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「脳内ビジネス」の話はまたにします!

システムの営業マン

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父親の形見の猟銃を手に野山を駆け回り、雉やキツネ、時にはタヌキやウサギなどを撃ち、ようやっと生計を立てるに十分な収入を得るようになった。

いよいよだ。

いよいよ、自分の夢を叶えたい。

コツコツと少しずつ蓄えたお金がある。このお金で猟犬を買いたいのだ。

雉を撃ち、弾は当たったにも関わらず手負いのまま飛んでいってしまい、遂に見失ったことがある。

ひとたびキツネが茂みに逃げ込めば、中に入って追い立ててもらわない限り、半日待っても出てきやしない。

きっと、猟犬がいれば、今の3割、いや5割、上手くすれば倍の収入を得られるだろう。

なにより、夕暮れの雨の中、あるいは吹きすさぶ寒風の中、相棒がいるというのはどれだけ心強いか。焚き火を囲み、喜びを分かち合い食事ができたら、猟はどれだけ楽しいものになるか。


猟犬の相場は調べてある。よく躾けられたビーグルで20万円というところだ。カツカツの生活のなか、決して安くはないが、しかし無駄遣いでも贅沢でもないだろう。これは意義のある投資だ。


さっそく、街に今日の獲物を売りにいった帰りに、猟に関するものであればなんでも揃うという店を訪ねた。

「いらっしゃいませ」

「ああ、どうも。ここは、猟犬を扱っているか?」

「もちろんです、お客様。お客様のご希望にあうあらゆる犬種を用意してございますよ。」

「そうか。それはよかった。」

「どのような犬種をお探しで?」

「犬種は、まあよく分からないのだが、ビーグルなんかがいいかと思っている。」

「ビーグルですか。取り扱ってございますよ。とても扱いやすい犬種です。従順で躾けさえしっかりすれば無駄吠えもほとんどありません。」

「そうか。それは希望通りだ。」

「ちなみに普段どのような猟をされているのですか?」

「いや、大した猟ではない。雉やキツネなどを撃っているだけだ。ただ猟犬がついてきてくれれば、鹿やイノシシも狙えるかもしれないね。」

「おお、おっしゃるとおりです。大型の獲物を狙うのであれば犬の協力が欠かせません。先日同じようなことをおっしゃって、犬をご購入になったお客様はその後収入が3倍になったと聞いていますよ。」

「本当か?それは素晴らしいな。ではビーグルを見せてくれ。」

「・・・・・・お客様、鹿やイノシシを狙うのであればビーグルはちょっと小さいかと。」

「ほう。確かにそうかも知れないな。それではどんな犬がいいのだろうか?」

「そうですねぇ。イングリッシュポインターなどはいかがでしょう?ちょっと大きめの犬種なりますが、とても勇敢でイノシシなどが突進してきてもひるむことはないでしょう。」

「なるほど・・・。」

「イングリッシュポインターは英国で生まれた気品の高い犬になります。お客様も英国貴族のような気持ちで猟ができますよ。」

「ふむ。それも悪くないな。私は馬にでも乗って狩りを楽しむか。」

「馬!いいですね。馬も扱っております。」

「あ、いや馬を買う気はないんだが。そういうのも有りかもしれないなと思って・・・」

「ちょうど昨日入ってきたいい馬がいます。3歳の雌馬でとても大人しく丈夫です。なにより、馬に乗れば行動範囲が10倍広がります。馬とポインターで収益も10倍になるのではないでしょうか?」

「なに、10倍?確かに馬に乗れば、2つ向こうの山まで遠征に出られるな・・・」

「おっしゃるとおりです。先日馬と犬を両方お買い上げになられたお客様も、収益が12.6倍にもなったとお喜びでした。」

「しかしなぁ。私は犬もそうだが、馬も飼ったことがない。どうすればいいか見当もつかない。」

「そのあたりは心配ご無用でございます。当店でご購入いただいた犬、馬はすべて当方のスタッフが管理させていただけます。もちろん、それは別途ご契約をいただくことになるのですが・・・。」

「それは心強い。・・・ただ、なんだか大事になってきたな。小さな犬を一匹連れて帰ろうと思っただけなのだが。」

「お客様。収益10倍も夢ではございませんよ。」

「10倍・・・。確かに10倍になるなら多少の投資は仕方ないか。」

「おっしゃるとおりでございます。あと馬を飼われる場合、どうしても厩舎が必要となります。厩舎はございますか?」

「厩舎!そのようなものはないぞ。」

「あー、大丈夫!ご心配不要です。今の時代は1日で組み立てられるプレハブタイプの厩舎がございます。そちらも当店でご用意できます。」

「なんと。それはありがたい。しかしそうはいっても厩舎は高そうだ。」

「そちらはリース契約にされれば月々の負担はいくらでもありませんよ。またリースにすれば税法上も即座に費用計上が可能でして、固定資産にするより節税効果がございます。」

「うーむ、なるほど。」

「それと、、、お客様。馬を新規に飼われる場合、役所への届出が必要になります。これが行政書士の先生に頼まないと難しいですが、当方にお任せいただければやっておきます。ただ、そちらの手数料と印紙代はお客様のご負担となります。また飼い始めましたら年に1回の予防接種、安全保安対策の届出、傷害保険などに入る必要がございます。こちらは義務になっております。」

「なんと!やはり馬は敷居が高いな。辞めておこう・・・」

「なにをおっしゃるお客様。節税効果ですよ。収益10倍です。英国貴族です。私の被っているこのハンチングハットは、、、この際プレゼントします!ほらお似合い!さあお客様!私もここまで散々頑張ってご提案差し上げてきました。今さらビーグル1匹には戻れませんよ!」

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