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マーケティングコンサルティング会社「サイコス」CEOの大航海ブログ

たった28ドルのFacebook広告を使って、ウォルマート500店に商品を置いてもらったソーシャルメディアマーケティング成功事例

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今回はマーケティングには必須となったソーシャルメディアを使用して、米国ウォルマート3,500店に商品を置いてもらうことに成功したブランドを紹介したい。

  その名は「オーラブラシ」、2009年に設立された企業だ。オーラは英語で「口の」を意味する「オーラル」からきており、つまり口のブラシ。といっても口の内側を磨くわけではなく、舌を磨く用のブラシだ。何でも口臭の9割はきたない舌が原因だそうで、舌を磨くことで口臭を防ぐことができるということだ。

  オーラブラシのマーケティングは従来のものとは全く異なっている。従来のマーケティングでは、商品のパッケージ等、全てを完成させてからキャンペーンを行い、ブランド化に努める。しかし、同社は直ちにブランド化を始め、それを行う中で、ロゴを変えたり、キャンペーンメッセージを変更してきた。また、大手広告代理店を使用することもなく、ウォルマートに直接出向いて商品の売り込みをすることもなく、ウォルマート全米店への流通に成功したのだ。そしてその直接の引き金となったのは、たった28ドルのFacebook上でのキャンペーンだったというから驚いてしまう。

  同社はまず、認知度向上を図り、ユーモラスなビデオを制作し、YouTubeにアップした。これが話題を呼び約3,900万人の人が閲覧し、メディアにも取り上げられた。


口臭恐怖症の男性が、スプーンを使って舌をきれいにしようとしてみたり、舌はスポンジと同じで細菌を吸収すると言って、汚いスポンジを見せたりした後、最後にオーラブラシを使い、これはいける!と勧めるビデオ。朝出かける前やデートに使ったり、舌が真っ白になっているおじさんにクリスマスプレゼントしよう!と締めくくっている。


舌がどれだけ汚れているかをビジュアルでわからせるビデオ。

このビデオは話題にはなったのだが、実際のセールスは思うようにはいかなかった。地元ユタ州のウォルマートに商品を置いてもらうことには成功したものの、そこからがどうにもいかない。2万ドル出した広告の結果は、他の広告会社からの勧誘がくるだけだった。そこで、同社CMO(Chief Marketing Officer)のジェフリー・ハーモン氏がしたことは、28ドルを払いFacebook上の広告を買うということだった。この広告とは―日本では考えられないことだが―アーカンソー州ウォルマートの従業員をターゲットに「ウォルマートの従業員は息が臭い。ウォルマートは『オーラブラシ』を仕入れなければ!あなたの店で一番売れること間違いなし!」というメッセージを送るというものだった(アーカンソー州は、ウォルマート生誕の地である)。

  そしてそれから2日後、ハーモン氏はウォルマートのバイヤーからEメールを受信することになる。VP(Vice President)もそのメッセージを見ており、実際にはアーカンソー州の従業員にだけにしか送られていなかったのだが、全米のウォルマート従業員に向けられたと思った彼がオーラブラシに興味を持ったのだ。そしてオーラブラシのセールスキットやDVDをチェックした後、73万5,000個を注文したという。

オーラブラシの成功は単に28ドルのFacebook上の広告だけの成功ではなく、YouTubeを上手に使って認知度を高めていたことにも起因する。インターネット上の動画がマーケティングにとっていかに有効なツールかを実感させられると共に、小売大手へ仕入れてもらうためのマーケティングも大きく変わりつつあることを痛感する例だ。日本の小売業の「棚」確保もGRPからネットの影響力へ大きく変わっていくだろう。

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