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ソーシャルメディアをWeb解析の視点から捉え直す

Web解析のメリットは、施策に優先順位をつけられること:オルタナMTGご報告

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このブログは、ITmedia オルタナティブブログ(オルタナブログ)というメディアブランドに属しています。オルタナブログには月に一度、ブロガーの1人が講師となって他のブロガーの方の前で話をする定例MTGがあります。12月9日に、そのオルタナブロガーズ定例MTGで「一人で回せる!ブログメディアのPDCA!~アクセス改善60分1本勝負!~」というタイトルでお話しをさせていただきました。

概要

ブログは色々と使い方がありますが、「なんらか伝えたいテーマを絞って、読者を像として描き、そこに届けるための使い方」、いわゆるメディアとしての使い方をしたときに、どういったPDCAの方法があるのか。グラフカタリストを例に、Plan~Actionまでを1時間でやってみようという趣旨でお話ししました。

PDCAというとそれこそ手垢が付きまくった用語ですが、Web解析はこの「C」の部分にのみ用いられるものだと思われているケースがあります。ところが実際にはPlanからActionまで、Web解析の知識や経験は幅広く活かせるものですし、むしろそれらがないといけないケースもあると思っています。ブログという身近なツールを例に、Web解析をベースにした考え方がどこでどう生かせるのかを、理論だけではなく実際の計画や運用、Google Analyticsのデータなどを見ながら肌で感じていただければ、と思ったのがこのテーマを選んだ背景です。

簡単に内容をご紹介させていただくと……。

1.目標の設定

ブログを船に例えると、目標値を決めることは航海の目的地を決めることに等しいわけです。Google Analyticsを始めとするWeb解析ツールは、地図を見ながら船の動きを修正するためのコンパス。けれどたまに地図を持たずにコンパスだけ持ってしまうケースがある。ということでまずは目的(目標値)を決めましょう。グラフカタリストは「月間3万PV」という目標値を掲げていたりするので、それをいったんのゴールに設定します。

2.コンテンツの設計
ブログ=船の例えをひきずると、地図とコンパスが手に入った後必要なのは、船を進めるための燃料(コンテンツ)です。燃料について考えるべきことは2つあります。1つは以下に多くの燃料を用意できるか。もう1つはいかに効率的に燃料を燃やせるか、です。

燃料を多く用意する、つまりブログの更新頻度をある程度確保するにはどうすればよいか、ということになります。グラフカタリストの場合、コンテンツの方向性は基本的にカテゴリによってコントロールしています。基軸となるカテゴリを設定し、エントリはそのいずれかのカテゴリにかならず属するようにしています。カテゴリの決め方は、清水誠氏による以下のマトリックス法を用いました。これによって、当初「ユーザとの関係分析」「情報発信の最適化」だけだったのが、更新頻度や話題性が確保できないと気付き、ニュース系のカテゴリも事前に加えることができました。

サイトに必要なコンテンツを“メタデータ”と“マッピング”で洗い出す 第2回 | Web担当者Forum

もう1つ、燃料をどう効率的に燃やすかは、効率的なPVの稼ぎ方にあたります。1度ブログを覗いてくれた読者に対し、以下に多くのページを読んでもらうのか。グラフカタリストでは、1つ大きめなテーマを決めて、それを複数のエントリで展開、さらにそのエントリを書く際に見つけた・考えたtipsや小ネタをそれぞれのエントリの子エントリとして先にアップし、元エントリを書く際には子エントリへのリンクと引用を仕込むというやり方をとっています。

3.ボトルネックの発見
コンテンツの設計ができたら、あとはどんどんエントリを書いて、数字をチェックしていくだけです。残念ながらグラフカタリストのPVは9月・10月・11月と順調に下がっていました……。

ということで、何がボトルネックなのか探ります。船でいうと、何が船のハンドルになるのか、見つける作業です。目標値をまずは分解してみます。今回の目標値はPVです。PVは

読者数(ユニークユーザー数)×訪問頻度(訪問回数÷ユニークユーザー数)×訪問あたりのPV(PV÷訪問回数)

に分解できます。月単位で見れば、何人読者がいて、彼らが月に何回ブログを訪れて、訪れた先で何PV持って行ってくれるのか。これらを掛け合わせると、トータルのPVになります。

グラフカタリストの場合、訪問あたりのPVは順調に伸びており、問題は読者数と訪問頻度でした。ということで、この2つの数字がブログをコントロールするためのハンドルになりそうです。

これに加えて、どんなコンテンツが効いているのか、またコンテンツを見せるのに効率の良い誘導口はどこなのかを知る必要があります。今回はブログの各エントリーをGoogle Analyticsのアドバンスセグメントを使ってカテゴリごとにまとめ、そのうちエントリ1本あたりのPVが大きく(効率が良い)かつユニークユーザー数の多いカテゴリ(パイが大きい)が何か、調べました。またブログへのリファラーを見て、流入元を流入の多さ・流入ごとの滞在時間・流入ごとのPVといった数字を指標としてバブルチャートで分類し、効率の良い流入元を確認しました。

カテゴリは、ソーシャルメディアのニュースがもっともパイが大きくかつ1エントリあたりのPVが多かったため、ここを重点的に伸ばすことにしました。トピックとしてはFaceobok関係、とくにインサイトに関するエントリが読まれていました。またリファラーについては、想定通り検索が圧倒的に多いかたちになりました。検索が大きいことは前提として、全体の中で滞在時間や流入当たりのPVがそれなりに良い数字になっているかどうかを確認する作業がメインでした。ここが他と比べて低い数字だと、検索を利用した読者の意図とズレたコンテンツに多数のアクセスが来ていることになってしまいます。グラフカタリストの場合は、Google検索からのアクセスが全体の中で最も流入数が大きくかつ滞在時間・流入あたりのPVもトップクラスだったため、特に問題ありませんでした。

検索のほかには、Facebookからのアクセスがパイとしてもそれなりに多く、かつ滞在時間がもっとも長いことが分かりました。

4.改善策の検討
コンパスを使って船がどっちの方向を向いているのか調べて、かつ何がハンドルになっているのかを知ることができました。ということで、後は舵を切ります。ユニークユーザー数と訪問頻度を上げる必要があり、これらをまとめて解決する手段としては、エントリ数のアップです。上記の分析の結果、FacebookおよびFacebookインサイト関係の記事がこのブログの強みになっていることが分かっています。まずこれを増やす手は必要です。しかしFacebookのニュース、しかもWeb解析につなげられそうな話題が毎日豊富に手に入るわけではありません。そのため、一歩視点を引いて、mixiページの公式分析ツールやGoogle+とGoogle Analyticsの統合など、今後ありそうなソーシャルメディア周りのファーストパーティ分析ツールの話をきちんとキャッチアップする環境を整えることにしました。これらは英語圏のソースをきちんと追うことでカバーする予定です。

また訪問頻度を上げるには、固定読者を増やす必要があります。Google+ページは作った後そのまんまにしていたという事情があり、ここを再起動させてG+上で固定読者を確保する、またFacebookページへの誘導はすでにほぼ出来上がっているので、ウィジェットを見たあとファンになってもらえる確率をあげるべく、ファン限定のコンテンツ等をおくようにするなどが考えられます。

これらの施策の結果は、実施後にこのブログ上でご報告させていただきます。

Web解析を行うメリット

今回は理論と実践の往復をメインに据えました。単に理論を並べても、本買って読めば済む話ですし、第一Web解析の理論「だけ」の話は実は結構眠くなります。ブログエントリならブラウザのタブを閉じれば済みますが、わざわざ大手町にご足労いただいた揚句にそれはちょっとなあと思ったのでそういう構図にしました。逆に理論ぽい話は最低限のことしか話していなため、理論的なまとめは特にありません。ので、Web解析の業務をやっていてよく感じることをまとめの代わりとさせていただきました。

何か分析をしても、原因も解決策もだいたい現場にいる人たちの勘に近い結果が出てくることが多いということです。そこまでいかなくとも、びっくりするような結果はあまり出てきません。漏れや抜けが見つかることはありますが。Web解析的な視点を持ち込むことのメリットは、定量的なデータを用いることで、施策に優先順位をつけられることかなと思っています。アイディアはたとえ他の人が思いついたようなものであっても、数ある施策案のうち、どれにまず注力すべきか検討をつけられます。優先順位を決めることは、とくに組織の中でリソースを使って物事を進める際、言うまでもなくとても重要です。それはガバナンスの話にも繋がってきます。

反省点

MTG終了後、色々とツッコミを頂きました。データの見せ方からそもそものテーマの設定まで、反省点は多々ありました。とはいえ経験豊かな社外の方々の前でえらそうにあれやこれやと話す機会はそうそうないので、貴重な経験でした。

◎当日MTGに参加された方の中で、何人かに感想のエントリを上げていただきました。ありがとうございます。

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