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男の裸は芸術か? 彫刻・絵画・写真における男の股間表現について真面目に取り組んだ美術評論

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書籍のタイトルは、『股間若衆』。ふざけているみたいですが、真面目な美術評論書です。最近、読んだ本の中では突出して面白かったです。美術作品における男性の股間表現は、芸術かと政府や固陋な美術会員との戦いであったのですね。明治から戦前の展覧会では、股間を表現してしまった彫刻に布を巻いたり、絵画でさえも布を貼って隠して展示したそうで、その実際に展示している不思議な光景の写真も掲載されていました。

古来より西洋でも、男性の全裸の絵画で、股間にイチジクの葉らしきものが付いているものに対して、あの葉はどのように木から落ちてきて、何故股間に貼り付き、そして落ちないのかと真面目な議論があったそうです。

この本で日本で男の股間表現のために戦ってきた(?)面子は、朝倉文夫、北村西望、黒田清輝、青木繁、東郷青児、細江英公、土方巽、三島由紀夫とそうそうたる方々。二科展のパレードや、まさか額縁ショーまで登場してくるとは思いませんでした。なんとなく話には聞いていた額縁ショー、それが何でどんな経緯で始まったのかがよく分かりました。(笑)

筆者の素朴な問いかけ「街中にある男性の全裸像は芸術品なのに、生身の人間が全裸で外を歩いていると警察がやって来る」で始まるこの本。確かに、言われてみればそうですよねえ。おまけに駅前によくある全裸像のタイトルって、「平和」とか「自由」とか「飛翔」とかいまいち彫刻本体との関係性が分からないですよねえ。

美術史の中のこれまであまり取り上げられて来なかった、だけどそうそうたる芸術家たちが挑戦しつづけてきた証がこの本にありました。裸体を扱った芸術作品の見方がちょっと変わるかもしれません。

股間若衆: 男の裸は芸術か股間若衆: 男の裸は芸術か
木下 直之

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