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Winny 開発者有罪の判決は開発者の活動を停滞させるか?

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Winny開発者に有罪判決」(ITMedia) などで報じられているとおり、Winny 開発者の金子氏に有罪の判決が下されました。私は有罪という裁定には、もともと賛成だったのですが、「「徹底抗戦する」――Winny開発者、控訴へ」によれば、

金子被告に著作権侵害助長の意図はなかったことは認定され、Winnyの技術が有用であり、価値中立的であること

が認められたそうです。これは意外でした。たとえば winny.info で紹介されている「47氏発言集」では以下のようなコメントが掲載されています。

43 名前:47 投稿日:02/04/06 01:17 ID:M5Lc7MaX main/1017590243.html#476

ソフト公開で逮捕というとFLMASKの例があるから絶対無いともいえんけど、
その前にトンズラできると思うなぁ。
初めは目立たないWEB上でひっそりやって目立ってきたら
自分で作ったワールド内に逃げればいいと思われ。

広まるほどの完成度に達すれば逃げられるし、
達しなければ捕まることも無いという二重の安全策(w

あとMXでの公開の方が絶対危険だよね。
あれ珍しいファイルだと提供者のIPが一発でばれるし。

これ以外にもありますが、こうした発言が金子氏のものだという前提に立てば、少なくとも違法性を認識していなかったとは信じられません。だから「著作権侵害助長の意図があった」ことを理由に有罪にすべきではなかったかと思います。なお、上記の発言集に証拠能力があるかどうかは論点にしていません。証拠として認められなければ、それを理由に無罪になるのは「仕方がない」と思います。ところで、wikipedia によれば弁護側は「47氏」は金子氏ではないという立場を取っているようなのですが、証拠能力を別にして、これを信じている人はいるのでしょうか。

さて、記事からは「著作権侵害助長の意図はなかったが、これを認識した上でバージョンアップを繰り返していた。」ことが幇助にあたると認定されたように見えますが、これは「オークションサイトが海賊版の取引に使われていることを認識しながら、改良を繰り返していた」という表現とあまり変わりません。実態として不法行為ばかりかどうかという大きな違いはありますが、弁護側に「論点がおかしくなっている」という理由を与えてしまっている気がします(この理屈だと YouTube は有罪になりそうです)。それとも発言記録の証拠能力が疑わしいので、仕方なく、こんな理由で有罪にしてしまったのでしょうか。

もうひとつが「Winny の有用性」です。「P2P の有用性」に疑いの余地はありませんが、「Winny の有用性」については私はきわめて懐疑的です。実際、Winny が有用な目的で使われている「実例」があるのでしょうか、という質問を何度か投げかけたことがあるのですが、納得できる実例を示された覚えがありません。ちなみに、Winny ウィルスによって、うっかり秘密ファイルが流れ出した、ということは「有用性」のひとつだとは私は思いません。Winny の「新規性」は「匿名性」(出所の隠匿)にこそあると思うのですが、「匿名で」バイナリファイルを交換する」有用性を具体的に示唆したものを見たことがありません。
※ちなみに、技術的な理由で Winny を停止すべきという理由については、高木浩光氏が詳しく解説されています。「Winnyの問題で作者を罪に問おうとしたことが社会に残した禍根」などをご覧ください。

さらに、弁護側が主張する「Winny 有罪の判決は日本の開発者の活動を停滞させる」のが本当かどうかです。弁護側は「Grokster」の無罪判決を持ち出しているようですが、「napster」は(民事でしたが)敗訴しました。それでも、P2P は有益な形で進化を続けています。

日本でも47氏が上記のコメントで挙げたとおり、FLMASK でソフトウェア開発者が有罪と裁定されました("被害者”がいるのか?と考えると、FLMASK の方が Winny よりマシな気もするくらいです)。FLMASK 有罪判決の後、イメージ加工ソフトウェアの進化は止まってしまったでしょうか。私は、そうは思いません。もちろん、中には Winny 有罪を"きっかけ”に開発をストップする人がいるかもしれません。しかし、それが著作権侵害という目的のみで“活用”できる P2P ソフトウェアであるなら、あまり問題だとは思いません。それこそ、普通のソフトウェア(とくに商用アプリケーション)を開発している人は、Winny がなくなって不正なソフトウェアの交換がなくなる方がよいと思っているのではないでしょうか。

※2006/12/14。タイトルを「Winny 有罪・・・」から「Winny 開発者有罪・・・」に変更しました。

Comment(8)

コメント

YSP

被告側はP2Pの開発・実験をしているのは自分達だけだと思ってないですかね?
いまや時間は経ってP2P自体は珍しい技術ではなくなっています。
Winny公開当時から時間もかなり経っているというのに、
いつまで「伝家の宝刀P2P=Winny」だと言い続けるのでしょうか。滑稽きわまりないです。
mohnoさんも言及しているように、本当に必要な技術ならグレーゾーンで流行らせなくても研究期間や企業がモノにしますよ。
日本のIT産業は独創性が低いと言われますが、出たアイデアに対して実現しキッチリしたものを作り上げる力は捨てたものではないと思っています。

mohno

コメントありがとうございます。
そもそも「正当な研究だ」という主張に疑問があります。「研究室」ではなく「2ちゃんねる」、「金子」氏ではなく「47」氏で開発が進められた事実を考えれば、「おかしい」というのが普通だと思うのですけどね。

zabine

FLMASKという先例について言及してるが、。「これはひどい」度から行けば、WinnyよりFLMASKの方が上なだけで、Winnyがマシって発言はピントがずれていると思うのだが・・・

mohno

そこは感覚的な話ではあるのですが、一応お尋ねすると、なぜでしょう?

zabine

利用者のURLを提示しただけで刑法175条の幇助罪が適用されているからです。

mohno

FLMASK の方が“判決”がひどい、という意味でしたか。「マシ」の対象がわかりにくかったかもしれませんが、「FLMASK の罪の度合いがマシ」であって、「FLMASK 判決の方がマシ」という意味ではありませんでした。

名無し

どう見てもFLMASKのほうがマシですね。Winnyの方が酷い。FLMASKなんて全く取り締まる必要の無いほど社会に害のないものでした。Winnyはそうではありません。

コメントありがとうございます(すみません、見逃しておりました)。おっしゃるとおりですね。
本文で紹介した高木浩光氏が新たなエントリを投稿されていました。
http://www.takagi-hiromitsu.jp/diary/20061218.html
善意の技術者が本当に萎縮しているのだとしたら、その原因を作ってしまったのは誰なのか、考えさせられる内容です。

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