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3連続ライブを走破せよ。 ~6弦のカナリア(10)【 2 】~『Nutty's Muraki pre Black Spinel Vol.3』

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『Nutty's Muraki pre Black Spinel Vol.3』2023年10月1日(日)町田市 Live & BAR Nutty's

蓄積したダメージを振り切れ。湧き上がる、アンコール!!

そして翌日、10月1日(日)。

昨晩の曝露による頭痛は、長引いた。12時間以上経過したにもかかわらず、半減がいいところ。
吸入した化学物質を、入浴や鼻うがいだけで除去することは不可能だ。まだ残っているそれは、身体の中から大関を苦しめる。

そのうえ、防毒マスク装着での演奏という初めての事態に、心も、ざわついていた。
早朝、鎮まらないおもいを、「X」に吐露した。ポストは、精彩を欠いていた。そのテキストに、いつものポジティブな大関は見当たらなかった。

だが、時間が、大関に味方した。
ライブは夜だ。17時半開場、18時開演。出発まで、時間がある。 耐えて踏ん張り、立ち上がって前を見る。抗い続けるその意志に、身体が応えた。午後になり、頭痛は弱まってきた。
17時半に自宅を出発すべく、1時間前から準備を始めた。「トリなので、曝露は最小限に抑えて帰る」予定だ。

今日のイベントは、『Nutty's Muraki pre Black Spinel Vol.3』。
東京都町田市にあるライブハウス、『ライブハウス ナッティーズ』へ、機材車を走らせた。
出演するのは、『IN FOR THE KILL』、『泥虎』、『Machete Tactics』、『Brutal Decay』、そして『TERROR SQUAD』だ。

ライブハウス側は、香害について、注意喚起を怠らない。イベント案内ページに、来場者に呼びかける案内文を掲載。「当日は洗濯洗剤/柔軟剤/香水等、強い香料を含まれる物の使用はお控え下さい。ご協力お願いいたします。」さらに、シャボン玉石けんの香害についての説明ページにもリンクを張るという、念の入れようだ。
このような呼びかけは、2回目だ。6月14日にも同様のお願いを、twitter公式に投稿している。

現地に到着した大関は、息を凝らして、ハコへ足を踏み入れた。空気事情は、昨日よりは良好だった。共演者たちも、無香料だ。
大丈夫。この空気なら、弾ける!

サウンドチェックは、つつがなく終了した。前川が用意したセットリストは、今回もユニークだ。

『Straight to Hell』で幕を開けるのは、いつも通り。
2曲目は、テクニカルで渋い『Born Defector』。3曲目は『Survival for Conflict』、ここで、満を持しての、新曲『No Wrong Way』。
ライブでの披露は、もう15回目、いや、まだ15回目だ。初めて聴く客もいる。何度聴いても、問答無用で「かっこいい!」とおもえる曲を。それは、『TERROR SQUAD』の真髄であり、目標でもある。メンバー全員で時間をかけて練り上げた、自信作。
その後は、おなじみ『Bastards』から、人気曲『闇より深く...』。

そして、ラストは、もちろんこの曲、『Chaosdragon Rising』
大関が最後の一音を振り抜くや、間髪入れず、アンコールの大歓声が沸き起こった。

久々のトリ。大関は、アンコールの可能性をすっかり失念していた。
メンバーたちから、声があがる。「『Motorhead』どうかな?」「いいね、やろう!」
『Ace of Spades』。前日、『BAREBONES ft. 宇田川』で、演奏した曲だ。
海外ツアーでもアンコールがあると、この曲をしばしば演奏する。万国共通で盛り上がること間違いなし―――のはずだが、そこは客層による。前日は、出演者の中で、『TERROR SQUAD』は最年少、ロック色が強めのライブだった。それとは違い、今日は最年長で、メタル色が強め、若い客たちが多そうだ。喜んでもらえるだろうか。
とにかく、やってみよう!
全力で、演奏した。
大いに盛り上がった。会場は喜びに満たされた。

弾ける!と判断した空気事情だったが、それでも「香料とは違う謎のニオイ」は漂っており、それを大関は鋭敏に感じ取っていた。
「換気や長年の蓄積かもしれないが、会場臭のようなものだ。どこのライブハウスにもあるものだから。前日のダメージが尾を引いていたのが大きかった。」
途中から、頭痛と吐き気が襲い始めたが、力を振り絞って、弾き終えた。

この熱演は、客たちに、ダイレクトに伝わっていた。「X」には、感激のポストが。

「トリのTerror Squadは待ってましたと言わんばかりの盛り上がりっぷり。昨日のBarebonesに触発されてアンコールにAce of Spadesを披露し大盛況に締めました」

『Nutty's Muraki pre Black Spinel Vol.3』で演奏を終えた『TERROR SQUAD』(撮影:キャッツ氏)

「香害」健康被害者が応援に!仲間のおもいを力に変えて。

今回も、支援者が現れた。香害健康被害者の橋本美千夫氏だ。
夕方家を出て、ドラマーのジョーカーと合流した大関に、DMが。「今ナッティーズにいます。」

橋本氏は、大関が知る数少ない男性健康被害者のひとり。
健康被害者は急増中だが、まだ3割には達していない。その中で、男性はわずかだ。女性の方が、台所用品や清掃用品や理美容品などによる曝露量が多いからかもしれない。驚いた!まさかライブに来てくれるとは!

その橋本氏が、会場で『TERROR SQUAD』の到着を待ち受けていた!!現実とはおもえないできごとだった。
大関は大きな力を得た。「なんか今日頑張れそうな気がしてきた。」

それもそのはず、健康被害者が会場へ駆けつけること自体、至難の業なのだ。交通機関の香害はもちろんのこと、会場の空気事情を予測できないという問題がある。
橋本氏は、最寄り駅までの電車内では、吐き気を防ぐために防毒マスクを装着。会場到着後は、活性炭マスクに切り替えて、ライブに臨んだのだった。

同じ困難を抱える者同士、ライブ会場で応援できればーーーかねてより、橋本氏はそう考えていた。そこへ、大関の早朝のポストが流れてきた。苦悩を敏感に察知した。すこしでも励みになれば。ハコの場所を調べた。現在地からの距離を測る。防毒マスクは携行している。行こう。決断した。

橋本氏がデザインして、データを公開している、「香害」啓発用のシールを、大関は活用している。
ふたりは、すこし言葉を交わした。

帰宅後、大関は、橋本氏へのメッセージをポストした。
「会えて嬉しかった。気合い入りました」そして、思いやった。「会場臭、まあまああったので、キツかったかも。」

この空気事情には、大関自身も苦しんでいた。夜半を過ぎても、吐き気は続いた。
心も重かった。土曜日の、初めての防毒マスク装着の無念が、尾を引いていた。
ステージは、ラストに近づくほど、盛り上がりを見せる。にもかかわらず、ラスト3曲のパフォーマンスを完全に封じたことに、心が潰えたのだ。ショックが癒えるには、時間が必要だった。

「やはり相当凹んでたようで色々考えてしまう。ポジティブチューニングの達人だったこのオレでさえ凹むのが香害という公害。なかなか浮上しない...」

食事ができるようになったのは、三日後だった。『KAPPUNK 2023』が、数日後に迫っていた。

香害健康被害者、橋本氏による、啓発シール(撮影:大関慶治)


記事中写真

(上)『Nutty's Muraki pre Black Spinel Vol.3』で演奏する、『TRRROR SQUAD]の4人(撮影:キャッツ氏)
(下)ライブに駆けつけた橋本三千夫氏デザイン、香害啓発用シール(撮影:大関慶治)


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※本稿は、関係者の公開ツイートや投稿をもとに、情報を再構成したものです。

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