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困難な選択の例(ただしフィクション)

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堀内さんの「困難な選択に直面したときに取るべき、たった一つの態度。」というエントリで思い出した話です。以下は、私が最高のテレビドラマだと考えている「ヒルストリートブルース」の、ある回のあらすじです。ただし、例によって、ほとんどうろ覚えですが。


このドラマは治安の悪い街にあるヒル分署という警察が舞台です。主役は、私の理想の上司像でもあるフランク・フリロという正義感の強い分署長ですが、他にも多くの登場人物がいます(ただし、以下にはあまり関係しません)。

教会のシスターが殺された事件からドラマがはじまります。すぐに、ある一味が容疑者として捕まり、ニュースも流れました。ところが、器物破損程度は認められるものの、肝心の殺人については状況証拠しかなく、告訴しても有罪にするのは難しそうな状況です。優秀な弁護士が付いたため、自白しなければ軽い罪で済む彼らから、司法取引で自白を引き出すのも難しい状況です。

一方、人気者だったシスターを殺された市民は穏やかではありません。警察の外では「容疑者を俺たちに渡せ。すぐに処刑してやる」と荒くれものが息巻いています。彼らを起訴して器物破損くらいの軽い罰しか与えられなかったとしたら、どんな暴動になるかわかったものではありません(治安の悪い街なのです)。なにより、状況証拠しかないとはいえ容疑者が犯人であることは確定的なのです。

フリロ署長や検察官などが集まって対策を議論します。有罪にできないのを承知で殺人で起訴するか、拘留期間を延ばして証拠探しの努力を続けるか、器物破損でできる限り重い罪を課すようにさせるか、議論は白熱しますが、フリロ署長は「そんなんじゃダメだ」とある提案をします。


フリロ署長 「彼らに証拠不十分で釈放すると伝えるのです」
検察官   「そんなことをしたら、どんな暴動が起きると思うんだ。彼らだって、タダじゃすまないぞ」
フリロ署長 「それを利用するんです。彼らは、自分たちが、このまま外に出たらどんなことになるかわかっている」

容疑者は司法取引に応じて自白しました。

ドラマの最後、フリロ署長は教会の懺悔室で告白します。「私は罪を犯しました」


堀内さんのエントリには“ドラマティックな展開”というコメントを書きましたが、不正があるときに誠実な選択をする、正義の選択をすることができるのなら、それはあまり困難ではないかもしれません。本当に困難な選択とは、他者の重大な正義のために意図して自らが不正を選択する場合という気がします。幸いにして、私自身は、そのような場面に遭遇したことはほとんどありませんが。

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