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IT業界を四半世紀見てきたジャーナリストのこだわりコラム

SI業界再編の予兆

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 伊藤忠商事グループのIT関連会社である伊藤忠テクノサイエンス(CTC)とCRCソリューションズが、10月1日付で合併すると発表しました。合併後の新社名は「伊藤忠テクノソリューションズ」で、両社の売上高合計は3,000億円規模となります。新聞報道によると、新会社は今後3年間で約100億円を投じてデータセンターを増設し、システムの設計・構築から運用管理まで一貫したサービスを提供できる体制を強化するとのこと。

 いよいよ始まったか――これが私の第一印象。何が始まったかといえば、システムインテグレーション(SI)業界の統合再編です。その必要性については、業界の間でかねてから声が上がっていました。富士通、日本IBM、日立製作所、NEC、NTTデータという大手5社を第一集団として、株式を上場している年間売上高1,000億円以上の会社が20社近く存在し、同100億円以上となると70数社にも及ぶSI業界。社数の多さもさることながら、業界の中でもかねてから指摘されているのは、産業自体のゼネコン的な多段階下請け構造によるさまざまな問題です。「丸投げ」しかり、「不採算案件」しかり、「プロジェクトマネジメント不在」しかり……。

 そんな折り、『月刊アイティセレクト7月号』(本日発売)の編集長インタビューに登場いただいた国産ソフトウェア会社の草分けで中堅SI会社SRAの鹿島亨社長がこう話していたのが印象的でした。
 「これからの大きな課題は、お客様から大規模なシステム案件を安心してお任せいただけるようにするにはどうすればよいか。そのためには会社の規模をもっと大きくする必要があります。でないと大規模案件については大手SI会社を介した二次受けになってしまう。多くの同業他社も事情は同じです。そんな状況もあって国内のSI業界は再編の必要があると言われて久しいですが、私は業界全体として大同団結を考える時期が本当にそろそろ間近に来ているのではないかと考えています」

 今回の「伊藤忠テクノソリューションズ」誕生の話は、伊藤忠グループ内での動きとはいえ、底流には鹿島氏の話と同じ危機感があるとみて間違いないでしょう。どんな業界再編が起こるのか、それで産業構造はどう変わるのか、しっかりと注目しておきたいと思います。

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