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ヴィジュアル、サウンド、テキスト、コードの間を彷徨いながら、感じたこと考えたことを綴ります。

ギタリストが、ベストパフォーマンスを発揮するには? ~6弦のカナリア(1)~

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ギタリストがアンプの後ろで演奏した、という話を聞いた。
ライブ中に演奏困難な状況に陥ったというのだ。
何が、あったのか?

大関慶治、というギタリストがいる。
結成30年、「Terror Squad」というバンドのメンバーだ。海外ツアー「GERMAN PATROL 2001」も成功させている。
スラッシュメタルに分類されるが、近年ではジャンルを超えた活動も展開しているという(※1、※2)。

メタルである。パワフルなプレイ。ファイターだ。テラーだ。怖れ知らず。
ただし、ひとつだけ、弱点がある。ドラッグストアに並ぶ、日用品だ。

ライブ当日、ファンたちは、柔軟剤や合成洗剤の使用を控えたらしい。ところが、危険な日用品は、それだけではなかった。消臭スプレーのリスクが、周知されていなかったのだ。
拡散する化学物質が、ステージに到達。これを演奏中に浴びることになった。
昏倒することなく、演奏は終えた。だが、体調の悪化を最小限に抑えるには、アンプの後ろまで下がるしかなかった。
ベストパフォーマンスを発揮できるはずもない。いちばん心を痛めているのは、ギタリスト自身だろう。

消臭スプレーなんて、どこの家庭でも使われているじゃないか、テレビではゴールデンタイムに宣伝しているじゃないか、とおもうかもしれない。
だが、販売数は万人への安全を保証せず、CMのクオリティが機能に比例するとは限らない。

仕様こそが、製品をもっともよく表している。
メーカーのウェブサイトで、身の回りにある日用品の仕様を確認してみればよい。
どのような化学物質が使われているだろうか。知らない物質名があるなら、厚生労働省「職場のあんぜんサイト」で確認できる。製法や用途を知りたいなら、特許情報を検索すればよい。当該技術が必ずしも使われているとは限らないが、開発思想を知る手がかりにはなる。

そうはいっても、日用品に含まれる物質だ。子どものおつかいでも買うことができる商品だ。聴衆のひとりやふたり、いや数名が使おうと、大した量ではないだろうに、と訝るかもしれない。
否、大きな勘違いだ。ワンプッシュでも危険なのだ。

それはたとえば、蕎麦アレルギーのひとに向けて、ひとつまみの蕎麦粉を吹きかけるような行為である。少量なら大丈夫、というわけではない。状況によっては、救急搬送レベルになる。

もっとも、蕎麦粉なら、袋や容器の外に漏れ出ることはない。故意に持ち出すのでない限り、製造ラインや店舗の外に拡散することもない。離れた場所にいるヒトの衣類に付着することもない。
一方、日用品に含まれる化学物質は、使用場所に留めることができない。使用者の衣類や身体に付着して、行く先々で放たれ、舞い上がり、大気中に拡散する。

大気には、境界がない。避けようがない。しかも、漂っているのは、リスク評価対象の物質だ。有害物質に、いつ、どこで、どれだけ、曝露するか、わからない。今われわれは、そのような環境の中で生きている。

生体リスク・環境リスクを、まだ知らぬひとは多い。
身のまわりにある化学物質のリスクを、いかに周知すればいいというのか。

ギタリストは、SNSで、叫ぶ。
「演奏する自由を奪うな。」

IT業界には、ギターファンが多い。筆者もそのひとりだ。
ギターファンなら、わかるはずだ。プロが、マーシャルの後ろで演奏することの異様さを。その苦渋の決断を。

プロがプロの仕事をまっとうする環境を、打ち壊す。これは、日用品公害という名の、業務妨害ではないのか。
そして、プロ・アマ問わず、演奏するひとならわかるはずだ。愛用のギターが香害に晒され、香料マイクロカプセルや抗菌成分に塗れる悲しみを。

ギターファンなら、考えてみよう。日用品について、調べ、選び、そして広めよう。
ギタリストが、ベストパフォーマンスを発揮できる環境を、作りませんか。

※1:「Chaosdragon Rising」「the wild stream of eternal sin」Terror Squad
※2:「NIGIMITAMA」 by HESOMOGE with TERROR SQUAD

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