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良いトラブル対応、あるいは悪いトラブル対応

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今日は、1年やってきたプロジェクトのサンせットミーティングをお客さん、ソリューションベンダーさん、ケンブリッジメンバーが参加して(まる1日かけて)やっている。

・これ良かったから、次のプロジェクトでもやろう!
・これはうまく行かなかった、どうすべきだったか?
・あなたの一言に救われました!
みたいなことを議論したり意見交換する場だ。

今回はプロジェクトをやってきて、
・驚いたこと
・楽しかったこと
・つらかったこと
・現時点でまだ不安なこと
の4点をまず全員でリストアップしたのだが、面白かったのは
「トラブル対応や課題解決でわくわくした」という意見がたくさん挙がったことだ。

結構チャレンジングなプロジェクトだったので走りながら計画を作るような状況もあり、それなりに厄介な課題は発生した。でもいがみ合うこともなく、関係者全員で課題やトラブルに立ち向かえた。「これって普通のことじゃないよね」と、なぜうまくいったのかを議論をしてみた。
議論の最後に「良いトラブル対応、悪いトラブル対応」をスクライバーがまとめてくれたので、見て欲しい。
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【良いトラブル対応】

★トラブルってあるよね!
プロジェクトは難しい。
初めてやるチャレンジ、初めて集うメンバー、(時に)無茶なスケジュール。だからプロジェクトをやりながら、やっつけるべき課題が次々と起こる。そう最初から覚悟を決めるべきだ。
後で述べる「悪いプロジェクト対応」になってしまう根本には、「仕事なんだからミス無しが当たり前」という考え方がある。それはプロジェクトワーク素人のセリフだ。そんな訳ないじゃん。


★「ほほう、そう来たか」
僕は10年くらい前からこの作戦を採用している。
問題が発生した、進捗がヤバい、などなど、ネガティブな報告を受けた時に、何はともあれ「ほほう」とつぶやくのだ。
これについては前にブログに書いたことがあり、簡単に言うと「冷静に対策を考えられるようになれる」ということなのだが、もう1つ書き忘れたことがある。


それは部下からのヤバい報告を「ほほう」と言いながら聞くと、部下が報告しやすくなるのだ。悪い報告、トラブル発生の報告って嫌ですよね。怒られるから。だから遅くなる。そうしている間に傷が広がる。
それを防止するリーダーの態度は、プロジェクトを成功させる上で極めて重要なことだと思う。


★まず解決!
問題が起きたら「誰がやったんだ」「なぜそうなったんだ」と過去をほじくり始める人が多い。だがまずは目の前のトラブル、プロジェクトにブレーキをかけている課題をなんとかしましょうよ。今この瞬間にも血が流れているのだから。


★みんなで可視化することで解決に向かえる
トラブルって仕事と仕事の狭間で起こることが多い。プロジェクトを停滞させるような厄介な課題も大抵はチームをまたぐ課題だ。
だからそれを解決するときには、
・なるべく関係者みんなで
・課題の有様を書き出す
ことから始める。

十分情報が集まるだけでもすぐに解決できることは多い。
「状況が絵に描けた≒構造化できた」となって、解決策がすぐに見つかることも多い。
みんなでホワイトボードを見ながら、自分が知っていることを出し合っていると、「自分 vs あいつら」ではなく「僕ら vs 課題」になっていく。
そうして暫定対応⇒恒久対応と進めていけばいいし、「そもそもなぜこのトラブルが起きてしまったか」という問いは、恒久対応のときまで寝かしておいても問題ない。



【悪いトラブル対応】
日本の大企業、特に製造業の人々は
・トラブルはあってはならぬ
・一度トラブルが起きたら徹底的に原因追求して、徹底的に原因を潰しこむべき
という仕事感を叩き込まれている方が多い。

多分こうして欠品をなくし、歩留まりを良くし・・・という地道な努力が日本の製造業の隆盛を支えていたのだろう。だが本質的に不確実性にまみれた仕事であるプロジェクトに、このスタンスを持ち込むと害が大きい。


★課題解決より糾弾
悪い報告を受けた時に怒る上司、あなたの周りにいませんか。そこまでいかなくても露骨に機嫌が悪くなるとか。これ、やっちゃいけないんだけど上司も人間だからやりがちなんだよね・・。
そして始まる「なぜを5回問うて真の原因を探せ」的な追求。真面目なだけに始末が悪い。
挙句の果てに、課題の解決を助けてはくれない「それを考えるのがお前の仕事だろう」とかいって。一番困っている時に助けることこそが、上司であるあんたの仕事だろう、と逆に言い返したい。


★悪い報告の遅れ、そして隠蔽
こうしてまずいことが起きた時に、それを解決する能力や権限をもつ上司のもとに報告は届かないようになる。「悪いトラブル対応」どころか、一切の対応ができなくなっていく。問題発生に気づけないから。


ということで、仕事の基本中の基本である、「トラブルや課題が発生した時にどう対応するか?」について、極めて基本的なことながら意外とできていない様子を見かけるので、解説してみました。



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サンせットミーティングについてはこの本で1章かけて説明しました↓

リーダーが育つ変革プロジェクトの教科書
白川 克
日経BP社
Comment(2)

コメント

iso

超基本な質問
なぜ「悪いトラブル対応」するやつに限って上司なんでしょうか?確率論でしょうか?
悪い上司を避ける術などプロパーもましてや中途入社など避け得るわけなどない以上、ババを引いたらどうすればいいんでしょう?

ってテーマのお話も以前有りましたよねw
結局、心理的安全性がない職場は小手先の施策ではどうにもならんということで・・・

isoさん、こんにちは。
避ける方法は難しいのですが、なぜ悪いトラブル対応をする上司がいなくならないのかは、以下で説明できると思っています。
1)自分がされたマネジメントスタイルを受け継ぐ
本文に書いたように、こういう対応をする人は結構良かれと思ってやっています。全体として結構優秀で真面目な人にも多いです。
そもそも、こういうマネジメントスタイルを見て育ってきて、それが正しいと思っているのです。だって「ちゃんと原因を追求する」って9割正しいですから。
2)リーダーシップについて教育されていない
そうやって見よう見まねで人の上に立っているものの、きちんとリーダーシップ教育をされている人はほとんどいませんよね。
この記事で取り上げた話は、「眼の前の仕事を速く正しくやる」とは少しゴールが違っていて「健やかな組織を作る」という話です。後者が中長期的に重要ですよ、ということを教えないと分からない人が多いのに、教えられていない。

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