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SIerの生き残り作戦

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 オンデマンドCRMのトップ企業であるセールスフォース・ドットコムがオンデマンド・プラットフォームサービスであるAppExchangeを発表したのは、昨年の9月。これまでに、AppExchange上の公開アプリケーション数は250以上、トライアル回数は2005年9月以来、122,000回に及んでいるとのこと。ソフトウェア開発はユーザー企業のもとでその都度実施するものから、サービス化という新しい形へ進化しつつあるのだろう。

 SaaSという表記を初めて見たときは、新しいウィルスソフトでも出現したのかと思った。"Software as a Service"の頭字語で、「サーズ」ではなく「サース」あるいは「エス、エー、エー、エス」と読むようだ。SaaSでは、SIerの介入が難しい。そもそも、「開発」という行為が必要ないからだ。そのため、せいぜい既存システムとの連繋部分であるとか、SaaS上のサービスをカスタマイズするなどに限られる。

 ところで、米国セールスフォース・ドットコムが「AppExchange OEM Edition」を発表した。発表によると、セールスフォース・ドットコムのオンデマンド・プラットフォームサービスをパートナー企業4社がOEMで提供開始するとのこと。もちろんただ代理販売するのではなく、なんらかの付加価値を開発しそれを含めて提供するのだ。最初のパートナー4社の1つであるRally Software Development社は、急速に注目されているアジャイル開発手法を今回のOEM提供に取り入れる。これにより、オンデマンド・プラットフォーム上でのソフトウェア開発を限られた資源およびスケジュールの中で短期間に完成させる実践的導入をサポートする、という特長をもっている。

 LinuxやWindows Vistaの上で開発するのではなく、AppExchange上でSIをおこう。これは、SIerの新たな形かもしれない。いや、今後はオンデマンドサービスの上で付加価値を開発し顧客に提供するといのは、SIerの新たな方向性の1つになるはずだ。

 SIerの業界再編について松岡さんがブログに書かれているが、規模の力を発揮するための再編の動きに加え、あらたなSIerのサービスの形を模索するための再編も今後大いにあり得るのではないか。旧態依然のサービスのやり方を変えずに組織だけをいじっても、次の時代に生き残れるとは限らない。新たな生き残り戦略を明確にもっているSIerは、いったいどこにいるのか。そういった観点からも、SIer業界の再編に注目したい。

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