じるか、わからない。
食材の生産、段ボールや梱包材の製造、食品製造ラインの点検、食品加工、トラックの整備、倉庫への輸送、倉庫での管理、店舗への輸送、品出し、消費者宅への配送―――どの段階にも、可能性はある。
筆者の嗅覚で判断する限り、このうち最も可能性が高いのは、梱包時と配送時のようだ。原料も、食材も、加工されたのちの食品も、その可能性を避けられない。

移香の強さは、素材により異なる。
梱包用のダンボールは、間違いなく強烈ににおう。
移香する物質は、段ボールを容易に貫通する。緩衝材、包装の外側に移香する。

ただし、この移香は、販売者側が一手間かけることによって、低減することはできる。
たとえば、「森の三角ぼうし」の野菜セット。
前述のとおり、一手間かけて、袋の上から紙で包んである。そのため、移香が段ボールを貫通しても、紙が移香物質を吸着するので、商品自体は無事である。伝票は透明封筒に入れられており、伝票は無臭だ。

段ボールと紙を玄関で片付けてしまえば、屋内ににおいを持ち込まずに済む。

食材・食品を扱う事業者は、移香問題に警鐘を

生産、製造段階での移香については、事業者側で、ある程度は制御できるだろう。
経営者が、スタッフの使う日用品に対し、配慮をもとめ、なんなら社内規定を見直すという方法もある。

食材には食材の、食品には食品そのものの香りがあるのだから、余分な香りを付けないように配慮する―――食材や食品を扱う事業者、それを配送する事業者にとっては、常識のはずだ。いや、常識のはず「だった」。
常識を覆すほど、職業人の嗅覚センサーは鈍ってしまったのだろうか。

商品に不要な物質を付けて出荷することは、生産者や製造者の努力、自社の商品の価値、そして顧客の信頼を、損なうことにつながる
何割かの顧客はリピートを躊躇するようになる。
一度失われた信頼を取り戻すのは並大抵のことではない。
販売者側が移香問題に気付き、社員教育を徹底した後、一定期間利用のない顧客宛てに、無臭無香に配慮した旨をDMするしかないだろう。

対策が遅れるほど、移香する物質は蓄積し、広範囲に拡散していく。
従業員宅の室内や備品、洗濯槽内に残っている物質が、服に、持ち物に、車に、人体に、付きまとうようになる。
製造工場の設備にまで移香が進んでしまったら、除去できるだろうか。
天然の菌類に頼っている場合など、元通りにならないのではないか。それともこれは、杞憂か。要らぬ心配か。

食品を扱う事業者は、香害について情報収集し、正しく恐れたほうがよい。と、筆者は考える。
設備に移香が重積する前に。
移香商品を受け取り開封した客が、化学物質過敏症を発症する前に。

スタッフ全員が、現行の使用品を見直す。過去に使っていた無香の製品にさかのぼってみる。さらには、より環境にやさしい製品を試してみる。
通勤用の車や服やカバンや靴に移香していたら、すみやかに洗浄する。
そして、できるだけ、n次移香に巻き込まれないように注意する
商品の安全性を守るには、そうした地道な努力が必要だ。
食品を扱う事業所の経営者は、このことに気づいてほしい。

冷蔵庫と食品ストッカーのn次移香を防ぐ

冷蔵庫内に、付着した化学物質が絶賛蓄積中

リアル店舗でも、ネットショップでも、多かれ少なかれ、パッケージや袋には移香している。

その移香した商品を、そのまま冷蔵庫や食品ストッカーに入れるとどうなるか

想像してみてほしい。
パッケージや袋の表面に付着している物質が、庫内に飛散して定着する。
さらには、無臭の食品、保存容器に、移香する。包装のない食品、たとえば、たまごや果物には、直接移香する。
常温保存品や冷蔵品はまだいい。冷凍保存品となると、冷凍室内に物質が蓄積する。すべて食べきって一度空にしなければ、掃除できない。
レンジ加熱の食品パッケージに移香していれば、レンジ内に移香が蓄積していく。移香物質を、都度、温めることになりはしないか。
食の香りを損なう物質の蓄積を、笑って済ませることなどできようか。

そこで、どうするか、だ。
筆者は、パッケージや袋を水拭きまたは水洗いした後に開封し、新しいポリ袋に移し替えて、冷蔵庫やストッカーへ入れている。移香パッケージに入れたまま保存するよりは、マシであろう。

納豆のように、パッケージが容器を兼ねている商品は、洗うことができない。陶器やタッパーに移し替えて冷蔵、できるだけ早く食卓に出す。

それでも、初夏までは、まだ、移香の弱い商品もあった。商品を嗅いで選別し、移香の強いものだけを移し替えていた。
化学物質の吸引を避けるために商品のにおいを嗅ぐと、化学物質を吸い込んでしまう、という蟻地獄的再帰処理に陥っていた。
現在は、ほぼ全品が移香している状況だから、チェックすることなく、自動的に移し替えている。

買い物の都度、通販の荷物を受け取る都度、「移香除去、移し替え」という無駄な作業が生じている
積もればかなりの作業時間になる。仕事に使うはずだった時間を奪われている。

逃れようのない「n次移香」

困ったことに、移し替え作業自体にも、困難が生じている。
保存容器の移香問題である。

過去に購入して移香していないタッパーとフタツキ陶器とガラス瓶で、やりくりしているが、ゴーヤや長ナスなど、器に入りきらないものがある。
そこでスーパーで大きなタッパーを買って来た。ところが、フタが強い移香で廃棄せざるをえず、本体のみ使うことになった。これでは、フタ付き容器としての役割を果たさない。
タッパーをネット注文することも考えたが、移香して届く可能性を考えると、注文ボタンを押す気になれない。

ラップも、移香している。もはや移香していないラップは入手しにくい。
紙パッケージに移香しているどころか、ラップの中まで移香していたことがある。逆に、ラップから食品に移香することになるので、使えない。

そこで、ポリ袋を使っているというわけだ。
ポリ袋は、平積みされて売られている。いちばん上のものさえ避ければ、移香はしていない。今はまだ、スーパーで、無臭のポリ袋を購入できる。だが、そのうち、これも移香の憂き目にあうかもしれない。

手指にも移香、調理に支障

乾燥剤などが入った移し替えの難しい商品は、パッケージを水洗いして、拭き、乾かしている。
移香した商品パッケージを洗うと、スポンジたわしに2次移香する。そして、次に洗ったものに、3次移香する。そして、その次に洗ったものに4次移香......。商品の数だけ、n=n+1。n次移香していく。
洗い終わったスポンジで、うっかりシンクを磨こうものなら、シンクに移香する。ここでようやくループを抜ける。シンク掃除の手間が増える。

困ったことに、水洗いしたパッケージを拭いたふきんにも移香してしまう。次の商品をそのふきんで拭くことになり、これまたn次移香していく。
ティッシュやキッチンペーパーなどの紙類は、購入時から移香しているため、代替にはならない。

移し替え作業時の手指への移香も避けられない。
使い捨て手袋をすると、紙シールを剥がすことができない。
素手で作業すると、移香する。せっけんで何度洗っても、入浴しても、なかなか除去できない。
ターンオーバーを待つと、3週間ほどで、においもベタつきも薄れてくるが、その間、素手では、おむすびをつくれない。
おむすびだけではない、ゆでたほうれんそうを絞れない。素手で作業する必要のある料理に、困難をきたす。

twitterで知り合ったひとに、移香した手指の洗浄には「ぬか」がよいと教えてもらった。無臭のぬかを入手できたときには試してみたい。

おそるべし、「n次移香」

安全な食の維持に必要な、「におわない」家族の協力

家庭内の食を担う者がいくら気を付けていようと、家族も同じ意識を持っていなければ、庫内汚染を避けることはできない。

たとえば筆者の相方。毎日、ドラッグストアでノンアルコールビールやペットボトルのお茶を購入する。また、コンビニやスーパーで昼食や菓子を購入することもある。
帰宅すると、レジ袋をキッチンの適当な場所に放置する。繁盛している店の袋だ。多くの買い物客から移香している。
キッチンに洗剤臭とフローラル臭が充満するにいたり、配慮を求めた。今では、かなり改善している。

しかしながら、買ってきた商品は、そのまま冷蔵庫へ入れる。冷蔵庫を開けた途端、化学薬品臭の充満に気付く。
冷凍の嗜好品は、移香したパッケージのまま冷凍庫へ。ホームフリージングが眠っている。掃除できない。もはや打つ手なし。
ポリ袋への移し替えまでお願いするわけにもいかず、見つけ次第、そのままポリ袋に入れて戻すことにした。多少はマシだろう。

ひとつの移香商品を不用意に取り扱っただけで、庫内の移香は加速する。
定期的に、棚を外して洗い、庫内を拭いているが、要らぬ物質は蓄積する一方だ。
ポリ袋も保存容器も、庫内に半日入れるだけで、移香するようになってきた。ステンレスや陶器なら、煮沸洗浄すれば、かなり除去できるが、樹脂ではどうしようもない。

なぜ、相方は、移香商品をそのまま保存するのだろうか?
それは、におわないからである。においによって危険性を察知することができないからである。

ためしに、強烈な化学薬品臭の移香した商品のパッケージを渡して嗅いでもらった。
鼻を商品に引っ付けて何度嗅いでも、「わからない」と言う。相方は、嗅覚トラブルで耳鼻咽喉科通院中だが、洗剤や柔軟剤の香料なら「何かにおう」程度には回復してきている。
だが、化学薬品臭については、においを発していることさえ、分からないとのこと。

どうやら、香料以外の物質については、におうひとと、におわないひとが、顕著に分かれるようだ。
筆者宅だけではない。世帯内に、におうひとと、におわないひとがいるケースを、しばしば目にする。
このような嗅覚センサーの個体差が、移香の共通認識を妨げて、ディスコミュニケーションを生み出しているのではないだろうか。

筆者の住む地域では、2年前までは、移香など意識する必要などなかった。
それが今では、無臭の食品が店頭から消えそうないきおいだ。

これほどまでに移香が常態化すると、もはや一消費者の力では防ぐことなどできない。

販売者すら、軽減することはできても、完全に防ぐことはできない。

リアル店舗では、社員教育によって社員が移香製品を使わなくなったとしても、不特定多数の客の使う製品までは制限できないだろう。
強いにおいを振り撒く客に、自粛をお願いしたとしても、客は「この程度の香りで」と、訝るにちがいないのだ。自身のまとう香りには馴れが生じてしまうからである。
だからといって、店先にVOCセンサーを設置して、計測データを突きつけるなどの行為をしようものなら、関係を損ねるリスクがある。

ネットショップでは、同じトラックに積まれた他の荷物の送り主の使う日用品にまで、目配りすることなどできない

これでは、移香製品を使っていない消費者たちは、異臭をスルーするしかなくなってしまう。
機能する嗅覚センサーを持つひとびとは、センサーを鈍らせるスキルの獲得に励み、においのする食材に慣れるしかないのだろうか。
奇妙な社会になったものである。

プラスティック削減よりも、移香問題の解決が先

食品そのものへの移香を避けるには、できるだけ過剰包装のものを買うしかない。
そして、新しい袋や容器へ移し替えて、保存するしかない。

これまでは不要だったポリ袋やラップという、プラスティックゴミが増えてしまう。
環境保全に逆行する行為だが、背に腹は代えられない。

現状のまま、食品のパッケージや袋を、廃止または簡易化すると、どうなるか。
香り付け・抗菌・除菌・防臭機能をもつ日用品の物質が、食品に「直接」付着するようになる。
洗っても除去できない。消費者は、食べるしかない。

プラスティックの削減は必要だ。過剰包装は見直したほうがいい。
だが、その前に、移香問題が解決されなければならない。

過去の移香事例から見えてくること

実際にあった、食品移香の例

日用品から食品への移香などあるはずがない、気のせい、と考えるひともいるかもしれない。
そんなことはない。移香問題は、今に始まったことではないのである。

たとえば、インスタントラーメン。
一般社団法人 日本即席食品工業協会は、移り香注意マークを作成している(わかりやすい、安心の注意書き・マーク)。
この中に、「移り香注意マーク」がある。インスタントラーメンを、防虫剤・殺虫剤・洗剤・芳香剤・化粧品等、香りの強いもののそばに置くと移香する。その注意喚起のためのマークである。

実際、過去に、移香が問題になった例がある。
2008年のカップヌードルの移香騒動だ。消費者の保管ミスに、日清食品が巻き込まれた一件である。

日清食品は、発泡スチロールの環境ホルモンへの懸念から、カップヌードルの容器を、紙とポリエチレンのエコカップに変更した。
ところが、この努力が裏目に出た。購入者の自宅の箪笥から漏れ出た防虫剤のパラジクロロベンゼンが、近くに置いてあったカップヌードルのカップを貫通して、麺に移香してしまったのだ。
気の毒なことに、日清食品は、製造ラインの一時停止と自主回収を余儀なくされたという。

詳細については、「FOODCOM.NET」こちらの記事が詳しく、わかりやすい。
「斎藤くんの残留農薬分析|斎藤 勲 / 日清カップヌードルのパラジクロロベンゼン騒動(2008年11月6日)」

においを感知しなければ、危険性に気付かず

先の記事によれば、購入者は、カップヌードルを食べたところ、薬品臭がして、嘔吐・舌のしびれを感じ、保健所に問い合わせたという。
その順序のとおりであるなら、食べるまで移香に気付かなかった、あるいは、気付いたとしても箸を止めることのない程度にしか感じられなかった、食べたときの薬品臭が何のにおいかを特定できず、においが伝えるリスクを察知できなかった、という可能性がある。

パラジクロロベンゼンも、強く感知するひとと、あまり感知しないひとが、いるのかもしれない。
先に書いたが、近年の合成化学物質のにおいに対する嗅覚センサーの精度には、個体差があるようだ。

実際、筆者宅でも、個体差による事案が発生している。
ごく最近、筆者はスーパーで、数種類のカップめんを買った。案の定、フィルムに強く移香していたため、保管場所に困り、キッチンの隅に置いた。これを相方がすぐに見つけて食べてしまったのである。
ちなみに相方が食べたのは、「おだしがおいしいカップヌードル 肉だしうどん」である。
「こんなくさいカップを、素手で触ったのかよ!」とツッコむも、相方いわく「スキヤキ風で好みの味だ、非常にうまかった!」

食品移香に困惑するひとは、徐々に増えている。
全国各地で、嗅覚センサーの機能するひとたちが、この問題の重大性に気付き、声をあげ始めている。
販売店に電話などで伝えるひとたちもいる。
ところが、一消費者対、店舗。
お客さまがお困りなら...と、真摯に対応する店舗もある一方で、多数のお客様の意見のひとつとして処理されてしまうこともある模様だ。

意見を軽んじられる理由は、おそらく次の2つだろう。
ひとつは、担当者が、「におわない」個体であるために、異臭の事実と重大性を理解できないこと。
もうひとつは、移香を指摘する声が大きくなり、問題が顕在化した暁に、販売店側が支払う代償を予測できていないこと。

筆者がカップめんを買ったのは、近年の日用品による移香の事実を、食品メーカーがどのように捉えているのかを知るには、格好の食品だとおもったからである。
過去に移香問題を解決してきた即席めん業界ならなら、すくなくとも、「移香」という言葉は通じるはずだと考えたのだ。「移香って何?日用品のにおいが傍にある食品に移るなんてあるわけがない」などと門前払いされることはないだろうからである。
また、たった1個の商品への移香であっても、問題が顕在化したときに支払う代償が、どれほど大きなものになるかも知っているはずだ。パラジクロロベンゼン騒動に関わっていない社員であっても、情報共有はできているはずだろうから。

そこで、もし、中まで食用に適さないほど強く移香していた場合は、ウェブサイトから問い合わせるつもりで、強臭のスーパーへと出向き、アニバーサリーカップと肉だしうどんとどん兵衛を買ってきたのである。
が、しかし、フィルムには移香していたものの、その強さであれば中までは......というと微妙なところ。したがって、問い合わせてはいない。そして、放置する間に、家族が完食してしまった。
移香といってもその程度、中身は大丈夫で、食べても問題がなかったのならいいではないか、とおもう向きもあるだろう。いや、さらに猛臭の店へ行けば、中まで移香している商品はあるにちがいない。筆者に、そういった店へ行く勇気がないだけなのだ。

食品メーカーは、移香の事実を、真摯に受け止め、調査し、善後策を考えたほうがよいのではないだろうか。
苦心して生み出した商品の香りが、何割かの客の使う日用品のために台なしにされている可能性があるのだ。移香を嫌う消費者は購買を控えるようになる。消費はゆるやかに冷え込んでいくのではないか。
そして、なにより、消費者の嗅覚が衰えてしまうと、商品開発において、香りによる差別化は不可能になるのだから。

明日の食卓から、嗅覚センサーの価値を見直そう

食卓が、きしみ始めている。

食品本来の香りのみする安全な商品を、正当な価格で購入する―――こんな、ごくあたりまえのことが、できない世の中になってしまった。
今はまだ、包装を貫通して食品にまで移香しているケースは、ごく一部である。が、これも時間の問題だろう。
食卓には、合成化学物質の付着した食品が並び始める。それは、学校や病院の給食にも及ぶ。

化学物質のにおいの漂う社会は、食のゆたかな香りを覆い隠す。
規定量を守らず、さらには柔軟剤スプレーといった、(メーカーの開発者たちも、おそらくは)想定外の使い方をするユーザーの服のにおいは、カレーの香りさえ容易に打ち消すほど強い。
繊細な椀物や和え物の香りなど、木っ端みじんである。

桜の花の香りに親しみ、風の香りに四季のうつろいをとらえる、日本の繊細な感性は、もはや風前の灯。
このままでは、世界に誇る「和食」のこころは、遠くない将来、この国から、消えてしまうにちがいない。

嗅覚センサーの価値を見直してみませんか。
日常の食卓の風景、和の食の香りから。

※本稿で取り寄せを試した食品への移香の感じかたについては、個体差がある。また、筆者が取り寄せた時点での、取り寄せた品物に限定した情報でしかない。読者が試した場合、結果は異なる可能性があり、それに対して筆者は何ら責任を負うものではない。

※この「嗅覚センサーを見直そう」第14回から今回まで間の空いた理由が、ふたつある。 ひとつは、本稿を書くために、お取り寄せを試していたからである。届くたびに移香の状況がめまぐるしく変わり、修正が生じて、公開のタイミングを見はからうことができずにいた。
もうひとつは、移香した衣類の洗濯に膨大な時間を奪われているからである。洗濯機が別フロアにあるため、席が温まらず、まとまった文章を書くどころではない状況なのだ。この衣類への移香問題については次回取り上げる。

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