著作権法はアイデアを保護しない
著作権保護延長について記事における三田氏の発言について、小倉弁護氏が「著作権の保護期間延長問題は人格権とは関係ない」というもっともな指摘をされています。そもそも、以前にも書いたとおり、著作権者は作家や漫画家ばかりではないので、こうした「一部の個人」が著作権者全体の代表のようにみなされるのはどうかと思います。
さて、この記事の佐野氏の以下の発言を取り上げて、保護期間の延長が、既存の著作物を利用した新たな創作活動を制約しかねないという批判を見かけました(そのエントリは、あえて引用しません)。
「(著作権切れは)身を切られるようだ、と言う人もいるが、その人が書いた『宇宙戦艦ヤマト』は、吉田満の『戦艦大和ノ最期』にインスパイヤされたなかったのか、『銀河鉄道999』は、宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』にインセンティブされなかったのか」と佐野さん
そもそも、ここで暗示されている松本零士はヤマトでは作画監督ですし、wikipedia によれば「銀河鉄道」という表現は宮沢賢治の遺族の了解を得て使っているそうで、これが事実なら(*)、佐野氏の批判は的外れという気がします。しかし、保護期間の延長が新たな着想を制約するというのはどうでしょうか。
先のエントリにも書いたとおり著作権はアイデアを保護しません。そこに書いた大河ドラマ『武蔵』にみられる黒澤映画のアイデアは保護されませんでした。そうでなくても、モーリス・ルブランの死後50年を待たずに登場した『ルパン三世』(←微妙かも)、映画『TRON』に触発されたコンピュータグラフィック映画など、誰かの作品にインスパイアされた新たな創作活動というのは保護期間に関係なくあることです。世界名作劇場『私のあしながおじさん』のエンディングが『キャンディ・キャンディ』の盗作ではないかという指摘もあったそうですが:-) 他社のコラムをそのまま使ったとか、登場人物の名前だけを変えたというような「盗作」は制約されますが、延長反対派の人は「盗作」を許容しろというわけではないでしょう。
延長反対派が「延長によって創作活動が制限される」と強弁することは、かえって「そんな心配はない」と延長賛成派に理由付けを与えてしまう不安があります。小倉弁護士の指摘するとおり、現行法の正しい知識が必要だと思います(というわけで、正しくないことを書いていたら、お手柔らかにご指摘くださいませ)。
※タイトルを「著作権は・・・」から「著作権法は・・・」に変更しました。
*下線部を追記しました(コメント参照)。