コンサルタントの限界、あるいは結局プロジェクトの成否はクライアントが握っているという事実
昨日の晩は恒例の水曜夜セミナーだった。で、プロジェクトについてのQAコーナーには多くの質問が寄せられた。その中に
私はSIer、つまりシステム構築をする側の立場の人間なのですが、プロジェクトをやる際、お客さん側の主体性、改革しようという意欲がなくて困っています。
引き出す工夫などありませんか?
という質問があった。
僕は思わず本音で、かなり身も蓋もない回答をしてしまった。
「そういう状態、よくありますよね。
で、そういう状態でプロジェクトを始めても失敗します。
でも、僕は何とかするのを実は諦めています。何かを変えよう、良くしたい、と本気で思っていない人達に対して、
コンサルタントが改革を煽っても、いいことありませんよ。
それでも相談には来てくれる訳ですから、思うところはある訳で。
それが整理され、主体性が高まるのを待ちます。」
ああ、身も蓋もない。
「そんなこと聞いてんじゃねぇよ」という、質問した方のツッコミが聞こえるようだ。
でも、本当にそうなんだよね。
マキャベリ「君主論」から名言を引いてみよう。
聡明な君主でなければ、助言者を活用できるわけがない。
さすがマキャベリ様。簡潔に言い切っている。
君主が暗愚でも参謀が優れているから成功するなんて、あり得ない。
クライアントがしっかりしてなくても、コンサルタントが優秀だから成功するなんて、あり得ない。
僕はコンサルタントだから、これを認めることに敗北感を覚える。
結局コンサルタントっていてもいなくても同じってこと?と思わなくもない。
でも、本当のことだ。
コンサルタントがいくら助言をし、一緒に汗をかきながら正しい方向に進みましょうよ、と訴えても、クライアントが同意してくれなければ、進めない。
コンサルタントがいくら業務改革をしましょうよ、と訴えても、クライアントがその気にならなければ業務改革をやり遂げる事はできない。
(そんな状態でも、間違ってプロジェクトが始まってしまうことはあるので、厄介なのだが・・)
実際、僕らと一緒にプロジェクトを大成功させてきたクライアントさん達は、素晴らしい方々だった。あの方々だからこそ、あそこまで達成できた、としみじみ思うことも多い。
とは言え、もちろん「主体性があって、目的意識が高く、目指すゴールが見えているスゴイ人とだけプロジェクトをやります」と言っている訳ではない。
というか、本当に最初からそんな感じだったら、コンサルタントなんて使わなくていいだろう。
だから実際には、迷っている方の相談に乗りながら状況を整理していき「やっぱ、やらんとイカン」と腹をくくるお手伝いをする。今がどれだけマズイのか明らかにし、プロジェクトをやれば良くなるかどうかをぼんやりとでも見極めようとする。
でも、そこまでやって「後は腹をくくるかくくらないか」という段階になったら、あとはその人次第、その会社次第なのだ。コンサルタントができる事はほとんどない。
そして、その段階になって腹をくくれない会社が変革プロジェクトに取り組むと、悲惨な結果が待っている。僕がQAコーナーでの質問に対して言いたかったのは、そう言うことだ。
ところで、うちの会社はプロジェクト成功率が高いことを売りにしているので、「どうしてそんなに成功率が高いんですか」という質問もよくされる。
もちろん、それについては本が5冊くらいになるのだが、1つ、身も蓋もない話がある。
それは、「うちの会社が頑張っても成功しないプロジェクトには参加しないことにしている」ということだ。ああ、身も蓋もない。
でも、世の中にプロジェクトは沢山ある。
a)ウチの会社が支援しなくても成功できるプロジェクト
b)ウチの会社が支援すれば、何とか成功できるプロジェクト
c)ウチの会社が支援しても、成功できないプロジェクト
の3種類があるとしたら、まずは全てのb)を成功に導きたいと思う。
それだって充分難しいし、もし出来たとしたら、偉大な達成じゃないですか。
c)について考えるのは、それが出来てからでいい。
それがいつの日になるかは分からないけれども。
※セミナーはシリーズ物なので、今後もまだまだ申し込み受け付け中です。
興味のある方は是非。水曜夜@東京です。