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昨年来、IT業界でホットな論議を呼んでいる「Web2.0」。その正体を掴んでビジネスに結びつけようと、業界関係者はいま必死に知恵を絞っています。とはいってもこの言葉、次世代インターネットにおける事業やサービス、およびそれらを支える技術などを総称して使われるケースが多いだけに、その全体像を捉えるのはなかなか難しいようです。
ただ、ビジネス的な観点から本質的なポイントとして一つ挙げられるのは、これまでのWeb(Web1.0)が主に企業や組織から消費者個人に情報発信されていたとすれば、Web2.0では消費者間、あるいは消費者から企業への情報流通も可能になったことです。この情報流通革命ともいえる現象を巻き起こした原動力となったのがブログでしょう。
ではブログがもたらしたイノベーションとは何なのでしょうか。ブログ技術をリードしてきた米シックス・アパートの日本法人トップである関信浩代表取締役が、明日8月29日発売の『アイティセレクト10月号』編集長インタビューでこんなふうに語ってくれました。
「Webが世の中に登場したのは1990年代ですが、当初は個人や企業のホームページからスタートし、ネットワーク環境が整備されていく中で企業のイントラネット、企業と個人の間でのEC(電子商取引)、企業間ECへと利用形態が進化していきました。なぜWebがそれだけ広がっていったのか。その原動力となったのは、インターネットに接続すれば誰でも簡単にWebサイトを閲覧することができるWebブラウザが広く普及したことです。つまり、ITのインフラとしてWebブラウザが消費者個人を中心に『読み手』を大きく広げるイノベーションを起こした。読み手が広がったのですから、企業などは一生懸命、情報発信しようとWebサイトの制作に努めました。ただ、Webサイトを制作するためには、HTMLの習得をはじめとした技術的なハードルの高さやコスト面での負担があり、読み手は増えても『書き手』がなかなか増えないというジレンマがありました。そうした中で、2000年代に入って登場したブログは、専門の知識がなくとも簡単に制作できるとあってまず個人から火がつき、その後、企業ブログ、イントラネットブログへと普及していきました。つまり、ブログはWebサイト制作においてジレンマとなっていた、書き手を大きく広げるイノベーションを起こしたのです」
つまりは、Webブラウザが読み手のイノベーションならば、ブログは書き手のイノベーションだと。そしてこれらを組み合わせることによって、Web上での双方向性が一層深まるのだと。かねてからブログは利用者にとってホームページの敷居を低くものだといわれてきましたが、関さんのお話で私の頭の中でもブログのもつ意味や価値が整理できたように思います。
で、せっかくなのでインタビューでのこぼれ話をひとつ。関さんにこんなことをボソッと呟いてみました。
「それにしても、皆さん、毎日すごい量の文章をブログに記していますよねぇ。僕にはそんなパワーはないですよ」
すると、かつてご同業の雑誌の編集記者だった関さんはこんな見解を語ってくれました。
「記者と違って、一般の人たちはこれまで何か言いたいと思っても発信する場所がなかった。記者だったら、記事になりそうなネタだとブログに書くより自分の媒体に、と思うでしょうが、一般の人たちにとってはブログが自分の媒体なんですよ」
なるほど。が、そこでまた、ふと疑問が……。ここにきて一大市場に膨らんだブログをメディア化しようという動きも活発化してきている中で、その「編集」とはいったい何なのか。関さんのお話を聞いて以来、ちょっと真剣に考えてみる気になりました。
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