"忘れ去られたCPU黒歴史"の感想
憂鬱な仕事初めの月曜日に数少ない楽しみにしているのが、"ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情"と"古田雄介のアキバPickUp!"と"Infostand 海外ITトピックス"です。
その"ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情"のCPU黒歴史シリーズがあり、それが書籍になったのは"忘れ去られたCPU黒歴史"です。著者である大原雄介氏は新しいCPUが登場したときに、大量のベンチ結果をまとめた報告(「Ivy Bridge」完全攻略!! 「Core i7-3770K」で試す第3世代Coreの実力検証)をすることで有名ですし、"図解 64ビットがわかる"の著者でもあります(読みました)。
このシリーズを読んで如何にAMDが組み込み向けに成功できないか分かります。VIAが組み込み市場である程度成功していたときに、AMDがGeodeを買収して進出しようとしてうまくいかなったことがありましたが、本書を読んで納得がいきました。過去の経緯もありますが、ビジネスが違いするぎて転換できないのでしょう。
現在、x86はなんとかメディアタブレットやスマートフォンに進出しようとしています。この後にはたぶん、同じ様な消費電力の組み込み向けにも本当は行きたいのでしょうが、ビジネススパンが違いすぎてよほどのやり方を変えないといけない気がします。
CPU黒歴史に載っている製品で実際に購入したのはBarcelonaぐらいです。周波数が伸びない&消費電力が高すぎた上にTLBのバグ(一般で使う分にはおきないと言われていた)があって黒歴史入りしていますが、このソケットが2度ばかりCPUを入れ返すことが出来ました(Phenom II X6 1090T BlackEditionに換装してみた)。BarcelonaはいいCPUではないと思いますが、ソケットを含めるとそれほど悪くはなかったと思います(まぁ、updateがあったからBarcelonaに突入できたというのもありますが)。
本書を読むと多くの失敗をしているのかと思うのです。けど、その失敗を糧に次につなげた場合もあれば、本当に黒歴史入りしてたたんだ場合もあります。それだけ市場予測が出来なかったのと技術的に無謀な特攻をした証なのでしょう。
Core MAシリーズ以降のIntelはそれほど無茶(インドのバンガロールで開発とかMICぐらい?)しなくなったように思えます。チックタック戦略でリスクをとらない方針にしたとも言えなくもありません。チックタック戦略で出来るほど体力があるとも言えるのも知れませんが。
AMDは逆にAthlon 64以降うまく成功していない気がします。Bulldozerに関しては黒歴史入りはしていませんが(黒歴史と断定するまで本書が間に合っていない気がする...)が後手後手になっています。
そういえばトランスメタの最後の製品であるEfficeonは黒歴史入りしていないのか...
ドックイヤーのIT業界をしたささえしているのはCPUでしょう。そのCPU開発がこんなに七転八倒しながら今に至っていることを見ると少し微笑ましさえあります。関係者は死活問題なのかも知れませんが。説明を見ていると、そりゃ無謀すぎるとも思えますし。
元のシリーズは最初は今までのCPUの歴史やたまに時事ねたのロードマップを説明していますが、シリーズとしてGPU黒歴史があります。出来れば次はCPUの歴史とGPU黒歴史を書籍化して欲しいものです。