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「メリダとおそろしの森」を観てきた~大人が楽しめる映画とは何か

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あの、初めに言っておくが、私は映画評論家でもないし映画オタクでもないので、この記事を書くにあたってほとんど何も調べていない。こんなことは別に言う必要ないと思うのだが、言っておかないと、「調べてから書け」とか言う人が必ずいるので言っておくことにする。

ただの一個人がある映画を観に行った感想であって、それ以上のものではない。

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仕事がひと段落ついたので、「メリダとおそろしの森」を観てきた。

これは圧巻だった。ここではストーリーに踏み込んで詳しくは書かないが、とてもよい映画。最近のディズニー(PIXER)系の映画はほとんどはずれがない。

特に子育て中のお母さんは観に行った方がいいのではないか。子供も楽しめるし、私も楽しかった。


私が思うに、「メリダ...」のようなディズニー映画にも、ジブリや押井守氏、細田守氏などの日本アニメ作品にも共通しているのは、「大人も楽しめる内容の濃い映画であるべき」という発想にあると思う。

その意味で、ポケモン、NARUTO、プリキュアなどのシリーズとは一線を画す。これらは「大人が楽しめる」というのは捨てている。それはそれでよい戦略だと思うが、今の私は観に行く気がしない。

目下子育て中である私は、今や絶滅してしまった「一休さん」「アルプスの少女ハイジ」のような「大人も楽しめる」アニメの代替を、これらの映画に求める。幼いころそれらのアニメを父や母とみて、一緒に笑ったり泣いていたのは今となってはよい思い出だ。

しかし、最近は、ジブリ系の作品はとんと観に行っていない。

行けば行ったでそこそこ面白いのだと思うが、どうもここ10年ほど「ああ、見てよかった」という思い出が少ない気がするからだ。

これは、この「大人も楽しめる」の考え方の違いによるように思う。

日本の「大人も楽しめる」系の映画は、「大人が忘れてしまった子供心を思い出させる」作品だと思う。良く言えば。

悪く言えば「大人になりきれない子供の発想」で作られた映画だ。

つまり、世の中の様々な不条理に真正面から向き合わない。

たとえばジブリ系の映画では、ボーイッシュな女の子が活躍する話が多いが、彼女らはたいてい初めから市民権を得てしまっている。きっちりと男社会を描かないので、彼女らの生き方が「すごい」と思えない。

「差別」「いじめ」「格差社会」のようなものにも封をするか、極めてライトに描く。リロ&スティッチのリロが友達から受けていたいじめや、トイストーリーの隣の男の子がやっていたおもちゃいじめなどのようなレベルは描かない。

あるいは、女の子が意思があるようで実は芯は何も無い、ただのかわいこちゃんだったりする。その方が、純粋な子供の世界に戻りやすいと考えてのことだろうか。実際にはそんな子はいないので、私などはいまいち感情移入できないし、女性ならなおさらではないだろうか。

甲殻機動隊、サマーウォーズなどの映画は、基本的に男の子の発想の延長だ。社会の難しさ、生きにくさは中学生くらいの認識力で捉えて「悪しきもの」のように適当に流して描く。大人から見た「これはこれで仕方がないんだ」という見方は敢えてカットしている。その割り切りは大事だが、年とってくると物足りなさを感じる。

一つのテーマを決めて、お行儀よく、冒険をせず、その中で徹底的に深く突き詰めるのが日本アニメの特徴だ。幻魔大戦やアキラの時代からずっとそうだ。

この辺が子供的だと思う。どこかお母さんの目を気にしつつも、お母さんが入ってこれない安全な領域で遊んでいるかのような。

一方でメッセージ性は、非常に抽象的で壮大になる。そっち方面に突き進んでいくことによって、深みを出して霧で覆い、これまたお母さんの批判をかわそうという狙いかも知れない。これが行き過ぎた何点かの作品ではかなり説教臭くなる。

どうも全体としてスカッと感がない。


このあたりがディズニーはまったく違う。

「大人が楽しめる」は、「成熟した大人の視点で、大人の価値観に合わせて」描く。大人の視点で、社会を的確に描き、その上で茶化したり駄目出ししたりする。現実にはありえない世界を題材にしていても、社会の描き方が非常に幅広くかつシャープだ。

子供が生まれるまでは、それほど観ていなかったが、この数年でディズニー系アニメは見まくった。まあ、とは言っても20~30作品くらいだが。15本くらいはDVDを買って複数回観ている。

そのどれもが大人から見ても見応えがあり、そして特に最近の作品はどんどん「大人が楽しめる」度を増しているように思う。

今回の「メリダと...」もきっちり、粗暴だがそれでうまく回っている男社会を描き、その中での女性の生き方の難しさを訴えようとする。前提の男社会をきっちり描くことで、女性の苦しみが引き立つ。ムーランと同じだ。

あまり男社会を悪く描き過ぎると、「そんな社会がどうしてうまく行っているのだろう」と疑問に思って説得力がなくなる。

女の子をあまり純真無垢にすると、感情移入できない。メリダは自分の失敗を他人のせいにするようなところがこの年頃の女の子らしくて共感できる。

このようなバランス良く、かつ分かりやすい大人向けのメッセージと同時に、大人の立場から子供の視点に降りて、子供の楽しめることを追求する。

それはさながら絵本作家のような視点だ。

逆にいえば、バランスが良すぎてオタク感は出ないので、小学生も高学年以降になると今一つアクがないように感じるかもしれないが。


私はよく調べてないが、この映画は、ジブリ系のたくさんの映画のエッセンスを取り入れているように見える。

  • 風の谷のナウシカ
  • もののけ姫
  • 紅の豚
  • 千と千尋の神隠し
  • となりのトトロ

それらのよいところをいいとこどりして、アメリカンな明るさとダイナミックさで焼きなおしたような映画になっている。

笑いあり、気味悪さあり、スピード感あり、愛ありで、かつ見終わった後スカッとするよい映画だ。

3Dの使い方も出しゃばり過ぎずとてもよい。


さて、「おおかみこどもの雨と雪」が今話題になっているが、これはどうだろうか。

これも近いうちに観に行くつもりだ。日本映画にももちろん期待しているのだ。


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