なぜプロジェクト管理を学んでもプロジェクトは成功しないのか、あるいはケーキの工程管理について
僕の執筆における中心テーマは「変革プロジェクト」だ。
1冊目は実録ストーリーなのに「プロジェクトファシリテーション」というタイトルだし。
2冊目の「業務改革の教科書」はプロジェクトの立ち上げ方の本だし。4冊目はズバリ「変革プロジェクトの教科書」というタイトルだ。
そう言えば普段意識しないから忘れてたけど、このブログも「プロジェクトマジック」というタイトルだった。
なんだけど、僕はこれまで「プロジェクト管理」の本は書いていない。強いて言えば新刊「プロジェクトを失敗させる55の罠」はプロジェクトの失敗がテーマなので、「プロジェクト管理のB面」と言えるかもしれない。
正確に言えば「管理」以外にもプロジェクトを失敗させる罠はたくさんあり、ページ数はそちらのほうがずっと多い。でも「罠38 見積り大ハズシ」とか「罠48 管理過剰」など、プロジェクト管理についても数多く議論している。これらについてちゃんと本に書いたのは初めてだったりする。
なぜプロジェクト管理について書かなかったのか。
それはプロジェクト管理のノウハウを一生懸命学んだ所で、プロジェクトを成功させることはできないからだ。もちろん学ばないよりも学んだほうがいい。僕も学んだ。でもそれは決定打にはならない。
こんなことをつらつらと考えたのにはきっかけがある。
ウチの会社(ケンブリッジ)では結構有益なノウハウを無償のセミナーとして公開している。
めちゃくちゃ実践的な話をしているので、たくさんのファンが熱心に参加してくれるよ、という話は以前このブログにも書いた。
ウチらしいセミナーをやっていたら歩留がすごいことになったよ、あるいはありのままを見せることの意味
https://blogs.itmedia.co.jp/magic/2023/12/post_132.html
熱心に聞いてくれる方がたくさんいるので、いいコンテンツだという自信はあったのだが、せっかくなのでもうちょっと多くの人に来てほしい、と思ってマーケチームが色々と考えてくれて、タイトルを工夫することにした。「プロジェクトマネジメント講座」というシリーズタイトルを付けることにしたのだ。(ちなみに中身は基本的に変えてない)
例えば大昔に僕が「プロジェクトプランニング」というタイトルで始めたセミナーコンテンツは、途中何回か改題した上で、いまは
プロジェクトマネジメント講座(1)超上流・合意形成の勘所
というタイトルらしい。
いまも僕が講師をしている「システムを作らせる技術」の抜粋セミナーは
プロジェクトマネジメント講座(2)要件定義の手戻りをなくす
だ。
タイトル変わる時に「え?プロジェクトマネジメントなの?え?」と言ったんだけど、こういうのはコンテンツメーカーが中途半端に口を出すより、コンテンツ流通のプロに任せたほうがいいので大人しく従った。
それでですね。タイトルに「プロジェクトマネジメント」を付けたら、検索でセミナーを探している人に見つけてもらいやすくなったらしく、聞きに来てくれる人がめちゃくちゃ増えたんですよ。いやー、分からないものですね。ウチのマーケチームが良い仕事をしたということです。
このエピソードから僕が学んだことは「プロジェクトを成功させたいと思った人は、"プロジェクト管理"で検索するらしい」ということだ。
これは僕の「プロジェクト管理のノウハウを一生懸命学んだ所で、プロジェクトを成功させることはできない」という感覚とは大きくズレている。なので、多くの人がそうなんだ、ということに全然気づかなかった。
なぜプロジェクト管理を学んでもプロジェクトは成功しないのか。
それは「いつ、どういう状況の時に、誰と、何を、どれくらいの精度でやるか」がよく分からない状態、暗中模索の状態で、PDCA的な管理、つまり「ものごとが計画通りに進捗しているかチェックする活動」を一生懸命やっても不毛だから。
例えるならば、美味しいケーキのレシピを知らない状態で「ケーキが時間内、コスト内に確実に作られるか、工程管理をしよう」とかいっても仕方ないですよね。
工程管理よりも先に、卵をどれくらい泡立てる必要があるかとか、粉とバターの最適な重量とか、そういうのを知らないと。もしレシピがないなら見出す所からやらないと。
プロジェクトは初めてやる仕事なので、最適な進め方(ケーキで言うとレシピ)をほとんどの人が知らない。特に上流と中流(改革施策立案や要件定義やベンダー選定)はその傾向が強い。
つまり、ほとんどの人にとって、プロジェクト管理を学ぶのが早すぎるのだ。まず管理よりも先に「何をやれば前に進むのか」を勉強した方がいい。
とはいえ「とりあえずプロジェクト管理について勉強しなくちゃ」と考える人の気持ちは分かる。「お前がプロジェクトマネージャーやれ」と言われて、とりあえず目につくのはプロジェクト管理という知識領域だろう。プロジェクトマネージャーという名前なんだし。
あと、プロジェクトが失敗してばかりで悩んでいる人が「とりあえずちゃんと管理しよう」と考えるのも自然だ。
だから、そこそこプロジェクトの経験がある人も「プロジェクトについての知識≒プロジェクト管理の方法≒PMBOK」と思っている人も多い。でも進捗管理的なことをやっただけでは、プロジェクトは成功しない。
※もちろん広義のプロジェクト管理には「プロジェクト憲章を作る」という切り口で、プロジェクトゴールや計画を立案する要素が含まれている。とは言え、それへのアテンションは圧倒的に不足している。
まず、それらについて具体的に書かれたガイドが極端に少ない。発売から13年たった「業務改革の教科書」が未だに売れているのは、プロジェクト立ち上げの教科書が、他にほとんどないからだろう。
そしてプロジェクトマネージャーも、「何をどうやるか?を知っていて、メンバーに指し示す」よりも「予定通り進捗しているかチェックする」で頭が一杯の人が多い。かつての僕の様に。
管理より先に、まずは「何をすればいい?」について書いてある教科書を読んだほうがいい。
完全に手前味噌だが
「業務改革の教科書」
「リーダーが育つ 変革プロジェクトの教科書」
「システムを作らせる技術」
の3冊を読めば完璧だ。
なお3冊合計で1000ページを超えているので、読書が苦手な人はUdemyで僕が喋っている「変革をリードするシリーズ」をどうぞ。もしかしたらこの講座も「プロジェクト管理」というタイトルにした方が視聴者が増えたのかも・・。
***********************新刊「プロジェクトを失敗させる55の罠」情報
初稿を書いてから丸1年というナゾ過ぎる出版準備期間を経て、ついに8/27に発売されます。
※画像はカバーの校正メモ
