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顧客を創る

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一番になる

一番のお店と二番以降のお店では、買う側にとって大きな違いがあります。このことはなにもお店に限ったことではありませんし、「お店」の部分を「商品」や「サービス」に置き換えても同じことが言えます。また、一番店という言い方は、多くの場合売上規模が大きいことを指しますが、重要なのは、自分達が好かれたいと思う顧客にとって、ディスティネーション・ストアになっているか否かです。

ディスティネーション・ストアとは、人が何かを買おうと思った時に、最初に思い描く店のことを言い、商品やサービスについても同じことが言えます。メーカーの立場からは、最初に思い浮かぶ商品(ディスティネーション・グッズ)であって欲しいと思うはずです。店や商品やサービスのディスティネーション化は、顧客の支持が得られていることを意味するからです。

ピーター・ドラッガーは「ビジネスの目的の正当な定義はただひとつ。顧客を作り出すことである」と言いました。この言葉に倣えば、こういったご贔屓いただける顧客が何人つくれるかが業績を左右する訳ですから、一番大切な指標になるべきです。

私はコンサルタントとして多くの企業のビジネスパーソンと議論する機会がありますが、多くのビジネス現場では何が何個売れたかという「商品視点」ではよく論議され評価されていますが、販売実績を形作る実質的側面である「顧客視点」で語られることは、意外にも多くはありません。

例えば「御社の商品をご支持くださっているお客様はどういったお客様ですか?」といった質問に対して、想定ではなく事実に基づいて正面から答えられる企業の方はあまりいません。更に「どういったお客様に支持されたいとお望みですか?」との質問に対して具体的な顧客層の特徴で答えられる方も少ないというのが実際の所です。

日々生活者であるお客様と接している小売業でも答えに窮する訳ですから、直接顧客と対峙しないメーカーやサービス業の皆さんは、顧客接点が少ない分だけ、尚更顧客を理解するということは困難です。

しかし、ご支持頂ける顧客像なしに商品つくりに取り組んだり、マーチャンダイジング(品揃え)をしたり、販売促進をすることは無謀に近くないでしょうか。

ほとんどの企業が「顧客第一主義」「お客様のために」といったお題目を掲げています。確かに、お客様のために仕事をしているのだと思いますが、お題目をお題目で終わらせないことが、実は業績を飛躍させる本質であるはずです。

日本のプロ野球とアメリカ大リーグの顧客創出

ここに面白いグラフがあります。このグラフは日本のプロ野球と米国のMLBMajor League Baseball)の売上推移を表したグラフです。25年くらい前は双方の差はそれほどのものではありませんでした。しかし、日本のプロ野球の売上はほぼ平行線ですが、MLBは大きく売上を伸ばし、現在では愕然とするほどの差が開いてしまいました。

日本のプロ野球とMLBとは1試合当たりの観客数はそれほど変わりません。しかし、収益の成長度合いはグラフのように大幅に違います。双方の違いはどこにあるのでしょうか?

その理由を探るため、大リーグでは何がなされてきたのかを整理してみます。

図1.jpg

私は米大リーグが力を入れてきた日本と異なる点は、大きく3点あると考えています。

  1. 大リーグ(または球団、選手)ともっと関わりを深く持ちたくて、もっとお金を払いたい人を充足する仕組みをつくった。
  2. Twitterなどのソーシャルメディアを使って話題作りを行なった。
  3. 放映権を世界各国に販売してきた。

1.はCRMの発展版です。日本との違いは、ファンをそれぞれ個客として捉え、個客との関係性を築いていこうとしている点です。

MLBは顧客全員を平等に対応するのではなく、より多く費用を払う人には、よりレアで他にはない経験を提供してきました。例えば、通常の数倍の価格の座席を連続して購入すると選手のサインボールがもらえるといった具合です。

さらに、試合が終わった後では、ご贔屓の選手から「○○さん、今日は応援に来てくれてありがとう。大きな声援のおかげでツーベースヒットを打つことができました!チームの勝利に貢献できてなによりです。次回の試合も応援よろしくお願いします!」といった内容のメールが届きます。こういう経験をした顧客は、応援したいという気持ちが増し、球場に足を運ぶ機会が増えていきます。

顧客をマスで捉えるのではなく、個で捉え、よりレアで貴重な経験をしたい顧客を尊重し、彼らの要望に応えることで自らの価値を高め、収益につなげている訳です。

また、ICTを活用するという意味では、日本では内野席Aゾーンは幾ら、Bソーンは幾らとゾーンでプライシングされていますが、大リーグではダイナミックプライシングと言ってAIにより観客数の多少を予測し、観客の多い日や良い場所のシートは高く、その逆の場合には安くプライス設定がなされています。もちろん、ゾーンで価格が同じなのではなく、個々の席により価格が異なっています。

この事例では、ロングテールで言う「ネック」の部分に当たるロイヤル顧客により厚いサービスを提供し、1人当たり売上金額を上げることで収益力をつけています。自分たちの魅力を魅力と感じる顧客に、より好かれる努力をしているわけです。やみくもに顧客を増やすことよりも、顧客を育成しご贔屓頂ける顧客を多く持つことに注力して営業成績を上げています。

客数神話から抜け出せず、客数を増やせば数字はついてくるという日本的発想は、人口が減少し市場も成熟化していることからも、そろそろ限界にきています。

2.のTwitterは、拡散を狙ったいわばSNSをマスメディアのように活用しています。

これは例えば、街の通りから見える場所にDJブースをつくり、外から中が丸見えになるようにしておきます。そこにDJとファン数人を入れて、球団や選手が如何に好きなのか、どういう所に惹かれるのかなど自由にしゃべって貰います。そこに好きな選手がサプライズで登場します。そうすると街ゆく人たちがファンの興奮した姿と嬉しそうな選手との交流を目のあたりにすることが出来ます。

彼らは、その場でTwitterなどのソーシャルメディアを使って、いまどこどこのスタジオに大リーグ選手の誰々がきていることや、彼が普段は聞けないエキサイティングな裏話をしているといった内容を拡散します。選手もマスメディアではない気楽さから、普段感じていることや新聞には載らないようなことを気軽に話します。こういった希少価値が楽しくも面白く多くの人のこころをかき立てます。更に、それを見た人がまたつぶやくので広く拡散していきます。

この事例から私たちが学ぶべきは、直接的であっても間接的であっても、情報に価値をつけることです。1.のお金を払いたい人を充足する仕組みつくりは「経験価値」を高めるためであり、2.のTwitter活用事例は「情報価値」を高めています。

日本でもCRMを導入されている企業も多く、顧客を個で捉えることもできます。しかし、ポイントを付けるためのCRMなのか収益をもたらすためのCRMなのか発想が異なり、それ故にICTの活用方法も違っています。私たちに必要なのは、情報価値が収益を生む源泉にするというように発想を転換していくことです。

価値を高めることでWTPWilling to pay)をつくる

このように、情報に価値を付けて、他では味わえない至極のサービスを提供することで深いリレーションを創るというのは、良く考え計算されている施策ではないでしょうか。人は価格よりも価値の方が高いと感じれば値打ちがあると思い、喜んでお金を払います(このことをWTPWilling to payと言います)。そろそろWTPを目指したCRMを志向する時期に来ているのではないでしょうか。

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