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私の取材ノート

IT業界を四半世紀見てきたジャーナリストのこだわりコラム

 2011年も残りわずか。この1年間、新聞・雑誌・テレビなどで見聞きして印象に残った言葉を記しておきたいと思います。

「3日で手に入れたものは3日でなくなる。
 1カ月で手に入れたものは1カ月でなくなる。
 でも3年かけて手に入れたものは、ずっとなくならない」
(自分の職業を「郷ひろみ」と言う 郷ひろみ 氏)

「高い年収で満足は買えるが、幸せは買えない」
(プリンストン大学 カーネルマン名誉教授/ノーベル経済学賞受賞者)

「新しい成果は、新しい“人”から生まれる」
(再生医療研究者 岡野光夫 氏)

「誰がつくったかは忘れられてもいい。
 それなしには生きていけないものを残したい」
(クモの糸の人工合成に取り組むベンチャー企業「スパイバー」社長 関山和秀 氏)

「社員の満足度なくして顧客満足度はない」
(女性パワーを生かしてアパレル業界で急成長中のベンチャー企業「クロスカンパニー」社長 石川康晴 氏)

「人の価値は態度で決まる」
(東大教授 姜 尚中 氏)

「死ぬるとき、そこが人生のてっぺん」
(96歳の現役ジャーナリスト むのたけじ 氏)

「埋葬もできないまま、がれきに埋もれている人々を抱えている国で、
 原子力発電所の事故で国土の一部を失いつつある国で、
 自分たちはアニメを作っているという自覚を持っている」
(スタジオジブリ映画監督 宮崎 駿 氏)

「ビジネスとは、会社という公器を使って社員一人ひとりが広く社会やお客さまに貢献すること。
 その貢献の大きさが、会社の価値を決める」
(NEC社長 遠藤信博 氏)

「重要なのは、正しい答えを見つけることではない。
 正しい問いを見つけることである」
(経営学者 ピーター・F・ドラッカー 氏)

「つながっていれば、できないことはほとんどない。
 バラバラなら、できることはほとんどない」
(米国元大統領 J・F・ケネディ 氏)

「人は今こそ謙虚にならないといけない。
 少しずつ暮らしの“引き算”をするときがきたんじゃないか」
(チェルノブイリに通って映画を作った監督 本橋成一 氏)

「死んだら、立派な人間だったと言われたいと思って生きるとつらいですけど、
 アイツはどうしようもなかったと思われると楽ですよ」
(俳優 渥美 清 氏)

「苦しいときは、私の背中を見なさい」
(女子サッカー選手 沢 穂希 氏)

「苦労すればするほど、
 人生、味わい深いものになる」
(経営の神様・松下幸之助の夫人むめのの父の最期の言葉)

「学問も芸術も面白がることが大事」
(作家 丸谷才一 氏)

「いい仕事には、いいプロセスが必ずある」
(働き方研究家 西村佳哲 氏)

「目の前の壁を乗り越えようとするな。
 乗り越えられないから壁なんだ。
 むしろ右へ左へと動いて、壁の切れ目を探せ」
(作詞家・プロデューサー 秋元 康 氏)

 来る2012年、明るい年になりますように……良いお年を。

Isao Matsuoka

 2010年もあと少し。またまた1年ぶりの更新になってしまいましたが、昨年に引き続いて、この1年間、新聞・雑誌・テレビなどで見聞きして印象に残った言葉を記しておきたいと思います。

「表現は技術を観せるものではない」
(女優 桃井かおり 氏)

「指導は上り坂で荷車を押すようなもの」
(帝京大ラクビー部監督 岩出雅之 氏)
※帝京大ラクビー部を初の大学日本一に導いた

「苦しいと思うまで突き詰めたら道はひらける」
(IBMフェロー 浅川智恵子 氏)
※“ITのバリアフリー”研究の第一人者

「人間の歴史は虐げられた者の勝利を忍耐強く待っている」
(インドの詩人 タゴールの言葉)

「むずかしいことをやさしく
 やさしいことをふかく
 ふかいことをおもしろく
 おもしろいことをまじめに
 まじめなことをゆかいに
 そして ゆかいなことはあくまでゆかいに」
(劇作家 故・井上ひさし 氏)
※2010年4月9日に亡くなった

「建築の独創的発想に欠かせないのは、美しさや本物を見抜く審美眼。文学や哲学、美学、音楽などで磨いておかないといけない」

「好奇心の原点は感動と探求心。好奇心が知識を得る力となり、知的資産の総量がまた新たな好奇心を生む」
(以上2つ 建築家 安藤忠雄 氏)

「パーをセーブしよう、ボギーを打たないようにと考えるより、全ホールでバーディーをとりにいこうと考えた」
(プロゴルファー 石川 遼 氏)
※2010年5月に開催された男子プロゴルフ・中日クラウンズの最終ラウンドで、18ホールのツアー最少新記録となる58(12アンダー)をマークして優勝したときのコメント

「仕事は量をやらないと質は高まらない」
(漫画家 故・石ノ森章太郎 氏)

「嫉妬は自分のものさし」
(放送作家 鈴木おさむ 氏)

「毎日ワクワクするようなシーンに出会っていたい」
(動物写真家 福田幸広 氏)

「小さな苦しみは愚痴を生む
 大きな苦しみは知恵を生む」
(菩提寺の壁に掲げられていた一文)
※吉野家ホールディングスの安部修二社長が心に響いた言葉として挙げた

来る2011年、明るい年になりますように……良いお年を。

Isao Matsuoka

 厳しかった2009年もあと少し。1年ぶりの更新になってしまいましたが、昨年に引き続いて、この1年間、新聞・雑誌・テレビなどで見聞きして印象に残った言葉を記しておきたいと思います。

「汗もかかないで生きざま語ってんじゃねえよ」
(テレビCMより)

「職人の技は志で磨かれる」
(へら絞り職人 松井三都男 氏)

「彼がそばにいてくれれば、私はずっと笑っていられる」
(テレビ東京 大橋未歩アナウンサー)

「幸せとは、今、持っているものだけで十分だと気づくことかもしれません」
(TBS「世界ふしぎ発見」に出てきたブータンのおじさん)

「危機後の勝者は、嵐を生き延びた者ではなく、ゲームのルールを変えた者だ」
(米IBM サミュエル・パルミサーノ会長)

「病気はしても、病人にはならない」
(作家 吉武輝子 氏)

「全力を出せるかより、全力を出せる状態かどうかのほうが大事」
(テレビCMより)

「やることより、やらないことを決めよ」
「批判は認められたい欲求の裏返しである」
(経済評論家 勝間和代 氏)

「議会の目的は、殴り合いを議論に代えること」
(チャーチル英国元首相)

「うまく行かないことが、当たり前」
(かるがも農業に挑む農家 古野隆雄 氏)

「乗り越えなくていい。その悲しみと、共に生きる」
(弁護士 村松謙一 氏)

「ユニフォームで野球をやるわけじゃない。自分が投げるだけなんで、どこの球団に行ってもベストを尽くすだけです」
(西武に入団した菊池雄星選手のドラフト前のコメント)

「ジャーナリズムは人に語らせること。筑紫さんは非当事者であることに徹し、人に語らせることが見事にできた人だった」
(東大教授 姜尚中 氏、故・筑紫哲也氏への追悼コメント)

「歌うように語り、語るように歌え」
(俳優 故・森繁久弥 氏)

「思い出すだけで心が暖かくなる人だった」
(歌手 加藤登紀子 氏、故・森繁久弥氏への追悼コメント)

「成功しても失敗しても、人は必ず成長する」
(小売り再建コンサルタント 大久保恒夫 氏)

「テメエの足で遠回りしてきたことは身になるよ、絶対」
(ロックシンガー 矢沢永吉 氏)

 来る2010年、明るい年になりますように……良いお年を。

Isao Matsuoka

 激動の2008年もあと少し。この1年間の取材ネタ帳を整理していたら、所々に、新聞・雑誌・テレビなどで見聞きして印象に残った言葉を書き留めていました。
 ITとは直接関係ありませんが、あらためて見ると味わい深い言葉が多いので、ピックアップしてここに残しておきたいと思います。皆さんも、もしピンと来る言葉がありましたら、どうぞ有効活用してください。

「もがいて苦しんでいると光が見えてくる。
いつか見えると思って何もしなければ、一生、光は見えてこない」
(マリナーズ・イチロー選手)

「すしは目で握る」
(三つ星・すし職人 小野三郎 氏)

「いま日本に欠けているのは、大人のチャーミングさ。
甘え上手で、甘えさせ上手な大人は、
ちゃんと駆け引きを知っていますよね」
(歌舞伎俳優 松本幸四郎 氏)

「努力しても成功するとは限らない。
しかし、成功した人は必ず努力した」
(新聞の読者の声の欄より)

「せっせと生き、さっさと去る」
(新聞の読者の声の欄より)

「敵の多いことを恥じる必要はない。
だが敵の名に恥じない者を敵にせよ。
卑しき敵は持ちたるだけにて此方の敗北なり」
(明治の文人 国木田独歩)

「庭師は庭を造るだけでなく、
家周りのすべてを演出する空間プロデューサーでもある」
(庭師 平岡佳道 氏)

「成功の反対は、失敗ではありません。
何もしないということです」
(身体のハンディを越え、中学教諭になった小島裕治 氏)

「おもしろく読んだ自分の判断に信念を持つ。
編集者が惚れ込むと、情熱が社会に伝わる。
すると幸運も味方する」
(ノーベル賞作家14人の出版を手がけたカリスマ編集者 トム・マシュラー 氏)

「ビジネスの目的は、価値を生み出すこと」
(日産自動車社長 カルロス・ゴーン 氏)

「理念なき行動は凶器であり、
行動なき理念は無価値である」
(ホンダ創業者 本田宗一郎 氏)

「他人と過去は変えられないが、
自分と未来は変えられる」
(関西大学教授 白石真澄 氏)

「介護を通して、私の中から相手を思いやる気持ちが引き出された。
母は認知症になることで、今も私を育ててくれているんじゃないか。
そう思うんですよ」
(認知症の母との日々をつづる詩集を出した藤川幸之助 氏)

「すべての業(わざ)には時(とき)がある」
(東大教授 姜尚中 氏/もとは旧約聖書)

「デザインは奇跡を起こせない。
それができるのは教育です」
(デザイナー 川崎和男 氏)

「記憶に残る幕の内弁当はない」
(作詞家 秋元 康 氏)

「旬の食材をいただくと、
身体が喜ぶのがわかります」
(バレエダンサー 吉田 都 氏)

「高下在心(こうげざいしん)」
※すべての物事は心がけ次第で決まる、という意味。
(楽天 野村監督)

「スマートにしゃべることは、
決して『伝わる』ことにならない」
(NHKキャスター 松平定知 氏)

 来るべき2009年、少しでも無邪気に笑えるように……良いお年を!

Isao Matsuoka

 半年ぶりの更新です。ITとは関係ないですが、ちょっとビビッときた話があったので、書き留めておきます。

 一昨日(日本時間では昨日)の大リーグ、マリナーズ対レッドソックス戦。イチロー対松坂の勝負は、イチローが2安打して「やっぱりダイスケから打つヒットはうれしい」と言ったそうな。昨年、12打数1安打3三振と抑え込まれていただけに、正直な気持ちが出たんでしょう。

 ただ、投打だけでなく、そんな両者の熱いぶつかり合いを物語るエピソードを、本日付けの日経新聞が報じていました。それによると、1回に2塁打で出たイチローが次の打者の送りバントで3塁へ進もうとした際、松坂はイチローを刺そうと必死のフィールディングで3塁へ送球したとか。

 結局、イチローはセーフ。記録は犠打野選となりましたが、あとのイチローのコメントにビビッときてしまいました。
 「今まで大リーグで8年間、あのタイミングで投げてきたピッチャーはひとりもいなかった」

 これをして新聞記事では、自分を刺しにきたライバルの高い守備力をたたえながら、イチローはどことなく満足げだった、と結んでいましたが、このイチローのコメントは実に味わい深い!
  まさしくモチベーションの高いプロ同士の、ほとばしるような激突を感じさせてくれました。これこそ本当の「カッコいい!」です。

 そして、このワンシーンに凝縮されているのが、「真剣に仕事をする」ということではないか……そんな気がしました。
 いやいやイチローや松坂だから……と思ったら話はそこで終わり。要は、真剣に仕事をする“土俵”へいかに自分を上げるか、が大事なんでしょうね。

 昨日のこのゲーム、取材先でちょこっとテレビを覗く機会はありましたが、このシーンをライブで観ることはできませんでした。
 ぜひ、録画を観たい!

Isao Matsuoka

 「シェアは力なり」
 11日に亡くなられたNEC元社長の関本忠弘さんの発言で、一番印象に残っているのはこの言葉だ。1990年代前半、新聞記者でIT分野を担当していたとき、幾度かインタビューさせていただく機会があった。当時はとくに、それまで圧倒的なパワーを見せていたNECのパソコンのシェアが、外資系メーカーなどの市場参入で50%を切るかどうかの攻防の真っ直中にあった。

 なぜ、「シェアは力」なのか。関本さんは「シェアには、開発、製造、マーケティング、販売といったすべての力が働いている。シェアはそうした力の結晶。だから僕はこだわっているんだ」としきりに強調していた。「シェアは力なり」という関本さんの言葉は、当時のNECのパソコンの広告にもキャッチコピーとして盛んに使われた。ユーザーへはその存在感を知らしめるとともに、「シェア争いの戦いに負けてなるものか」という社長としての強い思いを前面に出して、社内を奮い立たせたかったのだろうと思う。

 関本さんの話から、筆者は「力の結晶を象徴する言葉」に強い興味を覚えた。おそらく「ブランド」もそうだろうし、経営的には「利益」であり「株価」かもしれない。では個人の仕事の場合はどうだろう。当時、新聞記者で前線を張っていた筆者は、自らの仕事における力の結晶を象徴する言葉を考えた。出てきた言葉は「スクープ」。新聞記者にとってスクープこそが、すべての経験や技能、そして情熱の集大成だと考えた(もちろん誤報は論外だが)。この思いは今も変わっていない。こんなことを一生懸命考えさせてくれた関本さんに感謝している。

 関本さんに対してはいろいろな評価があるが、ここで評伝を書くつもりはない。ただ1つ、筆者の新聞記者時代のエピソードを書き記しておきたい。
 関本さんは1994年に社長から会長に就いた。交代のタイミングや後継社長人事を巡って、その頃よく関本さんのご自宅へ夜回りをした。交代前の2~3カ月は、いつも5~6人のライバル紙の新聞記者が、関本さんの帰りを自宅前で待っていた。5~6人もいると、いざ関本さんが帰宅して自宅前でぶら下がり取材をしても、みんな牽制し合ってばかり。いつしかスクープを取るというより、特オチしたくないという思いのほうが強くなった。

 そこで筆者はある日、いつものように数人の記者とぶら下がり取材を終えた後、30分ほどしてからまた関本さんのご自宅に訪れた。もう午後11時を過ぎていただろうか。関本さんは嫌な顔もせず、玄関口で応対してくれた。筆者は恥を忍んで思いの丈を話した。
 「うちは夕刊がないので、へんなタイミングで発表されると記事が間に合いません。どうかそのあたりをご勘案いただきたく……」

 もちろん、これはタイミングの話だけではなく、他紙にスクープされないようにお願いしたのである。それにしても何と不躾なお願いか。まったくもってみっともないサマだが、関本さんは筆者が話し終わると、こちらの顔をじっと見据えながら一言こう言った。
 「わかった。悪いようにはしない」
 結局、その数日後、トップ人事は共同会見の形で発表され、筆者はとりあえず特オチは免れた。

 筆者は今でも自分がテンバッたとき、このシーンを思い出す。みっともない話である。でも真剣にがんばっていた自分の感覚を思い出せる。当然、そのシーンは、関本さんの「わかった」と言ったときのキリリとした表情が刻まれている。
 

Isao Matsuoka

 今年の就職戦線はバブル期以来の売り手市場で、もはや企業のターゲットは再来年の就職予定者に向いているとか。そんなに景気が良くなったのか……。

 確かにIT市場をみると、とくにシステムインテグレーターなどは猫の手も借りたいくらい忙しいところが多い。とはいえ超売り手市場なので、「思うように優秀な人材を集められない」と嘆く企業の人事担当者が少なくない。それに、せっかく入社しても長続きしない新入社員の割合も増えているようだ。

 そこで今回は老婆心ながら、新しく社会人になる人たちに一言。
 まずは、めでたく入社した会社が、あなたにとって学生から社会人になる初めての登竜門。できれば最低3年くらいは、そこでガムシャラにがんばってみてほしい。

 就職は、人生の大きな分岐点の1つだ。最初にやった仕事が、その人のその後のビジネス人生を決めることもある。しかし、だからガムシャラにがんばれ、と言っているのではない。ひょっとしたら最初に入った会社で与えられた仕事が、自分に合ってないかもしれない。「私はこんなことをやるために、入社したんじゃない!」と叫びたくなるかもしれない。

 では、なぜガムシャラにがんばれ、と言うのか。どんな仕事にも共通した「基本」というものがあるからだ。それは礼儀をはじめとした社会人としての心得もあるが、大事なのは「仕事とは何か」を肌で感じることだと思う。何のために仕事をするのか。良い仕事をするとはどういうことなのか。それを学ぶことから「基本」が始まるのではないだろうか。

 さらにここからが核心。「仕事とは何か」を重く考えすぎると、現実の仕事とのギャップに悩み始めてしまう。そこで少々乱暴な言い方になるが、社会人に成り立ての頃は、そんなことすぐにわかるはずはないから、とにかく3年くらいは社員としての経験を積んでほしい。しかも与えられた仕事をガムシャラに。そうすれば「仕事とは何か」が少しずつ見えてくると思う。

 うまくいったことも失敗したことも、とにかく経験してみないと、その喜びや悔しさは本当にわからない。まずは与えられた仕事の中で自分に何ができるか、挑戦してみるがいい。
 新しく社会人になる人たちには、ぜひそうした「気概」をもって挑んでほしい。そうすれば、自ずと違う「景色」が見えてくるはずだ。

Isao Matsuoka

 東京都写真美術館で開催されている「世界報道写真展2007」を見に行ってきました。プロのカメラマンたちが、ある時は命をかけてまで撮った写真は、時としてその前に起きていたこと、その後に起きたであろうこと、その背景に隠されていることなども見せてくれる力をもっていると、あらためて痛感しました。

 約8万点から選ばれた今回の大賞は、紛争の中の日常を切り取った写真。イスラエル軍に爆撃されたベイルート市街を、赤いオープンカーで走り抜けるレバノンの若者たちの“場違い”な瞬間をとらえたものです。若者たちの、紛争とは無縁の表情が何とも印象的でした。
 私はこの写真を見て、自分の職業柄か、「これはまさしくデジタル社会をも風刺した写真だ」と感じました。デジタル社会を論じる時に、よくリアルとバーチャルの話をしますが、、この写真はそうした風潮をも凝縮しているように思えました。

 ちなみに、私はデジタル社会にリアルもバーチャルもないと考えています。あるのはリアルだけ。バーチャルがあるとしたら、それは人間の“勘違い”や“鈍感さ”(鈍感力ではなく)がもたらすものだと思っています。

 リアルとバーチャルの話をやり出すとややこしくなるので、写真展の話に戻しましょう。サッカー仏代表のジダンが、昨年のワールドカップ決勝でイタリア選手に頭突きしたシーンをとらえた写真もありました。ジダンがその瞬間、右手をグッと握りしめ、目を閉じているのが印象的でした。テレビでは何度も見たシーンですが、写真でその瞬間を見せられると、あらためて起こった出来事の重さを感じさせられました。

 プロのカメラマンたちが切り取った“一瞬”に込めたメッセージの数々……。いい刺激になりました。写真展は8月5日まで開催されていますので、よろしければ皆さんもぜひ覗いてみてはいかがでしょうか。

 最後にPRを1つ。本日、エンタープライズサイトにて「ITトレンドの眼」と題したコラムをアップしました。12日のアップに続いて2回目となります。こちらも私なりの眼で見たニュース解説を行っていくつもりですので、ご一読いただければ幸いです。

Isao Matsuoka

 今日の朝日新聞『天声人語』に、「感情労働」という言葉が最近聞かれるようになったとありました。自分の感情をひたすら押し殺して、相手に合わせた態度と言葉で対応するという厳しい自制心を求められる仕事のことだそうで、「肉体労働」や「頭脳労働」に並ぶ言葉だとか。その背景には、身勝手がはびこり、多くの人が「堪忍袋」の酷使を強いられている社会の歪みがあるようです。

 感情労働……この言葉を聞いて、ある中堅企業の役員を務めている友人がしみじみとこう語っていたことを思い出しました。
 「仕事ってのは、どこかの会社のキャッチフレーズにあるように“夢をかたちに”っていう気概を持ちたいもんだが、うちの実態は“無理をおカネに”だな。とりあえず、そこをなんとか、ってのが口ぐせになっちゃって……」

 これも立派な感情労働ですよね。でもこの中堅企業の仕事は、肉体も頭脳も酷使しているようです。結局、労働にはどれも欠かせないということでしょう。
 それにしても「無理をおカネに」って、思わず頷いてしまう人が多いのでは?

Isao Matsuoka

 富士通の黒川博昭社長が本日午後に開いた経営方針説明会で、「フィールド・イノベータ」と呼ぶ新しい人材を育成したいと話しました。フィールド・イノベータとは、お客さんとITベースではなく業務内容の話をきっちりできて、お客さんの要望する業務仕様を的確に落とし込める人材のことだと言います。

 この仕事、本来はSEが行っていますが、「IT化にあたっての業務の落とし込みやリスク管理に難点がある」という悩みはIT業界に共通するものでした。そこで黒川社長は、「富士通内部でそれぞれに業務経験を積んできた人材をフィールド・イノベータとして育成し、ITと業務の間にあるギャップを埋めたい」と言います。

 社長直々の指示ともあって、同社ではまず今上期中に100人程度のフィールド・イノベータを育成し、「ゆくゆくは富士通のマネージャークラスならどの業務部門でもフィールド・イノベータになれるくらいの技能を持つようにしていきたい」(黒川社長)とのこと。そして黒川社長は最後にこう言い放ちました。
 「ITの会社なんだから、これくらいのことはやらなきゃ」

 実は、筆者は最初、この話にピンと来ませんでした。おそらく説明会に出た記者たちもそうでしょう。ましてや経営方針として重要な話はほかにもいっぱいあったので、「フィールド・イノベータ」なんて陳腐に聞こえる話は、あんまりニュースにならないのではないかと思います。

 でも、黒川社長の最後のコメントで、ハタと気づきました。この話はひょっとしたら富士通の、いやSI業者のビジネスのあり方や企業体質を根本的に変えるものになるかもしれないと。営業、SE、CEに加えて、フィールド・イノベータが直接お客さんに接するようになるのです。おそらくBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)の話もそこから広がっていくでしょう。極端にいえば、今の会社での業務はフィールド・イノベータになるためのOJTかもしれません。

 フィールド・イノベータはITのプロというよりも業務のプロ。で、業務のプロとしてITをうまく利用する方法を知っている、しかもそれを顧客の目線で対処するという人材づくりが、IT企業としての富士通の狙いなのでしょう。そうだとしたら、それぞれの業務に携わっている人たちのモチベーションもかなり高まるかもしれません。
 まさしくSE出身の黒川社長らしい発想です。思惑通りに事が進むかどうかわかりませんが、注目したいと思います。

Isao Matsuoka


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松岡 功

松岡 功

『ITmedia エグゼクティブ』(アイティメディア発行)編集委員。ビジネスおよびマネジメントの視点に立ったIT活用を追求しています。

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