オルタナティブ・ブログ > ITとビジネスの可能性 >

ITとビジネスのおいしいところを考察 ~ ときどき開発業務改善ネタ

経験主義と科学的思考

»

はじめに

不確実で複雑な時代、すなわち正解がないもしくはどれもが正解の時代では、経験主義、とりわけ経験的プロセス制御が重要になってきます。この経験主義に基づくフレームワークとして知られているのは以下の2つです。

  • スクラム
  • エビデンスベースドマネジメント

また、正解がないなか探究し実験を繰り返す考え方として科学的思考が注目もされています。この科学的思考に基づくパターンとしては、改善のカタがあります。不確実で複雑な時代での共通パターンとしては、アジャイルのカタがあります。これは改善のカタを中核としたものでもあります。

では、これら2つについて考えてみましょう。

経験主義

経験主義とは、あらゆる知識とは知覚した経験から得られるという理論です。「わからないことは、わかるまでわからない」ということです。よく知られている経験主義の三本柱「透明性」、「検査」、「適応」によって回していきます。

  • 透明性
    何が起きているのかを確認すために、関連するデータを収集し、それらを関係者で共有すること
  • 検査
    関係する人たち全員で状況を検査し、ゴールにとって何を意味しているのかを判断すること
  • 適応
    ゴールに近づけるように望ましく変化すること(ゴールも含めて変化させる)

これを行うには、問題領域と共有すべき事項に合わせた適切な頻度で回していく必要があり、それ自体も検査し、適応させていく必要があります。

スクラムでの経験主義の活かし方

スクラムにおける経験主義では、スクラムの作成物とイベントとの関連で見ていくことができます。

  • 作成物
    透明性の源泉となるもの。
    • プロダクトバックログ(コミットメント: プロダクトゴール)
    • スプリントバックログ(コミットメント: スプリントゴール)
    • インクリメント(コミットメント: 完成の定義)
  • イベント
    検査と適応の最小限の機会(少なすぎる検査と適応を防ぎ、やりすぎる検査と適応を抑制する)
    それぞれのイベントにおいて、主に作成物を検査し、作成物ややり方などを適応させる

エビデンスベースドマネジメントでの経験主義の活かし方

エビデンスベースドマネジメント(EBM)での経験主義では、ゴール設定、計測指標に対して透明性と検査、適応を行います。

  • ゴール設定
    組織が目指すゴール
    • 戦略的ゴール
    • 中間ゴール
    • 即時戦術ゴール
  • 計測指標
    組織が意思決定に用いるアウトカムの指標であり、以下の重要価値領域がある
    • 現在の価値(CV)
    • 未実現の価値(UV)
    • イノベーションの能力(A2I)
    • 市場に出すまでの時間(T2M)

これらは透明性が求められると同時に相互に検査しあう関係性があり、適応させていくことになります。

さて、EBMではゴール設定に関しては改善のカタをベースにしています。この点から名言していませんが、科学的思考もベースにしているといってもよいでしょう。

科学的思考

科学的思考とは、何が起こっているのかを観察し、仮説に基づき実験を行い速く学ぶことです。多くの組織では、観察を行わずに他社事例や過去の成功体験に基づき都合のよさそうな仮説を立て、それを都合よく検証しようとする傾向も見受けられます。

  1. 現状の観察
  2. 仮説の立案
  3. 実験とフィードバック
  4. 学びによる仮説の修正

観察するにしても、何を観察すべきかは大きな課題が残ります。手元にある不確かな情報から始めなければならないからです。また、課題や目指すべき方向性が定まっている前提で使うことが多いです。例えば、「生産効率を10%向上させる」という目標に対して現状観察から始めるといった具合にです。

これを「トヨタのカタ」で知られる「改善のカタ」のアプローチで見ると以下になります。これは構造が明確になったパターン(カタ)になっているのがわかります。

  1. 目指す方向やチャレンジ
  2. 現在の状態
  3. 次の目標となる状態
  4. 実験

改善のカタは、科学的思考を誰でも実践できるようにしたいわば「再現可能な科学的思考」、「科学的思考を身につけるカタ」と言えるのではないでしょうか。

アジャイルのカタ

アジャイルのカタは、「科学的思考」に基づいた共有パターンを採用したアプローチです。この「カタ」を用いて、不確実であったり、複雑であったりする世の中の課題や方向性に対して「形式」ではなく「習慣」で取り組みます。

詳細については、ぜひ Agile Kata Pro 日本語サイトをご覧ください。

▶︎ https://agilekata.jp/

Comment(0)