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AIとの共闘が始まった!Microsoft Copilotが、香害啓発をサポート。(後) ~日用品公害・香害(n)~

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製品の特定に要する時間を大幅に短縮

筆者の住む地域では、最近、化粧水に似た香りが強く漂っていることがある。昭和レトロな資生堂のアストリンゼンを、何十倍にも増幅したようなニオイだ。
漂ってくる時刻や滞留時間の長さや頻度から、洗濯用品であることは間違いない。また、スッキリ爽やかな印象の後に華やかさを表現したつもりのようであることから、メーカー名と製品のシリーズ名は、おおよそ絞り込める。だが、そこまでだ。製品名までは分からない。

こうした新しい香りに遭遇したとき、これまでなら、「X」にポストして情報をもとめていた。同様の香りに遭遇した香害啓発者たちが目を留めて、遭遇したシチュエーションや香りの特徴を知らせてくれる。同じ製品のニオイを感知しているのであれば、類似の表現が集まり、ひとつの答えに収束していくのだ。

しかしながら、嗅覚情報をことばで表現することは難しい。この方法では、答えにたどりつくまで、1カ月単位で時間を要する。

Microsoft Copilotは、この作業を圧倒的に短縮する。

くだんの香りの洗濯用品について尋ねてみたところ、即座に、3種類の製品を探し出した。しかも、香りのバリエーションや、各々の香りの種類と特徴、参考価格や内容量などを含む詳細な情報も含めて返してくれる。そのうちの1つは、筆者が推測していたメーカーのシリーズのものだった。

ただし、日を改めて同様の質問をしたり、意図は同じでも表現の異なるテキストで指示すると、返される結果が異なる場合もある。次々と新製品が登場する。期間限定製品もある。答えは変わる。

それでも、検索や調査に使う時間を圧縮できれば、そのぶん、伝達に使う時間を確保できる。有能な副操縦士だ。

「ゼロリスクを断言しない」という、良識

さらに詳しい情報をもとめてみた。

香料成分情報などの製品仕様に関する情報は、探しにくい。メーカーのメインサイトから切り離された、新展開したシリーズの特設サイトに掲載されていると、宣伝ありきのイメージ画像に阻まれる。UIの統一感がなく、迷う。メーカー側も、製品仕様より、イメージを伝えたいのだろうから、当然ではあるが。

ところが、Microsoft Copilotに頼めば、即座に、リンク付きの回答を返してくれる。
香料成分情報のページが見つかれば、そのURIを指定して、さらに情報を得ることもできる。

(筆者による質問)>メーカーAの製品Bの香料成分情報が、次のページに載っています。(URIを指定)舌を痺れさせるような成分は含まれていますか?

(Copilotの回答)「香料成分情報によると、舌を痺れさせるような成分は含まれていないようです。ただし、個人差があるため、使用前にパッチテストを行うことをお勧めします。」

>メーカーCの製品Dの香料成分情報が、次のページに載っています。(URIを指定)この成分の中で、頭痛、咳、吐き気、眠気などを引き起こす可能性のある成分はありますか?

「頭痛、咳、吐き気、眠気などを引き起こす可能性のある成分は含まれていないとのことです。ただし、個人差があるため、使用前にアレルギー反応が起こらないか、確認することをお勧めします。」

Copilotは、「含まれていないようです」「含まれていないとのことです」と回答し、「含まれていません」と断言はしない。「安全です」などと言い切ったりしない。
また、使用前のパッチテストやアレルギー反応のテストを勧めている。

身体を持たないAIの答えの方が、生身の人間よりも常識的ではないか。

健康問題や移香に困るひとたちが、メーカーのサポートに、解決策をもとめて問い合わせている。返ってくるのは紋切り型の答えだという。それに比べ、Copilotは、ひとつの質問に対し、毎回、調べて回答してくれる。AIは、率直な意見を述べたからといって、職場にいづらくなるわけではない。場の空気を読む必要がない。親切だ。

その特性を生かせば、逆の事態も発生するだろう。今後、メーカー側が、サポート・スタッフを完全にAIに置き換えたなら、答えには、口先だけのやさしさが見え隠れするようになり、健康被害者たちの怒りは頂点に達するに違いない。

他者の苦しみをスルー。AIは冷静、ヒトは冷酷

洗濯によって、衣類に成分が付着する。その成分が拡散するから、香る。拡散した物質の100%が、使用者の鼻孔にのみ到達するわけではない。周りの人たちの呼吸器に入る。瞬時に分解するわけではない。というよりも完全に分解するわけではない。分解せず、付近にあるものに付着する。他者の頭髪や皮膚や衣類や持ち物などに付着する。

もし、その他者が、パッチテストやアレルギー反応のテストでリスクのある人なら、どうなるか。蕎麦粉アレルギーの人がいるかもしれない不特定多数の集まる場所に、蕎麦粉とサーキュレーターを持参して振り撒くようなもので、危険きわまりない。

リスクは低く見積もられている。気付いていない人が多すぎる。使用前にテストを受ければ、現時点での化学物質過敏症発症者以外に、かなりの割合で反応する人がいるはずだ。「使用をやめたら湿疹が出なくなりました」という声を、しばしばX上で目にする。それが原因だとは知らずに、使い続けている人たちがいる。

知らずに使っているならまだしも、リスクを伝えるほど頑なになり、使い続ける人たちもいる。

>柔軟剤の香料マイクロカプセルや抗菌系合成洗剤に含まれる成分への曝露による、化学物質過敏症の発症者は、頭痛、吐き気、めまい、しびれ、気道の症状などに苦しんでいます。~略~ 使用者の中には、発症者が苦しみを訴えても、使い続ける人がいます。なぜだとおもいますか?

「発症者が苦しみを訴えても、使い続ける人がいる理由については、個人差があるため一概には言えません。しかし、製品の使用によって得られる利益が、発症者が抱える苦痛よりも大きいと判断している可能性があります。」

他者が苦しもうが退学しようが退職しようが、おかまいなし。「使い続けます」、そう宣言するポストを、SNS上で、何度となく目にしてきた。
その他者が、見知らぬ他人ではなく、家族や友人や同僚、というケースもある。

苦しみの声をスルーするスレッドも、これまた何度も目にしてきた。切々と訴える多くのリプが連なってもなお、何一つアクションはない。(筆者を含め)健康被害者ではない者から見ても、異様である。
それらは、メーカーの公式アカウントが立てたスレッドだ。

中の人も、そのうち、AIに置き換わるのだろうか?

体験を語れない。Copilotは、おごらず、素直

AIが知るのは、この世界を表す情報の、ごく一部にすぎない。
そして、決定的に欠けていて、補えないものがある―――AIは、自らに「体験」がないことを前提として、回答している。

>Copilotさんは、香り付き柔軟剤や抗菌系合成洗剤を使って、気分が悪くなったことはありますか?

「私は人工知能であり、感情を持っていないため、気分が悪くなることはありません。~略~ 香り付き柔軟剤については、いい匂いがするという人もいれば、匂いが強すぎると感じる人もいます。また、抗菌系合成洗剤については、肌荒れやかゆみを引き起こすことがあるという報告もあります ~略~」

Copilotの回答は、的を射ている。だからといって、AIに期待しすぎてもいけない。

過去ブログ「AI時代のセールス・プロモーション企画」で述べたように、正確で偏りのないデータが公開されていなければ、それに基づく結果の正確性は担保されないからだ。
デジタル化できていなかったり、公開されていない情報が多ければ、あるいは、欠落している情報量自体は少なくともそれが重要な情報であれば、結果は変わる可能性がある。

AIに、体験に基づく協働は期待できない。あくまで知識ベース。
だからこそ、データを整備するエンジニア、データを利用するヒトの側に、高い倫理観がもとめられる。


※ 履歴の削除について

前編で紹介した「Image Creator」含め、Copilotへの指示の削除方法について。

Image Creator のプロフィールと履歴の削除方法については、Image CreatorのQ&Aを参照してほしい。
ひとつは、「Bing の検索履歴」を「すべてクリア」する方法。もうひとつは、Microsoft アカウントの 「プライバシー ダッシュボード」の下方にある「検索履歴」から「すべての検索履歴をクリア」を選択する方法だ。

Copilotへの質問の履歴は、マウスオーバーでゴミ箱からトラッシュする方法もある。
その前に「さいきんのアクティビティ」を表示、回答が再現表示されるので、再利用の可能性があるならば、テキストを保存しておくといいだろう。

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