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なぜ僕らはToBeを目指せないのか?あるいは変革における心理的障害について

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変革プロジェクトを仕事にしているので、「変化に対する人間のネガティブさ」の強さには毎回驚く。
お恥ずかしい話ではあるが、変革プロジェクトをリードする仕事をしているウチの会社ですら、僕がなにか新しいことを言い始めると、ほとんどの社員の反応は冷ややかだ。本を書き始めた時、オフィスを作る時、ポッドキャストを始める時・・。

9割の会社はケンブリッジよりも変革に慣れていず、良くも悪くもちゃんとしているだろうから、新しいことへの反応は「冷ややか」を通り過ぎて「抵抗」が先に立つ組織も多いだろう。

僕は変革をリードする立場なので、ずっとこの問題に直面してきた。そして本当にいまさらなのだが、この現象の原因をもう少し解像度を上げた方がいい、と思うようになった。

変革への抵抗感の源泉
⇒A)変わることがイヤ
⇒B)AsIsとToBeを見比べた時、どうしてもToBeを良いとは思えない

変革プロジェクトについて書かれた文章には、A)について熱心に書かれている。
・そもそも人間は変化を嫌う生き物である
・自分の仕事がなくなることで、立場が危うくなるのを避けたい
などなど。

だが長年日本企業に入り込んで変革プロジェクトをやってきた肌感覚としては、A)の理由で変化に抵抗する人はごく少人数だと思っている(ゼロではない)。
そうではなく、ほとんどの人はB)だから反対するのだ。

もちろん変革を企画する側は、真剣に会社が良くなることを願って施策案を作る。そのベースにあるのは「ウチの会社、もっと〇〇の方がいいのに」というビジョンだ。
でもそれを聞かされた人は、どうしてもそれに共感できない。


僕自身はそのタイプではないのであくまで想像だが、良いと思えない理由は以下だろうか。


①そもそもToBe像(ビジョン)を想像するのは難しい
ピンとこないので、なんとなく悪く感じる。
厳密に言えば「イメージできないものをダメと判定する」のは理屈が通っていない。僕はアフリカの小国カーボベルデをイメージできないので、そこでの生活が良いか悪いか判定できない。それと同じはずだ。だが人間は合理的にできていないので、「ピンとこない⇒ダメそう⇒反対」となってしまう。


②真面目な人はめんどくさがる能力が低い
外部の僕らから見ると、とても非効率、めんどくさくて死にそう、という仕事も淡々とこなしてしまう人が多い。
先日も顧客の業務にべったり入り込んでいたウチのコンサルタントが「改善ポイントは事前にお話してくれた課題ではないことが多い。自分たちでは問題ではないと思っていた所が、外部から見ると非効率そのものだったりする」と言っていた。
つまり日本企業に勤めるほとんどの方はAsIsの仕事がそれほど苦痛ではない。なのでAsIsを良いものと認識している。だから「変化するなら悪くなる確率が高い」と予想してしまうのだ。
真面目な人はめんどくさがる能力が低い。

https://blogs.itmedia.co.jp/magic/2025/12/post_150.html
「めんどくせえ」を大切に、あるいは課題や施策の見つけ方


③過去の失敗
当たり前だが、人間にはもともと楽観性も備わっている。
だが、人生の各所でその楽観性をスポイルされて来た。例えば「今回勉強しなくても楽勝でしょ」と臨んだ定期テストで壊滅的とか。それは生き延びる上での知恵だと思うが、仕事において悲観的な人が多い。

特に、これまでその会社で実行された変革プロジェクトは大抵失敗してきたはずだ(変革プロジェクトの成功率はかなり低いので)。だとしたら「また業務をかき乱されるだけで、碌なことにならない」と思うのは自然だ。
(ちなみに僕もプロジェクトの先行きについてはかなり悲観的だ。プロジェクトを失敗させる罠が見えるので。上記とは違ってたくさん成功させてきたが)。


ということで、変革に抵抗する人々に「抵抗勢力」などとレッテルを貼り、敵対するのは最後の手段にした方がいい。彼らは私利私欲のために抵抗している訳ではなく、会社の為に「そのToBe像は良くないと思いますよ」と訴えているだけなのだ。

だとすると、変革プロジェクトで抵抗勢力を産まないためにやるべきことが見えてくる。

抵抗勢力対策a)
とにかく分かりやすくToBe像を表現すること。見たことないこと、やったことない仕事を正確にイメージしてもらうことに全力を注ごう。
・ビジネスマナーに沿ったスマートな表現
・コンサルタントっぽいカッコいい表現
とかは心底どうでもいい。とにかく分かりやすく。

抵抗勢力対策b)
変革の企画者(リーダーやプロジェクトメンバー)が、ToBe像をいきいきと、楽しそうに語ること。
人間は理屈よりも感情でまずジャッジする傾向が強い。頭で理解するのが本来難しいのだから、まずは「なんか楽しそう。重要そう。前のめりだな」と思ってもらうこと。頭での理解は後からでもいい。
(逆に、感覚的にダメそう、胡散臭そう、と思われたことを理屈で覆すのはほぼ無理)

抵抗勢力対策c)
AsIsのダメさをちゃんと示す。「ぐうの音の出ないFact」を突きつける。
・営業が新規契約に熱心過ぎて、既存契約の再更新を30%も取りこぼしています
・システム関連費用の90%が新規プロジェクトではなく、保守に使われています
などなど。「AsIsのままでいいんじゃない?」をキッチリと否定しておこう。
これはプロジェクトが進行した後になっても効いてくる。

抵抗勢力対策d)
僕はまあまあ根に持つ人間なので、物事が成功した時に「あんたら、いまでは当たり前の様に享受しているけど、始める時に冷ややかだったの、俺は覚えているからな」などと思っている。
が、そういう人々は記憶力に難があり、当初自分が懐疑的だったこと、非協力的だったことは覚えていない。だから次に新しい提案が来るとまた抵抗する。困ったものだ。
だから何かが良くなったら、それを必ず声高に誇るべきだ。これは謙遜を尊ぶ日本人のマインドに合わないので居心地が悪いだろう。
だが成果を正しく誇れないと、構造的に新しいことをやるのに後ろ向きの組織になってしまう。



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「プロジェクトを失敗させる55の罠」より、今日のテーマに関連した罠
罠6:現行踏襲を掲げる
罠15:制度や習慣をスクラップしない
罠19:野蛮さ不足

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関連過去ブログ

https://blogs.itmedia.co.jp/magic/2014/08/post-48e0.html
組織を変えたいともがいているあなたへ、あるいはぐうの音も出ない事実で勝負しろ

https://blogs.itmedia.co.jp/magic/2025/04/post_143.html
「現場と企画の乖離」がプロジェクトを失敗させる、あるいは没となった章を丸ごと載せる試み

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