新たなトップレベルドメイン名の申請受付がついに開始
ついにこの日がやってきました。
ドメイン名を初めとするインターネット資源の管理を行うICANNが、新たなgTLD(分野別トップレベルドメイン名)の申請受付を開始しました。UTC(国際協定時)の2012年1月12日の午前0時、日本時間だと、午前9時なので、ほんの数時間前です。JPNICのWebでも、トピックとして取り上げました。メールマガジンJPNIC News & Viewsでも少し詳しい記事にまとめて、(同日13:30の進展)もうすぐ送信済み、という段階です。同記事をWebにも掲載しました。こちらもご参照下さい。
昔からあった .com , .net , .org を初めとして、2000年以降今までに追加されたものを加えて現在21に上るgTLDに対して、新しいgTLDを設けるのが、今回の募集です。
2000年以降、2回にわたって14個のgTLD(代表的なものは、.info , .biz , .asia あたりでしょうか)は、一定の基準や手続きが決まってはいたものの、いわば、手探りでソロリソロリと追加した感じでした。今回は予め基準や手続きを明確に定め、それを申請者ガイドブック(350ページに渡る巨大なドキュメントです)に記述し、プロセスや審議機構(目的別に複数あります)、不服申し立て機構を構築した全体を、「新gTLDプログラム」として整備しました。これらの基準を満たしプロセスに正当に従ったものなら、好きな文字列のTLDを準則的に追加することになっています。従って、今まで手探りで追加した数とは桁違いの数百というオーダーの新gTLDが応募され、追加されることが想定されています。
ありがちな捉えられ方として、「ほんじゃ、.maem とか好きな文字列をTLDで取れるってことね?」というものがあります。確かに準則的に好きな文字列を取れると言うと、そういうイメージが付きまといますが、TLDの新設は単にその文字列を使うと言うことではなく、その文字列のTLDをレジストリとして運営し、広く(そのセカンドレベルのドメイン名の)登録を受け付けて管理することを意味しますので、簡単ではありません。
ICANNやドメイン名関係者にとっては、非常に長いプロセスでした。このような準則的なgTLD追加を行うポリシーが決まったのは、2005年12月。ポリシーの詳細が固まり、実装検討に入ったのが2008年6月ですが、申請者ガイドブックのドラフトの版数は8版に上り、2011年6月に申請受付開始の期日が本日2012年1月12日と決まった後にも、まだまだ懸念が消えず議論が続きました。最終的にICANNのCEOが「準備OK」とアナウンスしたのは、先週、1月6日でした。
桁違いのgTLDが新設された後のインターネットの風景は、まだ誰も知りません。IPアドレスの管理からこういう業界に入った僕にとっては、上の画像に出てくる .thing という文字列は、物もインターネットにつながる Internet of Things を連想させ、それに必須と言われ従前に比べ広大なアドレス空間を持つIPv6を連想させます。
IPv6であらゆるモノがつながるインターネットに、いろいろなイノベーションが予感されるのと同様に、ドメイン名という識別子もTLDにおける自由な文字列空間が、インターネットの新たな使い方を切り開く可能性はあるだろうと思います。一方で、今ある21のgTLDの中でも、一般的に知られているものが限られている現状を見るに付け、また、自由な文字列空間が、それに意味や商標権をはらむことを考えるに付け、まだ見ぬ難しい問題を突きつける可能性も見過ごせないだろうと思います。
いずれにしても、インターネットの新たなとびらを開いた、新gTLD申請受付開始です。とびらの向こうに何があるのか、今から少しずつ見えてくるのでしょう。