省電力Cortex-A7の可能性
ARMがCortex-A7を発表しました。これは性能が必要でないときにより省電力なCPUに処理をさせることで消費電量あたりの高性能化を行うことです。これは、NVIDIAのTegra 3に搭載される機能に似ています(ARMと共同開発とか言っていたので、実質はこれの前段階の製品なのかも知れない)。
ARM系の現在発表されているコアの性能を表記してみました。
コア | 性能 (DMIPS/MHz) |
上限周波数 (GHz) |
Cortex-A15 | 3.5 | 2.5 |
Cortex-A9 | 2.5 | 2.0 |
Cortex-A8 | 2.0 | 1.0 |
Cortex-A7 | 1.9 | 1.5 |
Cortex-A5 | 1.6 | 1.0 |
Krait | 3.3 | 2.5 |
Scorpion | 2.1 | 1.5 |
出展
・ARMアーキテクチャ
・Cortex-Aシリーズ
・ARM版Windowsで始まるx86対ARMのCPU戦争
・ARM's Cortex A7: Bringing Cheaper Dual-Core & More Power Efficient High-End Devices
KraitとScorpionは、Qualcommの独自コアです。
ARM系列は既にCortex-A9に移行しています。2012年にはCortex-A15が登場すると言われています。Cortex-A15で大きく性能を向上させます。ただし、性能向上させてもARM系チップの焦点である省電力はトレードオフになってしまいますが、そこをCortex-A7でサポートするあたりが現在の半導体技術での現実解なのでしょう。
現在のPCはアイドル時で少なくない電力を消費します。スリープすればすむことですが、多様な利用シーンがあるPCは起動していることがいい場合もあります。このような場合により省電力なCPUコアを使うのはメリットがあるように思えます。
大体人間が作業をする場合、フルロードとアイドルのどちらがより長いでしょうか。例えばWEBを見ているときは、文字を読んでいる時間とHTTPでhtmlをダウンロードしている時間はどちらが長いかといえば、人間を待たせているほうが長いと思います。
Cortex-A7の性能的にCortex-A8並とあります。また、Cortex-A7は、Cortex-A15のパフォーマンスの約2分の1並ですが、消費電力あたりの性能は3.5倍(Big.LITTLE Processing)とあります。消費電力あたりの性能は必要とされていることを考えるとCortex-A7をメインで活用されるシーンもあるように思えてなりません。
マルチコアも少し前は同じコアを乗せるのが主流(ホモジニアスマルチコア)でした。現在はGPUを搭載したヘテロジニアスマルチコアが主流になり始めています。ヘテロジニアスマルチコアに進む理由はこちらの方が効率的(ダイ面積や消費電力の面で)なためです。
Cortex-A15/A7混在のヘテロジニアスマルチコアは、省電力の意味合いでは効率的です。逆に言えば、そろそろPC(ノートPC)のCPUも同様な機能が必要なのかも知れません。例えば、AMDだとBulldozerコアとBubcatコアを混在とか。ただし、Intelが今開発中の電圧を低くするものが出てくればこの思想は意味をなさないと思われますが。
そういえば、Cortex-A5の低パフォーマンスコアがあったのですが、Cortex-A7の登場で出番がなくなったのでしょうか。