継続的フィードバック: Tech・Ed 2011 基調講演後に語られた Visual Studio vNext
先日、投稿したように、Tech・Ed North America 2011 の基調講演にて、ビジネスにアラインしたソフトウェアの開発、運用に対する実装として Visual Studio vNext について話がありました。
世界最大級のテクニカルイベント Tech・Ed North America に来ています。【アジャイルは必然、Visual Studio vNext のあたりをレポート】
ここでは、Agility Focus Economics を主題にして、アジャイル、DevOps などのパラダイムを実現可能なプラクティスとして取り入れた Visual Studio vNext における ALM (Appkication Lifecycle Management)について基調講演でどっぷり半分近い時間を使って発表されていました。
さて、基調講演の模様は、前回の投稿をご覧いただくとして、ご覧いただいた前提で、この投稿をご覧ください。
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基調講演直後のセッションにて、「The Future of Microsoft Visual Studio Application Lifecycle Management」というセッションがありました。ここでは、General Manager である Cameron Skinner がスライド資料たった2枚で、あとすべてデモで、Visual Studio vNext で実現したい 継続的フィードバック の世界観を伝えました。
この投稿は、その内容をまとめたものです。例によって、コメント部分は、特に私の個人的な見解です。予めご承知おきください。
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マイクロソフトが ALM では、開発という枠だけではなく、ソフトウェアの世界において、
- Collaboration – コラボレーション
- Actionable feedback - 実施可能なフィードバック
- Respect your work styles - ワークスタイルの尊重
- Transparent agile Processes - アジャイル プロセスの透明性への支援
を実現しようとしています。Visual Studio 2010 でその足がかりをすでに完成させており、それをさらにさらに、進化をさせていくということです。
“良循環” を開発と運用の枠を取り払って実現する仕組みをあらゆる規模のソフトウェアのデリバリーに提供することが、目的です。
運用フィードバックを最適化 - IntelliTrace
最初に解説されたのは、IntelliTrace for Production Server です。IntelliTrace は、デバッグやテスト時に、メモリ情報を記録し、いつでもデバックを別の環境からスタートをされたり、デバッグ実行中に前の状態に戻ったりすることができる機能で、すでに Visual Studio 2010 で提供されています。これを稼働中のプロダクション サーバーで利用できる試みとなります。
軽量な要求の獲得と共有 - Story Board PowerPoint Plug-in
要求のユーザーのと詰めや共有は、ソフトウェア開発業界にとっては非常に大きな課題です。そこへの対応として今までも様々な取り組みがされてきました。今回、このストーリーボードで新たな要求へのやり方が実現できそうです。
PowerPoint で要求や仕様を決めているプロジェクトは実は結構多いです。組み込み業界ではかなり使われていますし、絵コンテとして PowerPoint が採用されているケースも多いです。この機能を使うことで、単なる絵としてでなく、より簡易に絵を作成でき、フィードバックのサイクルを回すことができるようになります。
このように1スライド、1絵コンテとして PowerPoint の表現力でストーリーを描いていくことができます。Shape Library で予め準備されている Shape を使うこともできます。
このように Shape をドラッグ&ドロップするだけです。
工夫した部分を My Shape として記録して再利用することもできます。
チーム Hub ー Team Foundation Server Web App
もともと、開発における全リソースをオールインワンで収集して、有機的に関連付けて管理することができる Team Foundation Server ですが、その利点をより生かすインターフェイスとして Team Foundation Server Web App が紹介されました。これは、チームの様々かつ複雑な情報をよりわかりやすくする チームの Hub となる取り組みです。
チームの状況を一望できる。開発チームのソーシャルとして機能します。
プロダクト バックログも直観的な表示と操作ができるように設計されています。
ドラッグ&ドロップでストーリーの優先度やスプリントへの割り当てなどが行えます。
ベロシティも常にリアルタイムに見ることができます。
スプリント バックログです。常にリアルタイムな情報を提供するだけでなく、各自のキャパシティの状況を見ながらチームとしての意思決定を迅速に行えるようになります。
ドラッグ&ドロップでストーリーを移動することができるため、チームとプロダクト オーナー間のやり取りも直観的に行えます。
キャパシティもこの通り。
タスクボードも搭載です。もちろん直観操作です。
タスクもさくっと作成できます。
タスクは、もちろんドラッグ&ドロップで TO DO から IN PROGRESS、DONE に遷移させることができます。
コンテキスト スィッチ - Team Navigator
チーム ナビゲーターによるコンテキスト スイッチにより、膨大になりがちな開発リソースを開発者各自の今に、必要な情報だけにフォーカスを当て関心ごとにスイッチしていくことができます。
たとえば、My Work で自分のタスクについて To Do、 In Progress、Unfinished と一望できます。また、仕掛中については、Check In 候補がわかるため、自分の本来やるべき作業にフォーカスする環境を統合開発環境内に設けることができるようになります。
今回のセッションでは、Visual Studio から使う方法についてデモがありましたが、Eclipse から TFS へ接続する Team Explorer Everywhere も提供していますので、きっと対応していくことになるでしょう(※個人的憶測です)。
Team Navigator では、「My Work」、「Work Items」、「Source」、「Bulids」、「Reports」、「Documents」のコンテキストでほしい情報にアクセスができます。
コピペ コードの発見 - Find Matching Clone in Sources
コピペ コードを喜ぶ人はいません。これらを効果的に発見し、リファクタリングすることは、レガシーコード対応にとっても重要です。これらに対するサーチが充実してきます。コードを選択し、メニューから選択するだけコピペ コードを解析してくれます。
「Find Matching Clone in Solution」があります。
解析中です。
解析した結果は、「Exact Match」、「Strong Match」、「Medium Match」と強弱つけて一致度合を教えてくれます。
Unit Test Explorer
単体テストを支援する機能はこれまでもありましたが、Unit Test Explorer が発表されました。開発者が今必要なテストコードと実施に関する情報にいち早く手が届く機能になります。
テストの実行、実行に要した時間、成否、問題個所のナビゲートしてくれます。
コードレビュー機能
コードレビューの機能も充実します。今までも TFS のシェルブでチェックイン前にコードを共有することができましたが、さらに、コード レビューの情報を各ソースコードに記録することができるようになります。ソースコード上、レビュー箇所を可視化もでき、Team Navigator からレビュー対象へも迅速アクセスです。
Office 製品のコメント機能のような感じでレビューコメントを追加することができます。
探索型テスト、フィードバック
Visual Studio 2010 で登場した Microsoft Test Manager の進化形です。探索型のテストを記録し、そのテストからバグの起票はもとより、バグからテストケースを作成するなどのほしかった機能が登場します。
いかがでしょうか? Visual Studio vNext では、さらに、あらゆる開発に ALM の支援を提供して、ビジネスにアラインしたソフトウェア デリバリーを実現するというメッセージがありました。また、それは Visual Studio vNext を待たず、Visual Studio 2010 から実践可能で、それを進化させていくことができます。
Visual Studio を使っていない方も、Visual Studio の ALM は利用することができますし、これからの開発支援ツールの進化を知る上では、非常に興味深いものですので、ぜひ、ウォッチしていただければと思います。
さて、今回の投稿で、Visual Studio vNext のすべてをお伝えしたわけではありません。Tech・Ed North America 2011 ではまだまだほかにも発表がありました。それらはまた次の機会に。
長沢(@tomohn)