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[書籍]ソーシャルメディアの利用者を理解したいマーケターにも!「ツイッターの心理学」

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書籍「ツイッターの心理学ー情報環境と利用者行動」を著者の1人である佐々木裕一氏から頂き、少しその内容について書きたいと思います。

個人的にはネットの研究者だけでなく、最近話題のデジマ(Digital Marketing)に関わる人や、ネットで新サービスを生み出そうとしている人たちにも手に取ってもらいたいと思いました。ビジネスの現場では、どうしてもツールの使い方や小手先のテクニックといったものに関心がいきがちですが、情報の受け手がどう感じているか、どんな行動をとっているのか、その行動が何故起きているのかを知っておく事が非常に重要だと感じるからです。カスタマージャーニーを考える際にも重要な情報ですよね。

もし「え?今更ツイッターですか?これから新たに流行するサービスの事が知りたい!」と思った人がいたら、言いたい事があります。実はこの本での題材はツイッターなのですが、この本を読むとツイッター登場以前、ツイッター登場後のオンラインコミュニケーションについても理解が深まるようになっているのです。

この本は「ツイッターを題材にソーシャルメディア時代におけるオンラインコミュニケーションを考察し、そこからウェブの現在と将来を論じる」とあるように、「ツイッターの心理学」というタイトルになっていますが、ここで筆者がやりたかった事はオンラインコミュニケーションの考察です。そして心理学とありますが、どちらかというと社会心理学やコミュニケーションの領域を扱っているように思います。

この本の構成

序章では主要な事象や先行研究の引用を通じて、過去から今までのオンラインコミュニケーションについておさらいをしています。私はパソコン通信の終わりの頃からリアルタイムで体験している世代なのですが、20代、30代の人にとっては、知らない世界かもしれません。この辺りを遡っておくと、今のソーシャルメディアで起きていることが更に理解しやすくなります。

第1章では、ツイッターの歴史も含めた基本に触れ、第2章ではツイッター上のネットワークの理解を深める章になっています。ここでも数多くの先行研究が引用されています。

第3章と4章では、ツイートとリツイート(転送)の理由を、テキストマイニングを用いて論じています。

つぶやきの理由や意図は7つのパターンに分かれ(105ページ)。自分の成果についての「自慢」関心を自らに向けてもらうといった側面も見られます。
公式RTの意図は6つに分類されており(138ページ)、詳しくは読んでもらいたいのですが、最も大きな情報伝播力をもつ「感情」と「面白さ」というキーワードは非常に興味深いものでした。

第5章ではツイッターによる情報受信を取り上げています。ここから情報の「受け手」の話になります。マスメディア接触とツイッター受信の関係などが紹介されています。読まれている内容の因子分析では、「公共情報」、「趣味・娯楽情報」、「友人・知人情報」と解釈される3因子構造が得られています。

第6章では情報過多について論じています。人間の情報処理能力を超えた情報過多に対して人が取りうる対策について考える章となっている。ここではフォロー外し(アンフレンド)やツイートを転送してもらうにはという方法まで触れられています。

終章では、ツイッターに留まらず、これからのソーシャルメディアにおける論点について議論しています。

この本で用いられている主な調査

この本で用いられている主な調査は4つあります。1つは2013年8月に実施の第一調査(オンライン調査)。対象は何らかの機器で週1回以上ツイッターを利用する20-39歳の男女が対象で有効回答数は1559(趣旨に同意してもらいツイッターIDも回答してもらっています)。2つ目は前述の調査に協力した1559人のうち812人から回答を得たパネル調査(調査対象を長期間固定して継続的に行われる調査)です(2014年1月実施)。
これら2つはツイッターの利用実態を調べるものでした。


そして3つ目、4つ目の調査はそれぞれ2014年7月、11月に実施したツイート、リツイートの動機を知る為のもので、それぞれの有効回答数は512、730でした。

この本のいい所

SNSを中心としたものだけでなく、SNS登場以前のパソコン通信やWeb日記などの時代(当時はCMC:Comuputer Mediated Communicationなどと言われていたと記憶しています)のオンラインコミュニケーションに関する主要論文がほぼ網羅的に引用されています。海外のものも含めて、かなり綿密に調査されています。私が勉強不足なのかもしれませんが、ここまできっちりと過去の論文に当たっているものは少ない気がします。他の論文を踏まえた上でどうなのか、ということが語られています(これは当たり前のことなのですが、きちんと行われていない論文もあります)。また、ネットのコミュニケーションを語る上で知っていて当然の用語も網羅されているので、頭の中も整理出来ますし、ビジネスの場でネットで起きている現象を説明する時にも、非常に説明しやすくなります。インターネットパラドックス、利用と満足、もしそんな言葉を聞いた事がなければ、読んでおいて損はありません。

個人的には、私はいろいろな思いを持って読みました。自分自身が論文を書く時に参照した懐かしい論文が頻出していたからです。私自身が大学院の博士課程にいた事があり、残念ながら仕事との両立がうまくいかず、休学した後に退学してしまいました。その在学時にツイッターやブログ等、オンラインコミュニケーションに関して研究をしていました。(例。PDFが開きます)。その時に参考とした文献に再び出会う事が出来、いろいろな記憶も蘇ってきたのでした。

まだざっくりと目を通したレベルなので、この夏の課題図書の1つとしてじっくり読んでみたいと思います。貴重な本をありがとうございました。

ツイッターの心理学:情報環境と利用者行動
ツイッターの心理学:情報環境と利用者行動 北村 智 佐々木 裕一 河井 大介

誠信書房 2016-07-15


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