海外では若年層のSNS利用に対する規制が始まっています。日本でも一部地域で同様の動きが見られます。私が、最近とりわけ強く感じるのは、フォローした人の投稿がもはやタイムラインに出てこないということです。
例えばスレッズでは、猫の投稿を楽しんでいた私の画面が、ある日ドラマの感想を書いた途端、その話題ばかりに変化しました。SNSのアルゴリズムが「あなたはこれが好きでしょう?」と判断した投稿に加え、位置情報や全体の閲覧トレンドを考慮した投稿が次々と表示されます。そこには、フォローしている友人の近況も、行きつけの飲食店の情報もほとんど出ません。タイムラインはドラマ、知らない誰かの感情的な投稿、短時間で大量の「いいね」を獲得したと思われる勝手にコピーされた面白画像や根拠の薄い豆知識、AIで作成したと思われるお役立ち情報(ちょっと待って、とかゾッとした、で始まる投稿の多いこと!)、そこに、LINEに誘導する投資詐欺話が時々挟まる感じです。
だいぶ昔ですが、私は「ブログは友人の近況を知り、知らない人が提供した有益な情報にアクセスするためのツールである」と趣旨の論文を書いたことがあります。でも、ブログ転じて現在のSNSは、暇つぶしには最適であるものの、友人の近況もわからず有益性も低い内容をエンドレスに提示し続ける依存性の高い装置へと変貌しつつあります。アルゴリズムがレコメンドを止めることはなく、SNSを開けば終わりがなく、多くの時間が吸い取られていきます。
今のアルゴリズムは「勝者総取り(Winner takes it all)」構造を生み、瞬間的に注目され伸びた話題を一気に増幅させます。結果として、注目を集めた人が得をします(アテンションエコノミー)。関心を持たれたらアクセスが伸びるので、ネガティブに受け取られかねない、危うい過激な投稿、煽るような投稿を行なって炎上させる手法も出てきています。
昔、炎上を防ぐ方法なども書かれている「CGMマーケティング」(今で言うUGCですね)という本に編集協力しました。当時は、あえて炎上させる時代が来るとは、思いもしませんでした。
同時に、アルゴリズムはユーザーの興味に合わせて情報を「過度に」最適化します。「あなたはこれが好きなんですよね?」とばかり、閲覧時間が長かったり、クリックしたりしたものを次々と表示させていきます。
勝者総取りと過度の最適化。この二重構造によって、多様な声は沈んでいくだけでなく、あちこちで小さな盛り上がりが蛸壺化し、互いに交わらなくなります。結果として、興味の有無に関わらず、本来知るべき、知らせるべき情報が届きにくくなり、情報の届け手も受け手も受難の時代を迎えています。社会全体の情報循環がじわじわと弱っていっています。
こうした状況を見ると、規制されなくても、SNSがどう変わったのかは認識しておく必要があります。
そして、皆が同じ情報に触れられる従来型のマスメディアの存在が、改めて欠かせないものになりつつあります。印刷された新聞の紙面は、人によって違うものにはなりません。皆が同じ記事を読むことができます。
アルゴリズムによる最適化が進むほど、社会に共通の基盤をつくるマスメディアの価値はむしろ増しているのかもしれません。
皆さんはどんなふうに情報を入手していますか?またSNSの構造が大幅に変わっていることを認識しているでしょうか。私は、新聞を読むことが増えました。また、メールの頻度と、人に会う頻度が高くなってきました。人とのつながりを維持するためには、SNSでは難しくなっているのです。
加藤 恭子
2026/01/29 11:22:32