ウェブ最後の聖域は開放されるのか クレジットカードプラットフォームという発想
友達と一緒にコンビニに行き、同じビールを買ったのに、友達より自分のほうが安く買えた。それは自分のほうが<影響力>があるから。……そんな未来がいつか来るのかもしれません。それは購入情報という、ウェブ最後の聖域が開放された未来の話です。 アメリカン航空は、ソーシャルメディア上での影響力を可視化するklout scoreが55以上の人に対し、無料でラウンジ開放すると発表しました。 American Airlines’ Admirals Club Welcomes Klout Users in Nearly 40 Locations
if you have a Klout Score of 55 or higher, you can gain access to the Admirals Club by going to www.aa.com/klout.
一方、ITpro(元は日経情報ストラテジー)の記事のよれば、アメックスは「ネットプロモーター・スコア(NPS)という指標を設定し、アメックスを特に高く評価したユーザーを「プロモーター」と呼び、このプロモーターの比率を上げるよう様々な施策を打っているとのこと。 「顧客満足度が上がれば売り上げも増える」のウソ、アメックスが採用した究極の指標「NPS」
顧客に対し、自社の商品やサービスを「友人や知人に奨めたいと思いますか」という質問をし、「非常にそう思う」から「全くそう思わない」までを0から10までの11段階で評価してもらう。0~6までの評価をした人を「デトラクター(非難者)」、7と8の評価をした人を「ニュートラル(中立者)」、9と10の評価をした人を「プロモーター(推奨者)」とし、回答者全体に占めるプロモーター比率からデトラクター比率を引いたものをNPSとして定義する。
11段階中上位2段階でないとプロモーターと呼ばれないため、通常の顧客満足度向上策よりかなり厳しいものになっています。 アメリカン航空とアメックスの取り組みは、どちらも「他人への伝播力が強い顧客を重視する」という点では一緒です。しかし根本的には真逆の取り組みと言えるでしょう。アメックスの場合、自社の顧客全体から評価をもらい、その中でプロモーターの割合を上げるべく施策を打っています。一方アメリカン航空が狙っているのは、すでに外部のソーシャル・メディア上で高い評価を形成した人々です。自社サービスへのロイヤリティを指標とするのか、外部メディアでの評価を指標とするのか。もちろん航空業界とクレジットカードでは顧客単価含めたビジネスモデルが異なるため、どっちが良い悪いとは言えません。 ただアメリカン航空の取り組みは、影響力のある顧客を育てるのではなく、外から買い付けるようなイメージです。取り込みやすい分、浮気もしやすく、アメックスのように時系列で全体のロイヤリティを上げる施策と言うよりは、今回のようなキャンペーン的な施策が中心になりそうです。 とはいえ、実際にソーシャルメディア上で影響力のあるユーザーは重要です。アメリカン航空の取り組みのように彼らを引き付けつつ、アメックスのように自社サービスへのロイヤリティ向上につなげる上手い手段はないものか……。 少し未来の話ですが、そんな二兎、いえ三兎四兎を追うことが出来るようになるかもしれません。こんなレジが普及すれば。 Squareが新しいレジを発表:魅力的な最新レジの裏で、何が起きているのか Twitter創業者のジャック・ドーシー。彼が手がけるモバイル決済プラットフォーム「Square」は、クレジットカードの利用履歴をPOS側からネットワークに接続します。それまで個々のクレジットカード会社や店舗のネットワークで閉じていた購入情報を管理し、ウェブサービスと結びつけるようになります。
ウォルザー氏は自社の提供するツールについて、「クレジットカードプラットフォームでアプリを開発するためのAPIとも言うべきもの」と表現する。
ウェブサービスがTwitterのAPIを叩いてTwitterの機能を呼び出すように、ウェブサービスがSquare にリクエストして、あるユーザーの購入情報とウェブサービスを結びつけるのです。例えばユーザーの購入履歴とFacebookでの交友関係をつなぎあわせれば、あるユーザーがAというビールをよく買っており、かつ友人たちも同じようにそのビールの購入頻度が高いことがわかります。そうすれば、そのユーザーがビールを買った際に自動的に値引きする、工場見学無料招待……などアメックスのような「特別な体験」をもたらす施策が打てます。 日本ではTSUTAYAが武雄市図書館や学習塾と提携して波紋を呼んでいますが、一つ問題点としては購入履歴のデータを管理する業者とそれを利用するサービス(TSUTAYA)が一緒になっていることでしょう。Squareの発想はデータの管理と利用を分けるものであり、ウェブの発想としては、こちらのほうがスマートに思えます。 ○以下のFacebookページにいいね!していただくと、続きを逃さず読めます。